熱帯木材業界団体、ITTOに熱帯木材擁護のための更なる努力を求める

2024年12月3日, 横浜

貿易諮問グループ(TAG)が作成した声明を読み上げる国際木材製品協会(米国)のアシュリー・アミドン氏。写真:P.Sarigumba/ITTO

世界中の木材生産者が輸送コストの高騰に動揺し、熱帯木材セクターが消費者のネガティブなイメージに苦しむ中、貿易諮問グループ(TAG)は本日、ITTOに対し、生産者が木材のトレーサビリティ、合法性、持続可能性に関して行ってきた「驚異的な進歩」を伝えることにより、熱帯木材の需要回復に注力するよう呼びかけました。

TAGは、国際熱帯木材理事会第60回会合の「貿易と市場の日」の一環として発表した声明(英語)の中で、熱帯木材セクターは様々な面、特に輸送コストの面で圧力を受けていると述べました。

「多くの生産国の輸出業者は、海運会社が新型コロナウイルス感染症の世界的大流行や地域的紛争の影響を受け続けていることを理由に、海上輸送運賃やその他の物流コストを引き上げていることに不満を抱いています。」とTAGの声明文は指摘しています。

声明文によると、海上輸送運賃はパンデミック直後に10倍に上昇し、現在も新型コロナウイルス感染症の流行前の5倍です。

「価格意識が木材使用の障壁となっている今、これらのコストは最終的には貿易を圧迫するだけでなく、消費者にも転嫁されることになります。」と同声明は述べています。

TAGは、この問題をさらに深刻にしているのは、熱帯木材生産者が持続可能な森林経営に向けてどのような努力をしているかという情報が、伝統的な市場に不足していることだと指摘しました。

TAGの声明は、ITTOとマカオ招商投資促進局(IPIM)*(英語)によって2023年に設立されたグローバル・リーガル&サステイナブル・ティンバー・フォーラム( Global Legal and Sustainable Timber Forum: GLSTF)(英語)にも言及しました。今年、GLSTFは、木材サプライチェーンの関係者間の国際的な協力関係を強化し、木材産業の持続可能な発展を促進し、持続可能な開発目標に貢献し、気候変動と闘うことを目的として、「合法かつ持続可能な木材サプライチェーンの促進のための行動枠組み」を立ち上げました。

*2024年7月より組織の合併により名称変更。英語の略称IPIMは引き続き使用される。


「ITTOとGLSTFが、市場における否定的な認識に対処するために協力することは、自然な流れであると思われます。」とTAGの声明文では述べられています。

「私たちは共に、誰もが知っていることを実証する物語を作り上げることができるでしょう―それは、木材が持続可能であること、貿易が森林に利益をもたらすこと、そして力を合わせれば未来のために熱帯林を守ることができるということです。」

「貿易と市場の日」に、「生産と貿易:コストの上昇と需要の減退」をテーマに6人の登壇者が講演を行いました。

12月3日、横浜で開催された2024年度年次市場ディスカッション「生産と貿易:コストの上昇と需要の減退」の登壇者。写真: P.Sarigumba/ITTO

ブラジルのSTCP(スペイン語)のイバン・トマセリ氏は、「ITTOは、熱帯林の持続可能な経営と合法的な伐採を促進し、熱帯木材製品の国際貿易の拡大と多様化を促進するという目的を果たせなかったのか」という問いを投げかけました。トマセリ氏は、一つの意味では、ITTOは失敗していないと結論付けました。なぜなら、熱帯林の持続可能な経営において大きな進展があり、今では持続可能性が熱帯木材セクターの行動の指針となっているからです。しかし、別の意味では、熱帯木材が市場シェアを失いつつあるため、ITTOは失敗していると言えると同氏は指摘しました。トマセリ博士は、プランテーションにより焦点を当て、持続可能性に向けた進捗状況について広報活動を改善するよう提案しました。

ガボン林業木材産業協会(l'Union des Forestiers et Industriels du Bois: UFIGA)(フランス語)のジャン・マリー・ントゥトゥメ氏は、ガボンにおける主な外貨獲得手段であり、同国の民間セクターの1万7000もの直接・間接雇用を占める森林生産の歴史について概説しました。2021年に丸太の輸出が禁止された後、すべての丸太は現地で加工されていますが、同国には生産コストと注文対応時間の削減による競争力の強化が必要とされています。

メキシコ全国林産物輸出入協会(スペイン語)のアルフォンソ・エルナンデス・アンヘル氏は、同国の約1,200万人が森林の生態系の中で生活しているか、森林生態系に依存していると述べました。森林減少は深刻な問題であり、その主な原因は家畜の放牧、一年生作物の生産、インフラや不動産開発への転換です。同氏は、より多くの森林教育と森林セクターへの投資、過剰な規制の回避を訴えました。

ベトナム木材・林産物協会ノゴ・シ・ホアイ氏は、森林セクターと木材加工産業の成功を示すデータを提供し、これを可能にした政策の策定について概説しました。同セクターにとってアカシアは非常に重要で、原材料の80%を供給しているとともに、同セクターで使用されるアカシア丸太の70~80%を小規模農業従事者が供給しています。同氏はいくつかの課題に言及し、ITTOに対し、特に公正な取引と持続可能な木材産業の発展を提唱するよう求めました。

シルバ・システムズ・オーストラリアのブレイデン・ジェンキン氏は、プランテーションで育った樹木から得られる木材の使用と、自然林で育った同じ樹種との木材特性の違いについて語りました。この違いを活かすには、新しい原材料の特性に基づいて製品や市場を開発しようという考え方の再設定「マインド・リセット」が必要です。プランテーションは、プランテーション産の木材単体で、あるいは天然林の木材と組み合わせたかたちで、新しい製品を生産する機会を提供していると言えます。

ロウ・シンジアン氏は、木材産業の持続可能性を推進するための国際的なプラットフォームであるグローバル・グリーンサプライチェーン・イニシアティブの概要を説明しました。また、2024年に中国のマカオ特別行政区で開催されたグローバル・リーガル&サステイナブル・ティンバー・フォーラムと、そこで報告された世界木材指標プラットフォームの実施、中部アフリカと中国の木材産業クラスターと産業用地に関する協力などの成果についても語りました。

2024年年次市場ディスカッションで基調講演を行うSTCPブラジルのイバン・トマセリ博士。写真:P.Sarigumba/ITTO

「貿易と市場の日」の詳細については、https://www.itto.int/ja/ittc-60/presentations/をご参照ください。

IISDレポートサービスによる会期中の毎日の報道は、こちら(英語):https://enb.iisd.org/ittc60-international-tropical-timber-council