「持続可能な開発目標達成のためには生産林と持続可能なサプライチェーンが鍵となる」とディタレITTO事務局長

2018年1月30日

メキシコのコミュニティー森林企業で木材を検査する作業員。生産林は増加する世界人口に対して、木材などの需要な商品を安定的に供給しながら、貧困緩和、気候変動への取り組み、そして生物多様性保全にも貢献している。写真提供:G. Dieterle/ITTO

ゲアハート・ディタレITTO事務局長によると、生産林ならびにそれに関わるサプライチェーンが持続可能な開発目標(SDGs)と愛知生物多様性目標の達成に向けた鍵となります。

ディタレ博士は1月23日~24日にかけて東京で開催された「森林減少ゼロに貢献するグローバル・サプライチェーンの推進に関する国際シンポジウム」において、森林破壊が地球規模で大いに審議すべき対象であるにもかかわらず、森林劣化については過小評価されてきたと述べました。

「国際的な森林制度の観点から考えると森林劣化は大変な怠慢であり、早急に対応しなければなりません」とディタレ博士。

森林劣化は温室効果ガス排出に大きく関係します。そして地域、国、世界の市場で必要不可欠な森林製品を供給する能力が低下してしまうのです、とディタレ博士は述べました。一方で持続可能な経営を行っている森林は、貧困を緩和し、気候変動に対抗し、生物多様性を保護しながら、木材、繊維、木質燃料、そして多くの非木材製品などといった必要不可欠な物資を安定的に供給することで、世界人口の増加に対応できます。

熱帯諸国で生産されるパーム油、大豆、牛肉、木材などの商品の多くはこれまで森林減少や森林劣化、違法性、汚職、先住民族や地域社会の権利侵害などと関連づけられてきたとディタレ博士は指摘しました。

「しかしながら現実には急速に成長する世界人口は、今日、産業規模で国や国境を越えて移動するこのような商品に依存しています。これまで以上に増える需要を満たさないといけないのです」。

この高まる需要によって次の二つのシナリオのうちの一つにつながると予測されます。ひとつは森林減少と森林劣化。もうひとつは、よりポジティブな展開として生産林が増加してグリーン経済の促進と気候変動の緩和に役立つということです。

ディタレ博士は次のように述べました。「私たちは森林製品を食料と同様に考えるべきなのです。つまり、生産し
て、それを利用する以外には道はないのです」。

さらに、森林劣化は森林減少よりも対処するのがより困難です。なぜなら森林劣化は広大な地域であちこちに分散して起こるからで、信頼の置ける評価を行うことが難しいからなのです。このようにディタレ博士は指摘しました。そして「こうした中で森林破壊と森林劣化の両方に対処する方法は需要側にあります。つまりこの需要サイドにはバリューサプライチェーンが持続可能な木材の生産、マーケティング、およびこうした木材を利用するための優良事例にインセンティブを与える役割が与えられている訳で、国や企業は認証済かつ合法的で持続可能な商品の調達と消費を強化していくべきです」と続けました。

森林減少ゼロサプライチェーンイニシアティブを拡大するためには、能力育成と革新的なインセンティブメカニズムが早急に求められているとディタレ博士は述べました。 そして、ITTOは持続可能な森林経営を推進する上で共通したビジョンを持つ生産国と消費国をお互いまとめ、これらのことを推進する上でうまく機能していると指摘しました。

この「森林減少ゼロに貢献するグローバル・サプライチェーンの推進に関する国際シンポジウム」はITTO、日本の農林水産省、国連農業食料機関(FAO)により開催されました。このイベントでは愛知県生物多様性目標、SDGs、森林に関するニューヨーク宣言を踏まえて森林減少ゼロイニシアティブを推進していくことを目指し、地球規模の森林減少を遅らせ、停止させ、そして増加に転じさせる方法を模索しました。 シンポジウムの成果は2018年2月20日から22日にイタリアのローマで開催の国際会議「森林破壊の阻止と森林面積拡大のためのセクター間協力 - 願望から行動へ」、同年5月7日から11日の米国ニューヨークでの会議「国連森林フォーラム第13回会合」、そして同じくニューヨークで7月9日から28日に予定される「国連ハイレベル政治フォーラム」においてそれぞれ報告予定です。
 
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