ITTO、世界木材デーに見解を示す―持続可能な木材がバイオエコノミーの転換を促進

2025年3月20日, 仙台

Paula SARIGUMBA

木材パネル。カンボジアのITTO-BMELチーク・プロジェクト拠点のひとつにて。写真: Alfredo Ruzol

自然と持続可能性に関する世界的な課題を挙げると、その答えのひとつが木材だと気づくでしょう。

森林は、気候変動を引き起こす炭素を隔離、貯蔵、吸収する重要な役割を担っています。また、生物多様性の重要な貯蔵庫であり、避難所でもあります。森林は、何百万もの人々に水、食料、生活、災害からの保護を提供しており、森林からの木材は循環型バイオエコノミーへの移行に不可欠な再生可能素材と言えます。

毎年3月21日のワールド・ウッド・デー(World Wood Day)は、人類の持続可能な未来の確保のために、森林と木材が重要であることを認識し、称える機会です。ITTOとそのパートナーにとっては、熱帯林の持続可能な経営と熱帯林産物の合法で持続可能な取引を促進するという使命へのコミットメントを強化することを意味します。

2025年3月19日、仙台で開催された木材科学技術国際シンポジウム(ISWST)で来賓挨拶をするシャーム・サックルITTO事務局長。写真: Paula Sarigumba/ITTO

シャーム・サックルITTO事務局長は、仙台で開催された国際木材科学技術シンポジウム(ISWST)2025と併催の2025ワールド・ウッド・デー・シンポジウムを前に、同メッセージをさらに強調しました。

3月18日に行われたISWST開会式での来賓挨拶で、サックル事務局長は、持続可能な方法で管理された林業セクターが、経済成長を促進し、生物多様性を保全し、持続可能な雇用を提供し、特に熱帯林地域における何百万人もの人々の生活を支えていることを強調しました。

また、コンクリート、鉄鋼、プラスチックなど、炭素やエネルギーを大量に消費する素材に代わる、最も環境に優しく再生可能な天然素材という木材の性質は、まだ十分に活用されていません。

「真に持続可能な循環型バイオエコノミーへの移行は、一夜にして実現するものではありません。しかし、科学、産業、政策の連携を強化することで、責任ある持続可能な木材利用へのシフトを加速させ、森林が繁栄し続けるようにすることができるのです」とサックル事務局長は語りました。

ガーナの木材工場。写真: Peter Zormelo

数十年にわたる研究と現場でのエビデンスにより、持続可能な森林経営と革新的な木材利用の解決策の利点が実証されてきましたが、多くの場合、それらの知見が実際に応用されることはありません。

脆弱なガバナンス、投資の不足、違法伐採、森林破壊、合法かつ持続可能な木材の環境的・社会経済的な恩恵に対する消費者の認識不足などが、持続可能な木材生産と利用の障壁になっています。

こうした障壁を克服するため、サックル事務局長は、科学者、研究者、政策立案者、産業界のリーダーたちの連携を強化し、人工木材製品、持続可能な伐採・利用技術、循環型バイオエコノミー戦略といった分野における科学的ブレークスルーを、責任ある森林経営と利用を促す国内外の政策枠組みに統合できるようにすることを求めました。

それと並行して、持続可能な木材製品の市場を開拓しつつ、これらの材料が入手しやすく、コスト面での競争力があり、さまざまな産業で広く利用されるようにするためにするには、大規模な投資が必要となります。

仙台で開催されたISWST2025のITTOブースを訪れた学生、研究者、実務者ら。写真: Paula Sarigumba/ITTO

同様に重要なのは、森林コミュニティ、政府機関、企業に持続可能な実践を効果的に実施するために必要なスキルとリソースを与えるための、より大きな能力開発と知識共有のイニシアティブが必要であるということです。

サックル事務局長はさらに、ITTOとそのパートナーは、持続可能な木材バリューチェーンの導入を強化し、森林が将来の世代にとって実行可能な社会経済的・環境的資源であり続けるよう、引き続き取り組んでいくと述べました。

ITTOの合法かつ持続可能なサプライチェーンプログラムや、グローバル・リーガル&サステナブル・ティンバー・フォーラムなどの取組のような効果的な手段は、すでに木材業界の利害関係者間のネットワーキング、連携、ビジネス交流を強化しています。これらの取組は、合法で持続可能な木材サプライチェーンの活用を支援し、責任を持って調達された木材製品の使用と取引を奨励しています。どちらの活動も、森林に関する協調パートナーシップ(Collaborative Partnership on Forests: CPF)の共同イニシアティブ「持続可能な世界のための持続可能な木材(SW4SW)」に貢献しています。  

ITTOの持続可能な木材利用プロジェクトは、政策、規制、業界の慣行を見直すことにより、国内および地域で責任ある木材消費を促進することに重点を置いています。また、消費者の嗜好の変化、製品の選択肢の制限、安価な代替品との競争などの障壁を克服するために、ベストプラクティスを模索し、奨励し、政策の変更を提言することを目的としています。このような取組は、森林の持続可能な利用と持続可能な方法で生産された木材の使用を全面的に支援するものです。

関連するSDGs

本記事では、持続可能な森林経営と責任ある木材利用の重要性を強調し、持続可能な方法で調達された木材が、炭素集約的な材料に取って代わり、循環型バイオエコノミーを促進することを紹介しています。また、違法伐採、脆弱なガバナンス、消費者の意識といった課題を取り上げ、持続可能な木材バリューチェーンを確保するための政策、投資、協力の強化を提唱しています。こうした取組を通じて、この記事はSDGs12「つくる責任、つかう責任」が狙いとする環境負荷の削減と持続可能な生産・消費パターンの育成を支援しています。
また、本記事では、気候変動を緩和する重要な炭素吸収源としての森林の役割を強調しています。炭素排出の主な原因である森林破壊や違法伐採を減らすために、持続可能な森林経営が必要であることも強調しています。さらに、コンクリートや鉄鋼のような炭素を大量に消費する材料の代替として、持続可能な方法で調達された木材を促進することは、気候変動に配慮した生産と消費を支えることになります。より強力な政策、投資、協力を提唱することで、この記事は責任ある林業と木材利用を通じた気候変動対策の喫緊の必要性を強調しています。
生物多様性の保全、生態系の保護、森林資源の長期的な存続可能性の確保における持続可能な森林経営の重要性を示すことで、この記事は、生物多様性の重要な貯蔵庫としての森林と、生活と生計を支える森林の役割にスポットライトを当てています。さらに、森林伐採、違法伐採、脆弱なガバナンスなどの課題を取り上げ、責任ある森林利用を促進するための政策、投資、能力開発の強化を提唱しています。これらの取組は、生物多様性の損失を食い止め、陸域生態系の持続可能な利用を確保するというSDG15「陸の豊かさも守ろう」に直接貢献するものです。