ITTOは大メコン圏で持続可能なチーク林経営プロジェクトを開始

2019年4月23日, バンコク(タイ)

バンコクで開かれたITTO実施のチークプロジェクト「大メコン圏におけるチーク林の保全と持続可能な経営および合法的かつ持続可能な木材サプライチェーンの強化」の開会式に出席したスピーカー。左から右へ:ルダワン・プアグチット博士、サニット・アクソーンコーエ上院議員、アタポン・ジャローンシュンサ氏、ヤン・シアー氏、ゲァハート・ディタレ博士。写真撮影:ITTO

2019年4月23日にタイのバンコクで開催されたITTOチークプロジェクトの開会式に出席したスピーカーによれば、持続可能なチーク林の経営と合法的かつ持続的なサプライチェーンの整備は、大メコン圏での持続可能な開発目標の達成に大いに寄与するとのことです。
 
チーク(Tectona grandis)は、その並外れた強度と美しさから世界で最も貴重な広葉樹の一つとされています。アフリカ、アジア、ラテンアメリカのおよそ70の熱帯諸国には、天然生または造林されたチーク林が存在しており、チーク材の生産と加工は、地域社会の暮らしと国の経済発展に大きく寄与する可能性を秘めています。大メコン圏は世界のチークの遺伝子資源の起源とされ、ラオス、ミャンマー、タイには重要なチークの天然林があります。
 
ITTOの「大メコン圏におけるチーク林の保全と持続可能な経営および合法的かつ持続可能な木材サプライチェーンの強化」プロジェクト(正確には二カ年事業計画(Biennial Work Programme)下の活動)は、ドイツ政府からの資金提供を受けて実施されます。本プロジェクトでは、その参加国であるカンボジア、ラオス人民民主共和国、ミャンマー、タイ、ベトナムに対し、主に、この地域特有の天然チーク林とその遺伝子プールの保全、山村住民や小規模森林所有者の収入の増加、木材の加工・マーケティング方法の改善およびチーク林経営における域内協力と連携の拡大などに向けて支援が行われます。
 
プロジェクト開会式の席上、タイ国民議会のサニット・アクソーンコーエ上院議員は次のように述べました。持続可能な森林経営(Sustainable Forest Management(SFM))が経済面、社会面、保全面で有する価値は非常に高く、総合的なSFM計画はタイの経済発展にとって不可欠です。ITTOがタイおよび他の大メコン圏諸国のSFM能力の強化のために長きに渡って築いてきたパートナーシップに感謝します。タイ政府は近年、農業従事者が人工林からより高い収益が得られる森林および土地関連の法律を多数制定しました。
 
アクソーンコーエ上院議員は、「経済的、社会的な福祉の増進と、地球的規模の気候変動対策への環境面での貢献の強化に向けて、私たちは、国内消費用と輸出用のいずれについても、持続可能な方法による木製品の生産を促進する必要があります。」と発言しました。
 
ITTO事務局長のゲァハート・ディタレ博士は、次のように話しました。ドイツ政府、ドイツ連邦食糧・農業省および本プロジェクトの参加国であるメコン地域5カ国の政府と研究機関が、ITTOを通じて大メコン圏の合法的かつ持続可能な木材サプライチェーンの整備に取り組まれることに感謝します。ITTOの合法的かつ持続可能なサプライチェーンプログラム(Legal and Sustainable Supply Chains Programme)の目的は、誘導的な政策、制度的・資金的な条件整備、助成措置への整合性のとれた先進的な取組を支援することです。
 
ディタレ博士は、本チーク林プロジェクトは、気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)が2018年10月に公表した特別報告書の提言に対し、実質的な成果をもたらすものになるでしょう、と述べました。
 
持続可能な方法で生産された木材は、立木から市場に出回る一連の最終製品に至るまで、循環型のバイオ経済への移行を助長し得ることが立証されていると、ディタレ博士は述べました。
 
タイ王立森林局のアタポン・ジャローンシュンサ局長の発言は次のとおりです。タイ政府は最近、地域住民による森林資源の共同経営への参加を促し、そのニーズと豊かな暮らしを実現するとともに、少なくとも国土の55パーセントを森林として維持するという国家目標の達成に資するよう、6つの森林関連法を改正しました。2019年の造林法(2019 Forest Plantation Act)の下で、私有地や許可を受けた地域に植栽された樹木(チークを含む)については保護の対象から外して「経済樹種」とし、樹木の所有者が収穫することを認めています。
 
ジャローンシュンサ氏は、ITTOのチークプロジェクトは大メコン圏にたいへん相応しいもので、タイに関して言えば、生産林の拡大に向けたグリーン成長経済に関する国家政策(National Policy on Green Growth Economy)に貢献する上で時宜を得た開始となったと言えます、と述べました。
 
カセサート大学副学長のルダワン・プアグチット博士は、ITTOのチークプロジェクトにカセサート大学が参加できることに感謝の意を表しました。さらに、この種の政府の事業に学術機関が参加することは、実施面での質の向上に資するだけでなく、職員に対して、国際的に重要な研究と開発への取組に参加するというこれまでにない機会を提供できるのです、と話しました。
 
在タイドイツ大使館次席兼経済部長のヤン・シアー氏は、チーク林資源は極めて貴重でありながら、近年、質・量ともに減少しており、早急に対策を講じなければ今後さらに減少する恐れがあります、と述べました。また、チーク材の家具の耐朽性に触れ、持続可能なチーク林経営が経済発展と気候変動対策にもたらす便益を増加させることの重要性を強調しました。さらに、ITTOのチークプロジェクトは大メコン圏にとって重要な役割を果たすでしょう、と述べ、プロジェクトが成功し、地域社会や小規模所有者がより大きな恩恵を享受できるよう、思い切った取組、包摂的なアプローチ、域内協力の拡大を呼びかけました。
 
ドイツ連邦食糧・農業省のジルケ・ヘルトリッヒ氏は、次のように述べました。プロジェクト成功の鍵は域内協力と良好なコミュニケーションです。ドイツは、SFMに向けた取組に対し支援を行うという明確な政治的意思を示しています。本プロジェクトは、気候変動の緩和と遺伝資源の保全だけでなく、合法的なサプライチェーンを通じ、貴重な資源の持続的な利用も後押しするでしょう。本プロジェクトが大メコン圏で実施されるに当たり、緊密な域内協力を期待しています。
 
タイ王室森林局のスワン博士は、大メコン圏でのチーク林の持続可能な経営を確実なものとするためには、チーク林の遺伝子資源の生息域内・域外双方での保全に向けて、一層の研究と開発、パートナーシップ、ネットワーキングが不可欠です、と述べました。
 
4月23日にプロジェクト運営委員会の第一回会合が開催されました。2019年10月には、ミャンマーでチーク林の持続可能な経営に関する能力強化のための地域ワークショップが開催される予定です。