日本企業とITTO、森林・炭素プロジェクトへのコミュニティ参画に関する知見を共有
2025年3月17日, 東京
Paula SARIGUMBA

ITTOは民間セクターと連携し、林業と炭素プロジェクトにおけるパートナーシップの可能性を探っています。写真: Paula Sarigumba/ITTO
ITTOが先日開催したネットワーキングイベントでは、参加した日本の林業当局、金融、産業界の大手企業が、地域社会との関係を強化し、炭素プロジェクトをはじめとする森林プロジェクトの様々な課題を克服する方法について話し合いました。
三井住友フィナンシャルグループ、住友商事、INPEX、国際協力機構(JICA)、その他各社のサステナビリティ専門家は、シャーム・サックルITTO事務局長(およびITTO関係者)と共に、2025年2月28日に東京で開催された「森林炭素クレジットの創出における地域コミュニティとの良好なパートナーシップの築き方」と題するイベントに参加しました。司会進行はERMジャパンのパートナーの富田宏氏が務めました。
オープニング・セッションでは、サックル事務局長がITTOの概要、持続可能な森林経営と合法で持続可能な貿易に関するミッション、そしてITTOが取り組んでいるプロジェクトや活動について紹介しました。続いて、ERMの姫野美希氏が森林炭素プロジェクトにおける利益配分について説明しました。次に、ジェニファー・コンジェITTO事務局次長(森林経営)が、炭素クレジットと森林炭素クレジットプロジェクトの概念について説明し、炭素プロジェクトやそれ以外のプロジェクトにおいて、地域コミュニティとの強い関係を育んできたITTOの林業関連の取組のケーススタディを紹介しました。
プレゼンテーションの後、民間セクターが直面する課題と、地元パートナーやコミュニティとの関係強化における可能な解決策についてパネルディスカッションが行われました。
炭素プロジェクトにおける課題
民間セクターの専門家は、大規模なプロジェクトを実施する能力だけでなく、地域コミュニティとの関係を確立しているパートナー組織を見つけることの難しさを強調しました。
利益分配と支払いの分配をめぐる紛争ももう一つの重要な課題であり、生態系サービスへの支払い(PES)のスキームを通じたものも含め、インセンティブと地域の能力をめぐって対立が生じています。
専門家たちはまた、森林プロジェクトが炭素クレジットや収益を生み出すには、先行投資が必要であること、つまり、このようなプロジェクトを主導できるのは財務的に強固な企業だけであることも指摘しました。
ITTOのソリューション
ITTO事務局長は、「ITTOはいくつかのプロジェクトで同様の問題に遭遇しているが、ホスト国政府の支援を受けて森林プロジェクトを実施しており、当局のネットワークを活用してプロジェクトの運営を強化することができます。」と述べました。
「ITTOは、例えば間作やアグロフォレストリーを通じて、地域コミュニティにインセンティブを与え、収入を支援する仕組みを作るために努力しています。」とサックル事務局長は加えました。ITTOはまた、資金の循環性を奨励する必要性を述べ、これによって地元コミュニティに継続的な収入をもたらし、コミュニティの関与を高めることができると述べました。
パネルディスカッションでは、ITTOが女性の参加を促進することで、プロジェクトに対する地域社会の支援をどのように構築しているかという点も紹介しました。例えば、女性は自分の役割の重要性や、プロジェクトに参加することで子供の教育費や食費などのニーズを満たすことができたり、コミュニティや生計にプラスの影響を与えることができたりすることを知ることによって、意欲を高めることができます。
ディスカッションの後半では、パネリストが炭素クレジットを生成するための重要な懸案事項を提起し、議論を行いました。
大きなポイントのひとつは、プロジェクト開始時の森林炭素のベースラインの推定値が膨れ上がらないようにすることです。その他、人権や土地所有権の問題が考慮されているかなど、環境や社会的リスクの評価、プロジェクトに関わる組織の実績や信頼性の評価なども重要な要素と言えます。
パネリストは、ITTOのような機関は、プロジェクトのガバナンスとプロジェクト・パートナーの信頼性を高める上で貴重な役割を果たすことができると指摘しました。
ITTOの森林炭素プロジェクト
熱帯地域の天然林や人工林における炭素の吸収と貯蔵を強化することは、持続可能な森林経営と合法的かつ持続可能な方法で生産された林産物の貿易を支援するITTOの活動の主要な目的の一つです。
ITTOのプロジェクトの中には、地域社会や木材産業が自主的な炭素市場にアクセスしやすくするための措置も含まれており、熱帯林の保全と持続可能な利用にさらなるインセンティブを与えることができます。

さらにITTOは、加盟国が複雑な森林炭素プロジェクトに対応できるよう、知識や経験をまとめたリソースを作り、能力開発イニシアティブを開発してきました。例えば、「ITTOプロジェクトにおける炭素利益の数量化に関する技術ガイド」(テクニカルシリーズ43)や森林製品の定量評価と熱帯木材が関わる気候変動緩和プロジェクトは、林業プロジェクトを最適化し、炭素利益を最大化する上で、貴重な洞察を提供してきました。
ITTOは今後も同様の価値あるネットワーキングを継続するつもりです。ご関心のある方々はITTOまでご連絡ください。
関連URL:
- ITTOプロジェクトにおける炭素利益の数量化に関する技術ガイド(Technical Guide on the Quantification of Carbon Benefits in ITTO Projects (Technical Series 43))
- 森林製品の定量評価と熱帯木材が関わる気候変動緩和プロジェクト(Wood Product Accounting and Climate Change Mitigation Projects Involving Tropical Timber)
- ITTOプロジェクトのREDD+効果の定量化(Quantifying the REDD+ effect of ITTO projects)