ITTC61:森林と人々の未来を守るための呼びかけ
2025年10月28日, パナマシティ
2025年10月28日にITTC61で開催された市民社会諮問グループ(CSAG)パネルディスカッションの登壇者。左から順に:ラモン・チアリ氏(パナマ)、エブリン・ヒメネス氏(パナマ)、ローズ・ペラーギ・マッソ氏(REFACOF)、カサンドラ・プライス氏(オーストラリア)、クリスティーン・ウーランダーリ氏(FKKM、インドネシア)、カレン・ノボア氏(トラフィック・インターナショナル)、フェルナンダ・ロドリゲス氏(UNFF女性メジャーグループ、ブラジル)。© ITTO
2025年10月28日、パナマシティ — パナマのパナマシティで10月31日まで開催中の国際熱帯木材理事会第61回会合(ITTC61)の2日目は、多様な声と視点に満ちた一日となりました。合同委員会会合では、生産加盟国と消費加盟国の代表が一堂に会し、プロジェクトの進捗状況を確認するとともに、国際熱帯木材機関(ITTO)の今後の活動を方向づける主要な議題について協議を行いました。
この日の主要イベントのひとつは、ITTC61の一部として開催された市民社会諮問グループ(Civil Society Advisory Group: CSAG)によるパネルディスカッションでした。 CSAGは、市民社会にとって特に重要なITTOの活動に関連する事項について理事会に助言を行う、常設の諮問グループです。本イベントでは、専門家、実務者、政府代表者が一堂に会し、持続可能な熱帯林経営の将来とその関連課題について活発な意見交換が行われました。.
生物多様性、生計および権利の向上に向けて
今回のパネルは、「持続可能な熱帯林経営の推進:ITTAおよび国際的な生物多様性枠組の下での生物多様性保全と生計向上の統合」をテーマとして開催され、森林ガバナンスと貿易を生物多様性目標やその他の国際的な開発目標と整合させる世界的な動きが加速していることを強調しました。本セッションはエブリン・ヒメネス氏(パナマ)が議長を務めました。
冒頭の発表では、アフリカ、アジアおよびラテンアメリカからの事例が紹介され、地域社会、政府、そして市民社会が、環境保全と社会経済的機会の両立にどのように取り組んでいるかが示されました。
国連森林フォーラム(UNFF)女性メジャーグループを代表して登壇したフェルナンダ・ロドリゲス氏は、世界の生物多様性アジェンダにおける森林の重要性を高める必要があると強調しました。同氏は、報告の簡素化とより包摂的な意思決定、特に女性、若者および先住民族の積極的参加を求めました。また、科学と政策をつなぐこと、森林を気候変動への適応計画に統合すること、そして森林が生物多様性、公衆衛生、コミュニティのウェルビーイングに果たす貢献についての発信を強化する必要性を訴えました。
トラフィック(TRAFFIC)社のカレン・ノボア氏は、熱帯林が地球上の陸上生物多様性の40%以上を抱えており、何百万人もの人々を支えていることを指摘しました。同氏は、世界人口の約5人に1人が野生の植物、藻類、菌類に生計を依存していることから、持続可能な貿易が保全と経済的レジリエンスの双方に不可欠であると述べました。ノボア氏は、持続可能ではない採取が種や地域社会の利益を損なう一方で、強固なガバナンス、認証制度およびデジタル・トレーサビリティツールに支えられた責任ある貿易が、保全と繁栄の両立を促進できると強調しました。
コミュニティ森林経営のためのアフリカ女性ネットワーク(REFACOF)のローズ・ペラジー・マッソ氏は、ジェンダーに関する明確な視点とともに、アフリカ各地の女性たちがITTOの資金提供プロジェクトを通じて、農業、森林再生および伝統的知識の活用によって森林景観の維持に積極的に取り組んでいる事例を紹介しました。しかしながら、多くの女性たちにとって、その活動を拡大するための資源へのアクセスが確保されていないと指摘しました。マッソ氏は、女性主導の保全活動を推進するためのパートナーシップ強化の戦略的契機の一つとして、国連生態系回復の10年の下で2,000万本の植樹を進めるREFACOFのコミットメントを紹介しました。
インドネシアの森林コミュニティネットワーク(FKKM)のクリスティーン・ウーランダーリ氏は、生態的要素と社会的要素を統合したコミュニティ主体型のランドスケープアプローチを紹介しました。同氏は、ランプン州およびアチェ州での取組を例に挙げ、上流・中流・下流の各地域の特性に応じた経営戦略を説明しました。また、マルチフォレストリービジネスフレームワーク(Multiusaha Kehutanan)などの政策支援の下で、統合的ガバナンスが森林の恩恵を最大化できることを示しました。
パネルディスカッションの最後に、パナマ環境省(MiAMBIENTE)のラモン・チアリ氏は、先住民族のリーダーシップを中心に据えた持続可能な森林経営の国家モデルを紹介しました。パナマの生産林約70万ヘクタールが先住民族の領域内に位置し、すでにそのうち17万ヘクタールが承認済みの計画の対象となっています。チアリ氏は、コミュニティ林業が住宅改善、所得創出、地域リーダーシップの強化および劣化した土地の回復にどのように寄与したかを説明しました。また、モニタリング能力やトレーサビリティの限界といった課題に対しては、ダリエン地域における地球環境ファシリティ第8次増資期間(GEF-8)プロジェクトやFSC認証の拡大に向けた取組など、新たなパートナーシップを通じて対応していると述べました。これらの取組は、パナマ東部における違法伐採および違法取引の削減を支援し、同国環境省の森林モニタリングおよびトレーサビリティシステムの強化を行うITTOプロジェクトの成果をもとに構築されています。
政府による国際的連携強化の呼びかけ
プレゼンテーション後は、各国政府代表による活発な意見交換が行われました。欧州連合(EU)は、現在進行中の昆明・モントリオール生物多様性枠組(KMGBF)の見直しプロセスは――指標やレポーティングの方法に関する課題はあるものの――世界的な協調行動の推進に不可欠であると述べつつ、プロセスへのより一層の参加を呼びかけました。カナダ、ニュージーランドおよびパナマもこれに賛同し、国際的な森林関連プロセス間の連携強化と、各国における森林経営政策と生物多様性政策の分断を解消する必要性を訴えました。
ロドリゲス氏は、国連生物多様性条約(CBD)の下で森林関連の作業計画改訂を含む調整強化の取組が進められていることを報告しました。EUはまた、CBD第17回締約国会議(COP17)に向けて、拡大された作業計画に関する交渉が進展していることを明らかにしました。
シャーム・サックルITTO事務局長は、代表団に対し、ITTOがKMGBFを強く支持していることを改めて表明しました。同氏は、ITTOがすでにCBDに対して事例研究や伝統的知識に関する貢献を行っており、追加の共同文書を準備していることを報告しました。さらに、2025年末までにCBD事務局との間で覚書(MoU)を締結し、協力を一層深化させる予定であると述べました。サックル事務局長は、ITTOが森林に関する協働パートナーシップ(CPF)において積極的な役割を果たしていることを強調し、分野横断的な解決策への長年の取り組みを示しました。
市民社会からの行動要請
CSAGはセッションの締めくくりとして声明を発表し、熱帯林の健全な発展と森林に依存する人々のウェルビーイングが密接に結びついた未来を確保するために、この重要な機を逃さないよう理事会に呼びかけました。CSAGは、天然林保護をITTOの使命の中核に据え、先住民族および地域社会(IPLCs)の権利とリーダーシップ(女性・若者を含む)を強化し、透明で説明責任のあるサプライチェーンを確保するとともに、ITTOのガバナンスおよび資金基盤を強化することで、次期国際熱帯木材協定(ITTA)が気候の安定、生物多様性の保全および包摂的な開発を推進する変革的な枠組みとなることができると強調しました。
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理事会会合の詳細情報および各発表資料は次のページにてご覧いただけます(本文英語): https://www.itto.int/ittc-61/presentations
IISDレポーティング・サービスによる日次報告はこちら(英語): https://enb.iisd.org/ittc61-international-tropical-timber-council





