熱帯林の生物多様性保全のためのITTO/CBD共同イニシアティブ

熱帯林の生物多様性保全のためのITTO/CBD共同イニシアティブ

背景

2010年に名古屋で開催された生物多様性条約(CBD)の締約国会議に向けて、ITTOとCBDは、熱帯林の生物多様性の保全と持続可能な利用を促進する共同事業を奨励するための覚書(MOU)を締結しました。CBDとITTOの意思決定機関は、両機関の協力を歓迎する決定を採択。これらの決定に基づいて、ITTOとCBDは、2011年に「熱帯林の生物多様性保全のためのITTO/CBD共同イニシアティブ」を立ち上げました。

共同イニシアティブは、ドナーからの支援やITTO生産加盟国におけるパートナーらとの緊密な協力のもと、目的を達成するためのプロジェクトを特定、開発、実施します。本イニシアティブは様々な資金提供を受けていますが、主要なドナーは日本です。その他、ベルギー、韓国、スイス、アメリカの政府、CBD事務局、日本木材輸入協会が本イニシアティブのプロジェクトに資金を提供しています。


成果と目標

本共同イニシアティブは、2011年の設立から2020年後半までの間に、総予算は約1,300万米ドルの16のプロジェクトを実施しました。プロジェクトの実施地は、森林面積の減少や生物多様性の損失を経験し、森林に関わる人々を多く抱える23の熱帯諸国です。独立した立場からのテクニカル・レビュー(ポリシーブリーフに要約)が行われた結果、これらのプロジェクトは地域の生計と森林経営の改善、劣化した森林の回復、生物多様性の保全において「並外れた成功」を収めたことを明らかになりました。また、プロジェクトが生物多様性条約愛知目標、持続可能な開発目標(SDGs)、世界森林目標、国際熱帯木材協定の目標など、森林に影響を与える主な国際的なプロセスに貢献していることも明らかになりました。

2021年2月に、ITTOとCBDは新しいMOUを結び、共同事業を2025年まで正式に延長することにしました。新しいMOUに記載されている全体的な目標は、CBD締約国とITTO加盟国が、木材やその他の製品・サービスの持続可能な生産を維持しながら、熱帯林と森林景観の生物多様性と生態系サービスの維持、回復、強化を支援することです。また、5つの主要な目標があります。

1)各国が森林景観の価値を十分に認識し強化すること、および、熱帯林の持続可能な経営、利用、回復に貢献する生態学的、生物学的データを収集し利用することを支援する。
2) 熱帯地域の森林景観における生物多様性と生態系サービスの維持・向上を目的とした革新的なアプローチや実践、技術、専門スキルの強化を推進する。
3) ITTO/IUCN熱帯生産林における生物多様性ガイドライン、その他の関連ガイドライン、および、CBDの決定事項を実施するための各国の能力構築を支援する。
4) ワシントン条約付属書に記載されている熱帯樹種の保全と持続可能な利用を含む、生物多様性のグローバルな目標に関する実施能力を強化するために、国際機関およびパートナーとのさらなる協力を促進する。
5) 両事務局の合意により、その他の活動を実施する。

新しいMOUには、以下のような協力分野(例示列挙)が記載されています。

  • 他の関連機関やパートナーの関与とともに、森林と生物多様性に関する共同事業を特定、開発、実施する。
  • 対象となる共同事業を調整、運営する。
  • 地球環境ファシリティ(Global Environment Facility: GEF)や緑の気候基金(Green Climate Fund:GCF)などの二国間および多国間の資金源へのアクセスを容易にする。
  • 各国が持続可能な森林経営の実現、森林減少の削減、生態系の回復を通じて、劣化した森林土地の復旧、森林保護区の強化・拡大を支援する。
  • 事務局間の情報交換やその他の協力体制を促進する。


共同イニシアティブの一環として、以下のプロジェクトが進行中です(2023年2月現在)。

  • PD 712/13 Rev.3 (F): スマトラ島リアウ州のギアム・シアック・ケチル・ブキット・バトゥ生物圏保護区(GSK-BR)における景観管理の実施強化 ― フェーズI (インドネシア)
  • PD 808/16 Rev.4 (F): コートジボワール北部ラ・パリとバウンダリの公有林におけるアフリカン・バーウッド(Pterocarpus erinaceus Poir)の地域コミュニティの参加による保全(コートジボワール)
  • PD 905/19 Rev.2 (F): トーゴのサバンナ地域におけるフォッセ・オー・リオン保護林の持続可能な経営のための支援を提供する(トーゴ)
  • PD 916/21 Rev.2 (F): コロンビア・ブエナベンチュラのバホ・カリマ集団領のうちの、地域評議会によりアフリカ系住民のコミュニティに割り当てられた領域における、二次林の持続可能な経営システムの試行(コロンビア)
  • PP-A/56-341-A: トーゴ・ブリタ県とラックス県における森林景観の回復と女性グループへの支援 ― フェーズ2(トーゴ)
  • PP-A/59-351: フィジー・リワデルタにおける沿岸コミュニティと女性のエンパワーメントを通じた、コミュニティに基づくサイクロンの影響を受けた脆弱なマングローブ林の再生 (フィジー)
  • PP-A/59-352 [PD 902/19 Rev.3 (F)]: マレーシア・サラワク州アッパーバラムにおける、地域コミュニティの関与による保全と持続可能な開発のためのアッパーバラム・フォレストエリアの経営 (マレーシア)
  • PP-A/59-353 [CN-21004]: コスタリカにおける新型コロナウイルス感染症流行期後の復興― 持続可能な利用による二次林の価値の向上と、農村の雇用創出を伴う気候変動緩和への貢献(コスタリカ)