メコン準地域内の生物多様性に関する会議をITTO/CBD共同イニシアティブが開催

2016年4月5日

カンボジアのエメラルド・トライアングル複合保護林でみられる希少生物の象徴、ジャワサイ。写真提供: istockphoto/outsiderzone

メコン準地域の生物多様性保全に対して住民参加と土地利用権を確保することがまずは必要となり、自立につながる生物多様性保全に取り組んでいくことが貧困削減に役立つことになるでしょう。熱帯林の生物多様性保全のためのITTO/CBD共同イニシアティブの一環として、今年3月に実施した会議に出席した約100名のステークホルダーや専門家らはこのように述べました。
 
メコン地域の熱帯林における生物多様性保全に関する地域会議はITTO資金提供プロジェクト(タイ、カンボジア、ラオス越境生物多様性保全に向けた協力促進のためのエメラルド・トライアングル複合保護林経営(フェーズIII), PD 577/10 Rev.1 (F))の活動の一環として、絶滅の危機に瀕する野生生物や野生生物種の生息地16地域を保護することを目的として開催されました。カンボジアのシェムリアップで開催された同会議では、違法伐採や野生動物の狩猟など森林の生物多様性にとっての脅威を分析し、地域の生活改善や森林保全活動の強化を行う政策の枠組みを提案するなどして、生物多様性保全に関する国全体、地域、国際的なイニシアティブを共有するための場を提供しました。
 
開会の挨拶でCBD科学顧問イアン・トンプソン博士はブラウリオ D. デ・ソウザ・ディアスCBD事務局長からのメッセージを読み上げました。メッセージでは、メコン準地域が人間の福利のために重要な生態系サービスを提供できること、そして同地域が世界的な生物多様性のホットスポットであり、またジャワサイのような象徴的な野生生物の種のための避難所として存在することから、この地域を活用する必然性を説きました。トンプソン博士はすでにエメラルド・トライアングル地域で実施されたフィールドプロジェクトを通じて、ITTO/CBF共同イニシアティブが生物多様性保全に果たす重要な役割を評価していると述べました。
 
その後の基調講演では、生物多様性保全及びカンボジア、中国、カオス、ミャンマー、ベトナムの国別報告についての発表が行われ、エメラルド・トライアングル複合林とボルネオ島中心地で実施したITTO越境生物多様性保全プロジェクトから得た教訓についても取り上げました。また、農民や女性が確実に森林の生物多様性保全からの実質的な収入を得られる方法や、エメラルド越境生物多様性保全パートナーシップの持続可能性を判断する方法などの重要な質問が挙がりました。
 
会議では主に以下の結論ならびにメッセージが寄せられました。
 
  • 十分な土地利用政策と官報告示林の利用権の保証は生物多様性の保全と持続可能な森林経営(SFM)の目的を達成するために重要です。保全林、保護林、生産林は、森林景観という意味において生物多様性保全を様々な規模で確実にするために確保しておくべきです。
  • 熱帯林セクターの生物多様性施策は、森林関連の愛知目標を達成することを目的とした生物多様性国家戦略、行動計画や目標との関連で推進していくことができると考えられます。熱帯林の生物多様性の保全と持続可能な利用は国家戦略に基づく政治的コミットメント、政策、そして法律によって支えられるべきであり、また短期、中期、長期的目標設定を行うべきです。
  • 保全林、保護林、生産林でSFM強化することは、特に生物多様性が果たせる大切な役割を考えると、景観という規模において生態系機能を維持するためには極めて重要です。
  • 森林保全は地域社会に利益をもたらすことができます。しかしながらこうした努力を継続し、自立につなげるべきです。貧困は森林の統合的生物多様性保全活動によって削減することが可能です。ステークホルダー、特に地域社会の住民参加が活動を長続きさせるために必要です。
  • 保護林の森林法執行とグッドガバナンスを緊急に強化する必要があります。
  • 越境生物多様性保全地域は地域協力を促進し、環境保全が共同責任であるとの認識を生み出します。大規模の連続した森林地域の保全を可能にすることは、熱帯林とその生物多様性の保全にとって重要です。
  • 熱帯諸国における能力開発は、持続可能な開発のための2030アジェンダの開発目標15(「持続可能な森林経営、砂漠化への対処、土地の劣化の阻止・回復、生物多様性の損失の阻止」)におけるSFMと生物多様性保全を十分に達成するために必要です。
 
2016年3月23日~25日に開催された本会議はITTO、カンボジア林業局、タイ王立森林局の共催ならびにCBD事務局、独立行政法人国際協力機構、国連大学サステイナビリティ高等研究所他からの後援を受けて実施しました。
 
プレゼンテーション資料 1/3

プレゼンテーション資料 2/3

プレゼンテーション資料 3/3