国連大学、ITTO事務局長との対談「熱帯林:気候変動への回復力、緩和、適応のための自然に基づく解決策」を開催

2025年4月17日, 東京

2025年4月17日、東京で開催された国連大学対談シリーズにて、チリツィ・マルワラ国連大学学長とシャーム・サックルITTO事務局長。写真: UNU

国連大学(United Nations University: UNU)は、現在実施中のイベント「対談シリーズ」の一環として、国際熱帯木材機関(ITTO)シャーム・サックル事務局長を東京の国連大学本部に迎えました。「熱帯林:気候変動への回復力、緩和、適応のための自然に基づく解決策」と題された同イベントは、チリツィ・マルワラ国連大学学長の進行のもと、研究者、学生、外交官、実務家が一堂に会し、気候変動問題などにおける熱帯林の重要性についてダイナミックな対話を行いました。

マレーシアで生まれ育ったサックル事務局長は、個人としても、熱帯林の問題とは無縁ではありません。母国マレーシアの多面的な問題に接し、国際法や貿易問題での数十年にわたる国際経験を積んできたことが、持続可能性と経済発展を両立させることの重要性と課題に対するサックル事務局長の理解を確かなものとしています。「熱帯林は単なる炭素吸収源や生物多様性の貯蔵庫ではありません。」「熱帯林は、マレーシアだけでなく、グローバルサウスの何百万人もの人々の生計とアイデンティティにとって不可欠なものなのです。」とサックル事務局長は述べました。

対談では、森林に関する協調パートナーシップ(Collaborative Partnership on Forests: CPF)、国連森林フォーラム(United Nations Forum on Forests: UNFF)、国連生物多様性条約(UN Convention on Biological Diversity: CBD)など、国際的なパートナーとの協力を通じて、持続可能な森林経営を推進するITTOの活動について掘り下げました。サックル事務局長は、気候変動への適応と緩和、森林景観再生(FLR)、教育の重要性、若者の参加、合法で持続可能な木材サプライチェーンといったテーマへのITTOの取組を紹介しました。

「熱帯林は単なる炭素吸収源や生物多様性の貯蔵庫ではありません。熱帯林は、マレーシアだけでなく、グローバルサウスの何百万人もの人々の生計とアイデンティティにとって不可欠なものなのです。」 ―シャーム・サックルITTO事務局長。写真:UNU

サックル事務局長は、対談中に質問を受け、熱帯林の生物多様性保全のためのITTO/CBD共同イニシアティブの成功を例に、強力な政策枠組み、教育への投資、官民のパートナーシップに支えられれば、生物多様性の保全と持続可能な生産は手を取り合うことができると述べました。このことは、長年にわたって実施されてきたITTOの様々なプロジェクトでも実証されています。

サックル事務局長はまた、森林破壊に取り組む上での消費者の役割を強調し、消費パターンや食料システム、その他の問題について市民が認識するよう促しました。サックル事務局長は「森林の保全だけの話ではありません。」「森林の保全と、森林に依存するコミュニティのウェルビーイングを確保しながら、森林の経済的価値を認識し、支援しなければなりません。」と語りました。

熱帯木材の輸出に依存する発展途上国が直面する課題について尋ねられると、サックル事務局長は土地利用、開発、ガバナンス、経済的優先事項の間には複雑なバランスがあるとの認識を示しました。しかし、マレーシア、インドネシア、ベトナム、インドなど数カ国が、林産物の付加価値を高め、森林を基盤とする経済を多様化するリーダーとして台頭していることを指摘し、ポジティブな姿勢を崩しませんでした。

ITTOと国連大学は2025年4月17日、東京の国連大学本部で、熱帯林に関する協力関係を強化するための覚書に調印しました。写真: UNU

サックル事務局長は、森林に関するアドボカシー、リソースの調達、共同の取組の促進において、ITTOやUNUのような国際機関の役割強化を求めました。「森林は、気候変動や生物多様性に関する世界的な議論の中で、ようやくその価値を認められるようになりました。」とサックル事務局長は述べました。

議論ではまた、リモートセンシングや人工知能を含むテクノロジーが森林のモニタリングをどのようにサポートできるか、さらに世界の森林の将来の管理者を育むための環境教育の重要性についても検討されました。サックル事務局長は「若者は単なる受益者ではなく、未来の管理者なのです。」と結びました。

イベントの最後にはネットワーキング・レセプションが開催され、気候変動や生物多様性の危機に直面した際、熱帯林がいかに自然を基盤とした強力な解決策となりうるかについて、参加者同士が対話を続ける機会となりました。

この日の早朝には、ITTOと国連大学が、重要な一歩として、熱帯林関連の協力関係を強化するための覚書に調印しています。本パートナーシップは、共同研究プログラムの検討、能力開発の支援、組織間協力の促進、世界的な政策フォーラムにおける協力などを目的としています。

イベントの詳細については、こちらのページをご覧ください。