アフリカでは絶滅の危険に瀕しているワシントン条約(CITES)掲載樹種への対処に向けて一層の能力強化が必要

25 April 2019

美しいアフロルモシア (Pericopsis elata)の木(ガーナ)。 写真撮影:自然と開発財団(Nature and Development Foundation)

3月にタンザニアで開催されたCITES樹種プログラム(CTSP)地域会議の参加者によれば、アフリカ諸国では、ワシントン条約(CITES(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約))に掲載された樹種の管理について継続的な支援が必要であり、CITESとITTOとが引き続き協力していくことが不可欠であるとのことです。
 
各国は、CITES掲載樹種から生産された木製品を輸出するに当たり、管理計画を策定し、無害証明(種の存続等を害することにならないという(すなわち持続可能性の)証明)を行わなければなりませんが、これを実施する能力に乏しい国が多いのが実情です。CITES樹種プログラム(CTSP)のアフリカ地域会議が2019年3月11日から15日までダルエスサラームで開催され、12の国と国際機関を代表して30人近くが参加しました。この会議は、アフリカのCITES担当機関間の域内協力を強化するとともに、CITES掲載樹種の管理計画の策定と実施に求められる能力の構築方策を明らかにする上で良い機会となりました。
 
この会議の席上、ITTOのスティーブン・ジョンソン氏からは、アフリカからは、毎年、約40億米ドルの丸太、ウッドチップ、木炭、加工製品といった木材や製品が輸出されていますが、それに占めるCITES掲載樹種の取引は非常に少ないとの報告がありました。例えば、アフロルモシア(Afrormosia(Pericopsis elata))については、約4百万㎥のアフリカからの年間丸太輸出量うち、約1万㎥を占めているにすぎません。
 
ジョンソン氏によれば、ひとたびCITESに掲載されると、通常、その樹種の貿易は急激に減少するとのことです。こうしたCITES掲載樹種の持続可能な経営が確実に行われるようにするための方策は、輸入国がCITESの条項どおりに木材が持続的に収穫されているとの確証を得られるよう、輸出国が管理計画を策定し、無害証明を行えるよう支援を行うことである、と同氏は述べました。
 
CTSPの調整担当であるミレーナ・ソーサ・シュミット氏によれば、現在、800種以上の樹種がCITESの附属書に掲載されていますが、そのうち、600種以上が恒常的に取引されています。CTSPには次の4つの目的があります:1) 技術やテクノロジー面の向上を通じて、稀少で価値の高い樹種やそれらから生産される製品の持続可能な経営を確実なものとすること、2) 同定技術の向上など、このような樹種から生産される製品の合法的で追跡可能な貿易に貢献すること、3) 森林ガバナンス、森林経営政策や法令の執行能力の改善と強化を助け、CITES樹種が分布する地域の森林経営を長期的に支援することによって得られる恩恵を確かなものとすること、4)遠隔地にあることが多い農山村の振興、国レベルでの持続的な経済成長、健全な民間セクター、そして長期的な貧困の撲滅を促進すること。
 
CTSPは、欧州連合(EU)からCITES事務局への資金供与を通じて賄われていますが、ITTOが10年以上も前にCITESとの協力の下で開始した、開発途上の熱帯諸国が無害証明報告、管理計画やCITES掲載樹種のトレーサビリティーを実施できるよう支援するための活動を継続しています。アフリカでは、アフロルモシア、アフリカンチェリー、黒檀(エボニー)、白檀、ローズウッド、ビンガといった重要な商業樹種が対象となっています。CITESとITTOはCTSPの実施面で協力していますが、ITTOはアフリカ会議を開催することで支援を行いました。アフリカについては、事務手続きが完了次第8件のプロジェクトがCTSPの下で実施される予定です。
 
会議の作業部会では、スリランカのコロンボで5月に開催されるCITESの第18回締約国会議に向けて幅広い提言が行われました。アフリカンチェリーについて取り上げられた主な課題は、トレーサビリティーや表示技術の向上のほか、樹皮採取の技術と周期に関するさらなる研究の必要性でした。また、参加者からは、原材料の輸出よりも国内加工を望む声が聞かれました。白檀(Osyris lanceolataに関する作業部会では、更新技術に関する育林作業や収穫のベスト・プラクティスといった基礎的な生態学的な知見の必要性が強調されました。現時点では、収穫されてしまった白檀の表示や追跡を行う技術は開発されていません。
 
他の作業部会では、無害証明、表示と追跡、木材の同定やガバナンスに関する提言が取りまとめられました。各作業部会からの報告を基に活発な全体議論が行われ、アフリカにおいて法令の執行を支援するためには木材の地域同定ラボを設立することの必要性が認識されました。参加者からは、ITTOとCITESに対して、ITTO – CITESプログラムの下で実施されたこれまでの活動、特に無害証明に関するものについて、その概要を作成してほしいとの要望がありました。また、参加者からは、来たるCITES締約国会議において、CITESとITTOの協力が高く評価され、その継続・強化の必要性が強調されるべきである旨が特に述べられました。
 
www.cites.orgにて詳細がご覧になれます。