規制の変化、イノベーションおよび市場の課題について議論 ― 国際熱帯木材理事会第61回会合にて

2025年10月28日, パナマシティ

貿易諮問グループ(TAG)は、貿易の不安定化、規制の不確実性および遵守コストの増大に対する懸念の高まりを強調しました。© ITTO

2025年10月28日、パナマシティ — 2025年10月28日、国際熱帯木材理事会第61回会合(ITTC61)の一環として、貿易諮問グループ(Trade Advisory Group: TAG)は「木材産業の再構築:市場の苦難と持続可能性への取組から得た教訓」をテーマに、年次市場ディスカッションを開催しました。本会合では、世界の熱帯木材貿易を形成する新たな市場動向、規制の進展および民間セクターの対応について検討が行われました。

ラテンアメリカ、アフリカおよびアジアの登壇者は、変化し続ける貿易規制の影響について報告し、各国および産業レベルでの森林ガバナンス、プランテーション開発、高付加価値加工およびコミュニティに基づく森林経営の経験を共有しました。

エミリー・フリップ氏(エフェカ・インターナショナル)は、2025年10月28日にITTC61の市場ディスカッションにおいて、最近の木材製品の需給動向を概観する基調講演を行いました。© ITTO

世界市場の動向と規制環境

エミリー・フリップ氏は、主要な供給および需要動向の概要を示す基調講演を行いました。同氏は、世界の丸太生産量が過去最高の40億立方メートルに達した一方で、天然林からの生産は減少しており、プランテーションの拡大が供給基盤の変化を反映していると指摘しました。

欧州市場は縮小傾向にあるものの、トレーサビリティおよび持続可能性保証に対する需要は高まり続けています。ガーナにおけるFLEGT(森林法施行・ガバナンス・貿易)ライセンスの発給は、森林ガバナンスの強化がこれらの需要に応える手段となり得ることを示しています。

2023年6月に発効し、2025年12月から遵守が義務付けられるEU森林減少防止規則(EU Deforestation-Free Products Regulation: EUDR)は、EU木材規則(EUTR)よりも厳格な要件を導入し、対象範囲をパーム油や大豆など他の一次産品にも拡大しています。フリップ氏は、段階的な施行スケジュール、移行措置およびデータ要件が――特に中小企業にとって――実施上の課題をもたらしていると述べました。また、広域市場認知連合(Broader Market Recognition Coalition: BMRC)との連携を深め、遵守に係る負担を軽減し、強固な国内制度の国際的認知を高めるよう呼びかけました。

さらに、生物多様性および気候変動に関する国際的関心の高まりにより、カーボンクレジットおよび生物多様性クレジットの新たな機会が生まれていますが、明確なモニタリング体制と官民連携が不可欠であると述べました。

地域別の動向

ジョアン・バルダッソ氏(木材生産輸出産業センター:CIPEM、ブラジル)は、ラテンアメリカにおける森林プランテーションが、持続可能で競争力のあるグローバルな熱帯木材供給を確保していることについて言及しました。© ITTO

ラテンアメリカ
ラテンアメリカ地域では、1,900万ヘクタールのプランテーションが存在し、その半分以上がブラジルに集中しています。これにより、パルプ、合板、家具および建設用材の持続可能な供給が拡大しています。ブラジルの森林製品輸出額は2024年に170億米ドルとなり、今後250億~350億米ドルに達する可能性があります。しかし、競争力強化および雇用創出のためには、インフラ整備と2,200億米ドル規模の投資が必要であると指摘されました。

ハイメ・ソテラ・モンテロ氏(コスタリカ森林木材産業会議所:Cámara Forestal Madera e Industria de Costa Rica)は、環境サービス支払い制度により森林減少を抑制するとともに、全国木造建築基準の策定を進めているコスタリカの取組を紹介しました。© ITTO

中央アメリカ
コスタリカは、環境サービス支払い制度の導入により森林減少を抑制しており、現在、国内木材利用促進のための全国木造建築基準および公共調達政策の策定を進めています。登壇者らは、イノベーション、高付加価値化およびデジタル化を推進するには、官民の強固なパートナーシップが不可欠であると強調しました。

ゴー・シー・ホアイ氏(ベトナム木材・林産物協会:VIFOREST)は、ベトナムの木材製品産業がプランテーション開発、政策改革および市場多様化によって成長してきたことを説明しました。© ITTO

東南アジア
ベトナムの木材製品輸出額は2023年に163億米ドルに達し、その大部分は高付加価値家具によるものです。同国の木材産業は、プランテーション開発、政策改革および市場多角化によって成長してきましたが、現在、米国による高い関税およびトレーサビリティ・認証に関する要件の強化といった新たな課題にも直面しています。

トゥッリア・バルダッサリ氏(インターホルコ社:スイス)は、アフリカの熱帯林産業の現状について、社会的・環境的・経済的側面を統合した開発の推進に焦点を当てて報告しました。© ITTO

コンゴ盆地
アフリカの丸太や木材を供給するスイスの会社、インターホルコ社は、コンゴ共和国における持続可能な森林経営の進捗を報告しました。同社は100万ヘクタールを超える森林を長期コンセッションの下で管理しており、伐採量は30年間で1ヘクタール当たり1本未満に制限しています。労働者研修、社会サービスおよび地域社会との協働、35の先住民族コミュニティとの関与を通じて、責任ある森林経営が生計の維持と森林の保全を両立させていることを示しました。

市場ディスカッションでは、熱帯木材の市場シェアは、地域社会の利益と森林の健全性確保を確保しつつ、強力なガバナンス、透明性の高いサプライチェーン、競争力のある産業発展を維持することにかかっていると強調されました。© ITTO

政策の安定性と協働的解決策の必要性

TAGによる市場に関する声明では、貿易の不安定化、規制の不確実性および遵守コストの増大に対する懸念が高まっていることが強調されました。登壇者らは、こうした圧力が鉄鋼やコンクリートといった代替資材への転換を促進し、結果としてより高いカーボン・フットプリントをもたらすおそれがあると警鐘を鳴らしました。

TAGは、CITES(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)附属書掲載プロセスの透明性と協調性の確保、EUDR実施に関する明確な指針と能力構築支援、並びに持続可能な森林経営を損なうのではなく強化する貿易政策の推進を訴えました。

また、TAGは国際熱帯木材貿易の減少要因を分析するための作業部会を設立し、理事会への勧告を提出する予定であると発表しました。

さらに、世界の森林の半数以上が長期管理協定の下に置かれているにもかかわらず、持続可能性保証に関する消費者の認識は依然として低いことが指摘され、より効果的な広報活動と市場での認知向上が求められました。

市場ディスカッションでは、熱帯木材の市場シェアは、地域社会の利益と森林の健全性確保を確保しつつ、強力なガバナンス、透明性の高いサプライチェーン、競争力のある産業発展を維持することにかかっていると強調されました。

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理事会関連事項

合同委員会会合では、議題項目1、2a、2b、3および6が審議されました。事務局は、最近および今後予定されている能力構築活動の進捗を報告しました。ITTOは、生物多様性条約(Convention on Biological Diversity: CBD)との連携のもと、情報や知見を集約した成果物の開発、事例研究の提出および国際会議への参加を行っており、生物多様性資金へのアクセス強化のため、CBDとの覚書の更新作業も進めています。

事務局はまた、CPFパートナー、ASEAN、AFoCOおよび国連森林フォーラム(UNFF)プロセスとのコラボレーションが継続されていることを強調し、グローバルな森林資源評価への貢献を維持するためのさらなる財政的支援を促しました。

ITTOは、タイにおける森林減少モニタリング、インドネシアおよびマレーシアにおける持続可能な木材利用、ペルー北部のマホガニープランテーション開発、そして統合的熱帯森林火災管理ツールキットの試作開発など、複数のプロジェクトの進捗を報告しました。

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理事会会合の詳細情報および各発表資料は次のページにてご覧いただけます(本文英語): https://www.itto.int/ja/ittc-61/presentations

IISDレポーティング・サービスによる日次報告はこちら(英語): https://enb.iisd.org/ittc61-international-tropical-timber-council