熱帯林 – 豊かな生物多様性が生きる場所  国際森林デーを記念して

2020年3月21日, 横浜

ベナンでのITTOのプロジェクトにより、8つの神聖な森でこのナイルオオトカゲ(Nile lizard)を含めた1,100を超える動物種の個体が再導入されました。写真撮影:michaklootwijk/iStock

熱帯林が地球全体の面積に占める面積はわずかです。しかしながらそこには世界の陸生植物や動物種の半数以上が生息していると考えられています。ITTOはこの豊かな生物多様性を保全し、同時に森林に依存する人々の福利を向上するため、政策を策定しプロジェクトに資金協力を行っています。ベナンの神聖な森やインドネシアのチボダス生物圏保護区(Cibodas Biosphere Researve)におけるITTOの取り組みについてご一読下さい。

ベナンの神聖な森の生物多様性

神聖な森とは、宗教的な理由で地域住民が維持している森林のことです。面積は小さくとも生物多様性に富んでいることが多く、環境面、文化面、精神面で重要な役割を果たします。ベナンには少なくとも2,940、面積にして18,360ヘクタールの神聖な森があります。しかし、無規制の利用、農業への転換、都市からかけられる負荷、木質燃料への大きな需要、山村地域の貧困、信教の消失が原因でその多くが劣化しています。この問題に対処する取り組みとして、ITTOは、ベナンのいくつかの神聖な森の保全とその緩衝地帯の持続可能な管理を目指す「ベナンのラムサール地域1017及び1018における神聖な森の再生及び持続可能な経営( Rehabilitation and sustainable management of sacred forests on RAMSAR sites 1017 and 1018)」プロジェクトに資金協力を行っています。

本プロジェクトでは42の神聖な森が法的に認知・区画され、森林コミュニティが自然資源をうまく管理できるよう簡易的な森林経営計画が策定されました。150ヘクタール以上に及ぶ神聖な森が価値のある樹木の苗木で強化されました。この中にはカヤ(Khaya senegalensis)、クワ(Milicia excelsa)、アフイナ(Terminalia superba)、アオギリ(Triplochiton scleroxylon)およびバオバブ(Adansonia digitata)のような国際資源保護連合(IUCN)の絶滅危惧種レッドリストの中で危急種(Vulnerable)に分類されているものもあります。このような樹木は、その保護を目的として国際取引を制限するワシントン条約(CITES)附属書IIに掲載されているものを含む、多くの希少な動物種の生息場所となっています。

8つの神聖な森における地域住民への啓発活動により、神と崇められるボールニシキヘビ(Python regius)、サバンナオオトカゲ とナイルオオトカゲ (Varanus exanthematicusと Varanus niloticus)、 カメレオン (Chamaeleo gracilis と Chamaeleo senegalensis)およびショウガラゴ (Galago spp.)など1,100以上の動物種の個体が再導入されました。また、アカハラグエノン(Cercopithecus erythrogaster)のような種が神聖な森の再生後に再び生息を始めました。

森林の生物学的、文化的、精神的な価値が高められたことから、神聖な森の再生は地元の人々に歓迎されました。また、本プロジェクトを通じて導入されたアグロフォレストリー、養蜂、ヤギ・豚・鶏・ウサギの飼育、魚の養殖、非木材林産物の取引といった収入創出事業も地元の人々に裨益しています。神聖な森の緩衝地帯には部分的にチーク(Tectona grandis)、アカシア(Acacia auriculiformis)、その他の外来樹種が植えられ、木材や森林製品に対する地元のニーズを充足させるのに役立っています。

地元の人々の暮らしが向上するにつれ、神聖な森が侵入される必要も減りました。
Houènonko 村長兼 Ayossizoun 自治体神聖な森の経営委員会会長を務めるAntoine Houenon 氏は、「規制枠組みの整備と簡素化した森林経営計画の策定によって、私達の自然資源の管理における私達自身のリーダーシップと知識を再確認することができ、結果として私達のコミュニティの発展が支えられました。」と話しました。

「また、土地保有の保障と神聖な森に現れた平穏によって、いくつかの動物種が徐々に森に戻ってきています。希少な動植物種の再導入といった他の活動は、私達の森林が野生動物の生息場所となる力を強化しています。今日この場を借りて、私は私達に希望を取り戻して下さった人々全てに喜びと感謝の気持ちを表したいと思います。」

Houinyehoueve 神聖な森自治体管理委員会文化部長のTchannoukin Sozehoue 氏は、「このプロジェクトの実施による神聖な森の法的な認知は古くからの信仰も考慮しました。このおかげで先祖から伝わる私達の慣習に不評をもたらすような外からの信仰の影響が少なくなりました。」と述べました。

「私達の先祖の時代に高く敬われ重んじられた神聖な性質が生き返りました。今では誇りを持って森林の中のこの効果があるとされる場所で文化的行事や祭事を開催しています。これは全て私達の文化的アイデンティティの復活と促進に寄与しています。」

チボダス生物圏保護区(Cibodas Biosphere Reserve)の再生

チボダス生物圏保護区(Cibodas Biosphere Reserve:CBR)はインドネシア・ジャワのボゴール、チアンジュール、スカブミ地域におよそ115,000ヘクタールに渡って広がっており、その中心にはグヌン・グデ・パンランゴ国立公園があります。CBRは絶滅危機種や危急種とされる何百もの動植物種の保護区です。その中にはワウワウ(Hylobates moloch)やスンダリーフモンキー(Presbytis comata)のようなジャワの25種の在来野生生物が含まれます。

ユネスコは1977年にCBRをユネスコエコパーク(生物圏保存地域)に認定しました。人気の高い観光名所であると同時に首都ジャカルタを含むおよそ3,000万人の人々にとっての重要な水源です。ジャワの他の広範な地域が農業や開発のために消滅した中、CBRは生物多様性の重要な拠点となっています。

しかし、管理が行き届いていないためCBRは劣化し、終了したITTOのプロジェクト下で策定された統合型戦略管理計画は政治的、制度的、財政的理由から成果を出すことができませんでした。新たなITTOのプロジェクトで現在実施中の「現地関係者の関与を得た適切な警官管理を通じたチボダス生物圏保護区の再生の加速(Accelerating the restoration of Cibodas Biosphere Reserve functions through proper management of landscapes involving local stakeholders)」はこれを変えようとしています。本プロジェクトは、中核地域の生物多様性への脅威を軽減し、CBRの緩衝・移行地帯における最適な土地利用方法を促進し、CBRの管理に向けた制度的取り決めを改善することを目的として統合型戦略的管理計画を部分的に施行しています。

本プロジェクトはグヌン・グデ・パンランゴ国立公園管理局、対象3地域の政府、NGO、大学、インドネシア科学アカデミー(National Academy of Sciences)の関与を得た参加型アプローチを用いて実施されています。

ベニンの神聖な森とインドネシアのCBRに対するITTOプロジェクトはITTOの活動の一部です。他に、生物の多様性に関する条約(生物多様性条約、Convention on Biological Diversity)と連携した活動も行なっており、生物多様性、人々、地球に恩恵がもたらされるよう加盟国による熱帯林資源の持続可能な管理を支援しています。

熱帯生産林における生物多様性のためのITTO・IUCNとの共同ガイドライン(ITTO/IUCN Guidelines for the Conservation and Sustainable Use of Biodiversity in Tropical Timber Production Forests)やその他の持続可能な熱帯林経営に向けたITTO政策文書はこちらで閲覧できます。