COP30:森林とブルーカーボンの力を気候変動対策の重要な解決策として活用

2025年11月20日, ベレン

COP30のサイドイベントで開催された2つのセッションにおいて、シャーム・サックルITTO事務局長は、森林がすでに強い影響力を持つ自然に基づく解決策として機能していることを強調するとともに、マングローブ林が持つ膨大な炭素貯留能力と重要な生態サービスの価値を指摘しました。© Ramon Carrillo/ITTO

COP30国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)期間中にジャパン・パビリオンで開催されたイベントでは、森林、アグロフォレストリー、ブルーカーボン生態系が中心的テーマとなり、日本およびブラジルの専門家や政府関係者が、陸域および海域部門が1.5℃目標達成に向けた世界的な進展を促進する方法を紹介しました。「農林分野・ブルーカーボンによる気候変動対策の推進」と題された本イベントには、政府関係者、研究機関、民間パートナー、国際機関が参加し、ITTOのシャーム・サックル事務局長も登壇しました。

ブラジル漁業養殖省の副大臣リヴェトラ・エディポ・アラウジョ・クルス氏は、ブラジルが「森林国」となる上で、日本の専門知識が果たした歴史的役割を紹介しました。© Ramon Carrillo/ITTO

森林とブルーカーボンを不可欠な気候の味方として位置付ける

日本およびブラジルの高官による開会挨拶は、セミナーに対して前向きな雰囲気を醸成しました。ブラジル漁業養殖省副大臣リヴェトラ・エディポ・アラウジョ・クルス氏は、ブラジルが「森林国」となる上で、日本の専門知識が果たした歴史的役割を強調し、森林、農業、沿岸資源管理における両国の協力が、気候変動対策および農村開発の基盤であり続けていると述べました。

登壇者らは、森林、マングローブ、海草、その他のブルーカーボン生態系が生物多様性保全、土壌・水資源保護など広範な共同の恩恵をもたらすことから、気候変動緩和および強靱性の不可欠な柱となることを示しました。

農林業パネルで、シャーム・サックルITTO事務局長は、気候変動緩和、森林保全、社会的包摂がいかに連動するかを示すITTO支援事例を紹介しました。© Ramon Carrillo/ITTO

気候変動対策としての森林:ITTOが世界の進展を紹介

農林業パネルにおいて、サックル事務局長は、持続可能な熱帯林経営の推進と合法かつ持続可能な熱帯木材貿易の促進というITTOの使命を紹介しました。この課題は、世界の熱帯林の80%以上と貿易の90%をカバーする76か国の加盟国と共有されているものです。

同氏は、再造林による排出削減、森林再生および持続可能な経営による炭素の吸収・貯留持続可能に生産された木材製品の利用による低炭素な開発と素材の代替などを挙げ、森林がすでに大きな影響力を持つ自然に基づく解決策として機能していることを示しました。女性を対象とした生計向上プロジェクトなどのITTO支援事例を通じて、気候変動緩和、森林保全、社会的包摂が相互に連動していることも示されました。

さらに、サックル事務局長は、陸域と沿岸の森林戦略を橋渡しする形で、ブルーカーボンへの関与が拡大していることにも触れました。

他のパネリストらは、日本とブラジルの協力から生まれた実践的イノベーションを紹介しました。© Ramon Carrillo/ITTO

森林回復のモニタリング、アグロフォレストリーの推進、森林管理の強化

他のパネリストらは、日本とブラジルの協力から生まれた実践的イノベーションを紹介しました。

  • サステナクラフト(Sustainacraft)とコンサベーション・インターナショナル・ブラジル(Conservation International Brazil)は、ブラジル国家による植生回復計画PLANAVEGに基づく大規模回復のリモートセンシングおよびモデリング手法を紹介し、透明性向上と気候資金の活用に貢献しています。
  • Pará州にある日系人によって設立された協同組合トメアス総合農業協同組合(CAMTA)およびフルッタフルッタ(Fruta Fruta)は、アマゾンのアグロフォレストリー・バリューチェーンに関する知見を共有しました。彼らの取組により、土壌・水資源の保全、生物多様性の向上、レジリエントな生計の実現が可能になりました。日本・ブラジルの最近の実証プロジェクトは、技術移転を通じて農家の生産性向上にも寄与しています。
  • 日本の林野庁は、日本の森林炭素蓄積量の増加と、国内木材の持続可能かつ循環型利用の強化を強調しました。人工林の多くは成熟期に近づいており、国内の気候戦略の重要な一部となっています。
第2パネルでは、シャーム・サックルITTO事務局長が、ラテンアメリカ、アフリカ、アジアにおけるITTOプロジェクトからの知見を共有し、マングローブ林や沿岸森林地域が提供する恩恵を紹介しました。© Ramon Carrillo/ITTO

ブルーカーボンに焦点:陸域と海域の連携

第2パネルでは、沿岸生態系と気候政策におけるその重要性に焦点が当てられました。

サックル事務局長は、マングローブ林の膨大な炭素貯蔵能力と沿岸保護、漁業、地域住民の生計に対する重要なサービスを強調しました。また、ベナンフィジーパナマフィリピンでのITTOプロジェクトからの知見を共有し、種子の質、地域の関与、適切な回復手法が長期的な成功に不可欠であることを指摘しました。さらに、マングローブは持続可能な木材利用にも貢献していることを示しました。

その他の発表には以下が含まれます。

  • 中川原 宏昭氏が紹介したModaDASは、環境・社会・空間データを統合し、ブルーカーボン回復の最適地を特定する意思決定支援ツールです。
  • ​​​​​​​日本の国土交通省は、ブルーカーボンの目標に沿った沿岸インフラおよび生息地保全の取組を紹介しました。
  • 日本の環境省は、沿岸生態系を温室効果ガスインベントリや最新の国が決定する貢献(NDC: Nationally Determined Contribution)に統合する取組を詳細に報告しました。これは、ブルーカーボンの国レベルでの役割を強化する重要なステップです。.
参加者は、森林およびブルーカーボン生態系を国家森林・気候戦略や温室効果ガスインベントリに正式に組み込む動きが世界的に加速していることを指摘し、陸域・海域ベースの解決策が引き続き効果的に地球規模の気候政策に貢献するために不可欠であると認識しました。© Jorge Leyva/IFSA

森林と沿岸地域は共に前進すべき

セミナーにおける議論では、全体を通して、気候変動緩和の効果を最大化するには、陸域・沿岸生態系において、排出削減と炭素吸収源の双方の強化に取り組む必要があるとの共通理解が示されました。登壇者らは、森林回復のモニタリング、アグロフォレストリー・バリューチェーン、ブルーカーボン計画ツールなど、日本とブラジルの長年の協力から得られた具体的でスケール可能なモデルがすでに存在しており、他国の文脈にも応用可能であると指摘しました。

セミナーで繰り返し強調された点は、森林および沿岸生態系における信頼性の高いプロジェクトは、炭素に関する恩恵を提供するだけにとどまらないということです。それらは、生物多様性の保全、土壌・水資源の改善、女性のエンパワーメント、生計向上など、持続可能な開発に資する多面的な効果をもたらします。また、セミナーでは、投資判断の指針、透明性の向上、気候資金の活用のために、ModaDASのようなバイオマスモデリングツールや空間プラットフォームなど、強力なモニタリングシステムが重要であることも示されました。

最後に、森林およびブルーカーボン生態系を国家森林・気候戦略および温室効果ガスインベントリに正式に組み込む動きが世界的に加速していることが確認されました。このような統合は、1.5℃目標への貢献を完全に把握し、陸域・海域ベースの解決策が引き続き効果的に地球規模の気候政策に寄与するために不可欠です。