2010年年次市場ディスカッション‘木材関連産業における革新と技術’

加工木材製品についてプレゼンテーションを行うFPInnovationのAntje Wahl氏. 写真: K. Sato/ITTO

2010年の年次市場ディスカッションが、第45回国際熱帯木材理事会の会期中の2010年12月15日に開かれました。取引諮問グループ(TAG)コーディネーターである、Barney Chan氏が議長を務め、開会挨拶では加盟国代表者らに2010年の市場ディスカッションのテーマである‘木材関連産業における革新と技術’が市場をめぐる通常取り扱われる諸問題からの脱却であると述べました。このテーマに沿って4人のスピーカーが招かれ、講演を行いました。 
 
メルボルン大学のGary Waugh教授は、林産業の世界的な課題-熱帯木材セクターにおける脅威と機会について講演を行いました。少ない労力でより多くの成果を目指す‘doing more with less’を中心テーマに据え、付加価値のある木材製品(sawnとべニア)、複合材料や適合する資源、加工と生産品市場への必要性について焦点を当てました。 
 
Edinburgh Napier University、Forest Products Research InstituteのCallum Hill教授は、木材加工について講演しました。木材加工の技術については長年に渡り知られていたものの、市場の関心はごく最近になって生まれ、消費者は森林のもつ環境と持続可能性に関する実績に関心を寄せるようになってきたと説明しました。加えて、多くの熱帯硬材の利用が減少していることや、熱帯木材価格が高騰していることによって、商業用軟材の加工がより収益が上げられるものになっている、と述べています。 
 
カナダ、バンクーバーのFPInnovation市場経済グループのM.Sc. Antje Wahl氏が行った講演での主要なメッセージは、木材の加工技術が低密度で成長の早い種に適用された結果、その製品が元来耐久性の高い熱帯木材と競争できるということでした。化学的に加工された木材製品が市場に占める量はごく少ないものの、加熱加工された木材製品、木材とプラスチックとの合成品は、今日広く使われていることが知られています。それらの製造業者は、リサイクル品やリサイクルの可能性について重点的に取り組む環境マーケティングのメッセージを利用しています。 
 
ブラジル、STCP Engenharia de Projetos LtdaのIvan Tomaselli博士による‘技術革新の採用―ラテンアメリカの木材セクター’と題した講演では、ラテンアメリカとさらに広い世界的な木材産業が、構造的変化を経験していることが述べられました。その中で、太い直径の木から細い直径の木へと使用が徐々にシフトし、早く成長する植林樹木と新製品、新技術が絶えず出現していることを示しました。またべニアや熱帯産装飾用合板の市場で競争を激化させている新しい加工法の事例を明らかにしました。これらは紙張り製品や高圧薄板、合成べニア、(MDFやMDFパネルへの)直接印刷などを含みます。Tomaselli博士は過去10年でブラジルでの装飾べニア部門の生産高は50%以上減少していると報告しました。 
 
熱帯木材生産者がマーケットシェアを回復するための望ましい解決法は、認証材トレードへ早急に移行すること、そして熱帯木材を取り囲む社会問題への消費者の関心に注意を向けることにあります。加工軟木製品との競争に直面していることに関して、Hill教授は、熱帯の国々が、できることなら、低密度で成長が早く安価な木材で、加工処理に適した一定の特徴を持つ木材資源を、低資本コストの熱加工設備とともに作り出せたらいいのだが、と示唆しました。 

すべての樹木は、軟木も硬木も、代替物との競争に影響を受けることが指摘されています。しかし今日の市場では、熱帯の硬木市場への影響が最も深刻です。他産業セクターでは技術革新や振興促進への巨額の投資があるのに、これに対する熱帯木材産業の反応は遅れています。