ITTO貿易・市場デーに地域の木材貿易・産業リーダーがコスタリカに集結
2025年4月16日, サンホセ

コスタリカのサンホセで開催されたITTOの貿易・市場デーの会議室では、実り多い議論が交わされました。写真: Didier Fernandez
2025年4月4日、コスタリカの豊かな緑の中で、国際熱帯木材機関(ITTO)の貿易・市場デーがコスタリカ林業木材産業協会(Cámara Forestal Madera & Industria: CFMI)との共催で開催され、林業、貿易、持続可能性に携わる地域のリーダーたちが参加しました。同イベントは、規制の変化から技術革新、持続可能な森林経営、合法的な貿易、気候変動に配慮した林業のソリューションまで、熱帯木材貿易における変革のトレンドについて議論する重要な場となりました。
イベントは、林業関連機関、民間セクターの代表、認証機関、国際機関、市民社会など、多様なステークホルダーが一堂に会する機会となりました。議論では、自然を基盤とした気候変動対策として、また農村の生計を経済的に支えるものとして、木材の2つの役割が強調されました。
EUDRに焦点:国際貿易のための新基準
議論の中心となったのは、2025年12月に発効するEUによる森林減少規則(European Union Deforestation Regulation: EUDR)であった。国際熱帯林技術協会(Association Technique Internationale des Bois Tropicaux: ATIBT)、GFA認証(GFA Certification)、森林管理協議会(Forest Stewardship Council: FSC)、森林認証プログラム(Programme for the Endorsement of Forest Certification: PEFC)、各国機関の専門家が、EUDR遵守のための技術的、法的、および物流関連の要件について解説しました。認証機関は、企業が森林破壊がないことおよび合法性遵守の達成するため、FSCの規制モジュール(FSC’s Regulatory Module)やPEFCの新しいデューディリジェンス・システム(PEFC’s new Due Diligence System: DDS))などのツールが、どのような支援を行う予定かを概説しました。
認証はデューデリジェンスや林産物に対して、通関手続きを迅速に行うことができるグリーンレーンの付与に代わるものではないが、強力なリスク軽減メカニズムであることに変わりはない、というのが講演者の一致した意見でした。規格の統一、追跡システムの改善、熱帯生産国全体の能力構築への投資の緊急性が終日強調されました。
トレーサビリティ:森林から市場へ
国連食糧農業機関(UN Food and Agriculture Organization: FAO)、グアテマラ国立森林研究所(nstituto Nacional de Bosques: INAB)、パナマ環境省(Panama’s Ministry of Environment: MiAMBIENTE)のプレゼンテーションは、ラテンアメリカ諸国がいかに森林に関するトレーサビリティをリードしているかを紹介しました。グアテマラのSIFGUA やパナマのSTCFといったツールにより、両国はデジタル・プラットフォーム、NFCタグ、QRコード、モジュラー・システムを活用し、透明性があり検証可能なサプライ・チェーンを確実なものにしています。これらのシステムは、EUDRや絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(Convention on International Trade in Endangered Species of wild fauna and flora: CITES、ワシントン条約)などのグローバルな枠組みにより合うものとなっており、長期的な市場アクセスや規制遵守を保証しています。
ブラジルからメキシコへの業界の視点
ブラジルのAIMEX、メキシコのIMEXFOR、コロンビアのFEDEMADERASといった木材や林産物の輸出入業者等による協会・組織の代表は、木材セクターの発展に関する各国の見識を共有しました。ブラジルは森林伐採権による合法的な伐採の拡大を強調し、メキシコは国内生産の強化と森林政策改革による木材貿易赤字の削減に焦点を当てました。コロンビアは、林業を地域開発、炭素市場、農業産業クラスターと結びつけるバイオエコノミック・モデルへの転換を提唱しました。
いずれのプレゼンテーションでも、熱帯木材経済の潜在力を最大限に引き出すためには、協調的な政策、技術革新への投資、合理的なガバナンスが緊急に必要であることが再確認されました。
今後の展望:トレンド、テクノロジー、パートナーシップ
ブラジルのSTCPのイバン・トマセリ博士は、2050年までに、特に熱帯地域におけるプランテーション林業が産業用木材の大部分を供給するようになるという予測について概説しました。この変化には、賢明なプランニング、植林の改善、持続可能な土地利用が必要であることが強調されています。
一方、グローバル・グリーン・サプライ・チェーン・イニシアティブ(Global Green Supply Chains InitiativeG: GSC)のロウ・シンジアン博士は、責任ある貿易を促進するためのパートナーシップの力を強調しました。世界木材指標(Global Timber Index)やブロックチェーン・パイロットなどのGGSCの取組は、次世代の森林に配慮したサプライチェーンを形成する上で、透明性とイノベーションが果たす役割を強調しています。
スティーブ・ジョンソン博士は、ワシントン条約に登録された熱帯樹種の変遷について、技術的かつ最新の概要を発表し、これまでの木材製品の国際取引への影響を紹介するとともに、熱帯木材生産国間の技術的・制度的協力の必要性を訴えました。
モハメド・ヌルディーン・イドリスITTO事務局次長(貿易・産業)は、持続可能で合法な熱帯木材を促進する統一戦線を構築するため、ラテンアメリカ諸国間の協力強化を呼びかけました。「ITTO貿易・市場デーはこれらの脅威について議論し、壊れやすい森林を持続可能なかたちで経営するとともに、合法で持続可能な貿易を促進するための共通の基盤を見つける機会です。」
このイベントでは、協力を促進するパートナーシップ、国際基準に沿った実践、環境保全を評価する強い地域市場が行動の呼びかけとして掲げられました。
「世界的に木材の需要が高まる中、ITTO貿易と市場の日のようなプラットフォームは、熱帯林が持続可能な未来において中心的な役割を担っていることを再確認する機会となります。気候変動へのレジリエンス、経済発展、責任ある貿易が共に進む未来です。」と、シャーム・サックルITTO事務局長は語りました。
また「合法かつ持続可能な木材貿易の促進は、ITTOの戦略的優先事項であり、この地域イベントは、加盟国に対して実質的な支援を直接提供するという私たちの継続的な取組を反映するものです。」と加えました。