ITTO、APEC専門家グループの会合で持続可能な木材利用を奨励

2023年8月21日

このベトナムの住宅に使用されているような持続可能な木材は、経済的、環境的な利益をもたらす可能性を持つ。写真: VIFOREST

7月下旬に開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の違法伐採と関連貿易に関する専門家グループ(Expert Group on Illegal Logging and Associated Trade: EGILAT)第24回総会において、ITTOは、ITTO加盟国の国内市場における持続可能な木材利用を促進するための活動について報告しました。

同会議は7月30日から31日にかけてアメリカのシアトルで開催され、長年にわたるITTOの代表メンバーでもある米国農務省森林局のジェニファー・コンジェ氏が議長を務めました。

会議では、合法的に伐採された林産物の貿易促進と、違法伐採およびそれに関連する貿易と闘うための取り組みに関連する幅広い事柄について、議論が行われました。

冒頭、米国司法省のキャサリン・コンシュナイ筆頭次長は、違法貿易が合法的な貿易とAPECエコノミー(APECに参加する国と地域)の経済的繁栄を損なわないようにすること、国際犯罪組織やテロリスト・ネットワークの資金源を排除すること、合法的かつ持続可能な森林経営を確保することによる気候変動対策、野生生物の保護と生物多様性の損失の阻止、森林に依存する地域社会の生活を守ることといった問題に取り組む必要性を強調しました。同氏はまた、新型コロナウイルス感染症以降、世界の林産物市場が犯罪関係者にとって資金的に都合の良い場とならないよう(違法に伐採された林産物を他の国際犯罪の原動力としたり、市民の不安を永続させたり、世界の安全保障を脅かしたり、テロ組織に資金を提供したりする可能性がある)、各エコノミーに再確認するよう呼びかけました。

テトラ・ヤヌアリアディITTOプロジェクトマネージャーは、ベトナム[PD 922/21 Rev.1 (I)](英語)、タイ[PD 926/22 Rev.1 (I)] (英語)、インドネシア[PD 928/22 Rev.1 (I)] (英語)におけるITTOプロジェクト、およびマレーシアにおける同様の新規プロジェクトの開発に関して概説しました。日本政府の支援を受けて実施されているこれらのプロジェクトの目的は、合法で持続可能な木材の国内市場を開発することです。木材生産と木材製品貿易に関する国家戦略と政策の強化、生産能力の向上、地域林業企業の能力向上、木材製品の多様化、木材製品の利点に関する消費者の意識向上なども目指します。

ヤヌアリアディ博士は、これらのプロジェクトは、持続可能な世界のための持続可能な木材(Sustainable Wood for a Sustainable World: SW4SW)に対するITTOの貢献の一部であると述べました。SW4SWは、持続可能な木材サプライチェーンの価値を高め、その社会的、経済的、環境的利益を強化することを目的とした取り組みです。持続可能な木材の奨励は、ITTOの合法的で持続可能なサプライチェーンのプログラムラインの一部でもあります。

ヤヌアリアディ博士は、会議の場で、木材セクターがその主要な部分を担であろう循環型バイオエコノミーに向けた変革には持続可能な投資が必要であると述べました。また、持続可能な生産と消費を促進し、サプライチェーンの持続可能性を確保するためには、熱帯木材産業への官民の投資を可能にする環境を整えることが不可欠であると述べました。またITTOは、森林をベースにした持続可能なビジネスの開発をはじめとした、森林コミュニティの生活向上にも取り組んでいると、博士は語りました。


木材合法性ツールに関するワークショップ

EGILAT総会に続き、木材合法性のためのツールと技術に関するワークショップが2023年8月3-4日にシアトルで開催されました。このワークショップは、合法的に伐採された林産物の貿易と流通を促進するためのAPECプロジェクトの一環であり、米国国務省と米国農務省山林局の監修を受けたものです。

ヤヌアリアディ博士はワークショップ参加者に、中国とベトナムの木材合法性保証システムを分析したITTOプロジェクト[PP-A/56-342B](英語)の結果を共有しました。このプロジェクトは既存の合法性保証システムと同等のスキームとグッドプラクティスを体系的に分析することにより、合法的で持続可能な木材と木材製品の貿易を確保する努力に貢献しています。プロジェクトでは、特に、合法的で持続可能な木材貿易をさらに促進するために、国際的な利害関係者が取りうる手段を特定することを目的としています。プロジェクトの詳細は熱帯林ニュースレター(TFU)32/2号(英語)の掲載記事にてご覧ください。

APEC EGILAT 2023で木材の合法性に関するベストプラクティスについてプレゼンテーションを行ったテトラ・ヤヌアリアディITTOプロジェクトマネージャー(壇上右から2人目)。写真:Ratih Damayantiaption

関連するSDGs

ITTOは、合法的で持続可能な木材利用のための国内市場を発展させ、木材産業と貿易業者の間で木材の合法性証明システムとデューデリジェンスに対する理解を深め、ひいては木材製品の責任ある生産と消費を支援するために活動しています。

合法的で持続可能な熱帯木材のサプライチェーンは、気候変動緩和のために森林がもたらす利益を活用する一助となります。

ITTOが持続可能な森林経営を促進する手段のひとつが、合法的で持続可能な熱帯木材サプライチェーンに関する活動です。