タイの国内木材消費を促進:ITTO、タイ、日本の共同事業

2024-10-28

新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行は、熱帯木材貿易を含む国際市場を揺るがしました。タイでも、多くの国々と同様に、木材の国際的な需要と価格が大幅に下落しました。この課題に対し、国際熱帯木材機関(ITTO)と日本の林野庁は、タイの木材・木材製品の国内消費を促進するという重要な解決策を推進してきました。

国内消費が重要な理由

世界の木材市場が不安定なため、タイの国内の木材産業を強化することが重要となります。木材製品の国内消費を促進することで、変動する国際市場への依存を減らし、タイの長期的な経済と環境の持続可能性を支えることができます。

そのような方向性への大きな一歩として、木材の合法性と持続可能性に関する政策の改善、利害関係者の関与、木材サプライチェーンの強化が挙げられます。タイが将来を見据えるとき、日本における国内での木材消費の促進の成功は貴重な教訓となります。

ITTO本部でタイ代表団を歓迎するシャーム・サックルITTO事務局長。[写真:ITTO]

日本のモデル: 成功への青写真

日本は長年、主に中小企業を支援する政策を通じて、持続可能な木材消費をリードしてきました。木材と木材製品の利用を促進するアプローチは、経済的にも環境的にも大きな利益をもたらしてきました。

カセサート大学林学部長のコブサック・ワントンチャイ博士は、「私たちは、木材利用を促進する日本の取り組みを学ぶためにここに来ました。」と述べました。

日本の経験を学ぶことで、タイは、同国の地元企業や地域社会に持続可能な資源として木材を受け入れるよう奨励するための枠組みを開発する際の道筋を見出すことができます。ワントンチャイ博士は、「技術の必要性を目の当たりにし、彼ら(日本)の経験を聞くと、私たちがタイでできることは何かという点に関して、ひらめきを得ることができます」と加えました。

タイと日本のコラボレーション

王立森林局の副局長とカセサート大学林学部長を団長とするタイ代表団は、今回の訪日目的は、タイと日本の政府機関の連携を強化すること、および、日本の林業から学ぶこととしています。

今回の訪問では、東南アジア諸国を対象とした日本政府の資金援助によるプロジェクトのもとで実施している持続可能な木材利用の促進、国内政策の改善、生産能力の向上、脱炭素化への取り組みの支援に重点を置いています。この国家間の協力は、ITTOプロジェクト「タイにおける持続可能な木材製品の国内消費の促進」(PD 926/22 Rev.1)(英語)の一環であり、カセサート大学(英語)が支援しています。

今回の訪日の一環として、ITTO事務局は19名のタイ代表団を横浜の本部に招待しました。代表団はタイ王立森林局、タイの国営企業である森林産業機構、カセサート大学、SCGセメント建材株式会社など、タイの官・民・学の代表者によって構成されています。

会談では、ITTOでのタイの積極的な役割と、過去および現在のフォーカルポイントについての確認が行われました。シャーム・サックルITTO事務局長は、パタヤで開催された第59回国際熱帯木材理事会(59th Session of the International Tropical Timber Council: ITTC)をタイが主催したことに多大なる感謝の意を表しました。また、「横浜で開催される第60回国際熱帯木材理事会にタイの高官をお迎えすることを楽しみにしています。」と述べました。

データ報告の強化

第59回国際熱帯木材理事会を成功裏に開催したITTOの主だった人物とタイ政府に対する謝辞も述べられました。また、今回の訪問は、東南アジア諸国を対象とした日本政府の資金援助と、ITTOの主要プログラムラインである合法的で持続可能なサプライチェーン(Legal Sustainable Supply Chains: LSSC)のもとで実施されている、持続可能な木材利用と合法的サプライチェーンを推進するものでもあります。持続可能な木材利用(sustainable wood use: SWU)とチークの地域プロジェクトを含むこれらのプロジェクトは、国内政策、生産能力、関係者のスキルを向上させ、脱炭素化への取り組みを支援することを目的としています。タイの持続可能な木材利用プロジェクトは2025年初頭までに終了する予定です。

ITTOは組織の活動を共有し、サービス提供を強化する方法を模索するための重要なプラットフォームを確認するため、タイのような加盟国との訪問や直接的な交流を重視しています。シャーム・サックルITTO事務局長は、「プロジェクト策定に関するトレーニングワークショップの開催 」を熱望していることを伝え、「これは加盟国にとって重要な能力開発プログラムです。」と述べました。

今回の訪問での議論は、正確な木材生産と貿易報告に焦点が当てられており、非常に生産的なものとなりました。参加者らは、これらの重要な統計の収集と報告において各国が直面する共通の課題について検討しました。タイは世界木材指標(Global Timber Index: GTI)の新メンバーとして、官民双方からのデータ収集のための報告プロセスを理解することで、データの正確性を向上させることに強い関心を示しました。

代表団とITTOの代表は、加盟国のデータ収集と報告のやり方を改善するためのテクニカル・ワークショップを開催するというアイディアなど、考え得る解決策について話し合いました。ワークショップは実践的なガイダンスを提供し、より一貫性のある透明性の高い報告を保証するものです。今回の交流は、木材生産・消費に関する統計を強化する重要な一歩となりました。

木材生産と貿易に関する最近の知識について議論するジャン・クリストフ・クロウドンITTO統計アシスタント。 [写真: ITTO]

タイの今後は?

木材製品の国内普及における日本の経験と成功から学ぶことで、タイは将来に向けて木材産業を強化することができます。この協力関係は、持続可能な林業の実践を促進し、地域経済を向上させ、タイの木材資源の長期的な存続を保証するものです。

タイ王立森林局のバナラック・セルムトーン副局長は会議の中で、「私たちは多くのことを学び、それを持ち帰り、タイの林業セクターで実践するために帰国します。」と述べました。

タイ、日本、ITTOのパートナーシップは、持続可能な木材消費に向けた重要な一歩です。今回の教訓は、国内市場の強化を目指す他の熱帯木材生産国のモデルとなると考えられます。

ITTOはタイおよび他の加盟国と協力し、木材生産と貿易に関する統計データの改善に努め、林業セクターにおける政策と意思決定の基礎となる、適切で信頼性の高い統計の提供を確実なものにしていきます。