議論高まる森林減少防止規制
2024年12月3日, 横浜
EUDRとして知られる、欧州連合(EU)の新しい森林減少防止に関する規制(英語)は、国際熱帯木材理事会のこれまでの会合で多くの議論がなされてきたが、本日も、第60回理事会の「貿易と市場デー」の一環として注目を集めました。
国際林業研究センター-国際アグロフォレストリー研究センター(CIFOR-ICRAF)(英語)のロバート・ナシ事務局長は、EUDRが熱帯木材貿易に与える影響について発表しました。同氏によると、2023年に採択されたこの規則は、EUに輸入されるいくつかの商品および派生製品に関連する森林減少に対応するためのものだということです。
ナシ博士は、EUDRと2013年に導入されたEU木材規則(英語)との相違点を概説し、生産国にとっての主要なリスクと機会について説明しました。また、EUDRについては、改正案を含め不透明な点が残っていると述べました。同規則の施行は遅れており、現在では2025年末に発効すると見込まれています。
EU(英語)代表は、会場にいる誰もが世界の森林の現状と、それに伴う世界の気候や生物多様性への影響を懸念していると述べました。
「そして、EUとその27の加盟国は、私たち全員が行動しなければならないと考えています。」とEU代表は述べました。「木材および木材製品の重要な消費者であるEUは、その消費がEU域内や国境を越えた森林の減少を引き起こさないことを確実にします。EUとその27の加盟国は、EUDRを通じて、消費者の需要に応えていきます。」と述べました。
EU代表部はまた、EUDRの発効プロセスに関する情報も提供しました。
「欧州委員会は、制度の段階的導入に12カ月の追加期間を設ける(英語)ことが、世界中の事業者が施行開始段階から同規制への取り組みを確実に円滑に実施できるよう支援するためのバランスの取れた解決策であると考え、そのような措置を提案しました。喫緊の世界的課題である森林減少に貢献するために最も重要なEUDRの成功に向け、欧州委員会は、この措置によって今後の進め方に確実性を持たせたいと考えています。… 私たちは、欧州委員会の提案に対する共同立法者の決定が速やかに行われることを期待しています。」
同日発表された貿易諮問グループ(TAG)の声明文にも描かれていたように、一部の熱帯木材生産者は、EUDRに懸念を抱いています。
「TAGは、EUDRの適用期限を12ヶ月延期し、2025年12月30日にするという欧州委員会(英語)の提案を歓迎します。これにより、木材産業が遵守準備を進めるための時間が増えるでしょう。」とTAGの声明文は述べています。「一方で、この遅延に関する不確実性や、様々な理由で問題となる直前の改正に業界は懸念を抱いています。」とも述べました。
TAGは欧州委員会に対し、EUDRが円滑に実施されるよう、消費者と生産者の双方と協力するよう求めました。
森林管理協議会(Forest Stewardship Council: FSC)(英語)のシンディ・チェン氏は、会期中の声明の中で、「不安な状況を作り出している」EUDRが、来年のFSCの焦点になるだろうと述べました。
「FSCは業界セクターと協力し、EUDRの新規制を遵守する利害関係者や企業を支援するソリューションを提供したいと考えています。」と同氏は語りました。
また、貿易と市場の日には、プロジェクト提案の技術評価に関する専門家パネルの報告、森林火災管理に関連する2つのITTOプロジェクトの事後評価報告、市場アクセスおよび森林・木材認証に関する報告、そして、違法伐採と関連貿易に関するアジア太平洋経済協力専門家グループの報告が行われました。
パナマ運河庁(英語)のルイス・アルバラド氏は、環境経済インセンティブ・プログラムについて講演を行いました。同プログラムは、パナマ運河流域に植生保護区をつくるための包括的な森林再生プログラムであり、2009年から実施されています。パナマ運河流域の土地のほとんどは私有地であるため、環境の回復と同時に農地の存続可能性を確保する必要があります。運河流域に残る原生林を保護するため、農業従事者には奨励金が支給されます。
理事会詳細については、https://www.itto.int/ja/ittc-60/presentations/をご参照ください。
IISDレポートサービスによる会期中の毎日の報道は、こちら(英語):https://enb.iisd.org/ittc60-international-tropical-timber-council.