パネリスト:合法かつ持続可能な熱帯林のサプライチェーンと景観再生がアフリカでのSDGs達成を後押しする

2019年9月2日, 横浜

TICAD7でITTOが主催したサイドイベントの演壇。写真撮影:R. Carrillo

8月に横浜で開催された第7回アフリカ開発会議(Tokyo International Conference on African Development:TICAD 7)でITTOが主催したサイドイベントのパネリストによると、熱帯林と合法かつ持続可能なサプライチェーンとを結び付け劣化した景観を再生することで、適正な森林利用がアフリカやアフリカ以外の地域での持続可能な開発目標(SDGs)の達成にもたらす寄与を増幅させ得るとのことです。
 
アフリカの多様な森林はさまざまな物や環境サービスを創造し、暮らしや経済発展にとって不可欠な役割を果たしています。持続可能な森林経営(sustainable forest management:SFM)は、気候変動を緩和し、陸域の生物多様性の拠点となり、食料やバイオマスエネルギーを生産し、水質を保ち、農村地域の経済発展を支えるといった営みを通じて、熱帯林がSDGsにもたらす寄与を増幅させる潜在性を有しています。

本サイドイベントは日本国外務省、横浜市および神奈川県の後援によりITTO、林野庁および国際協力機構(JICA)の共催で2019年8月28日に行われました。
 
開会挨拶でITTO事務局長のゲァハート・ディタレ博士は次のように述べました。今世紀末までにアフリカの人口は現在の12億人から44億人に増えると見込まれており、必要な物やサービスを供給するために今よりも大きく森林に頼ることになります。従って、我々は手遅れにならないうちに生産力のある森林の役割と利用に重点的に取組まなければなりません。これにとって大事なのは、林産物の合法で持続可能なサプライチェーン、すなわち「グリーン」なサプライチェーンを築き、生産者が自身の製品への適正な対価を受け取り、生産者が生産力のある森林を育み劣化した森林の再生を促せるようにすることです。ディタレ博士はITTOによるサプライチェーンと市場の統合に重点的に取組む熱帯森林製品および林産物の合法かつ持続可能なサプライチェーンのイニシアティブを紹介しました。
 
コンゴ共和国の森林経済・環境相および中央アフリカにおけるコミュニティ主体型林業に関するブラザビルロードマップ(Brazzaville Roadmap on Community-based Forestry in Central Africa)大使であるロザリー・マトンド氏は、持続可能な開発のための2030アジェンダに照らし、持続可能な森林資源管理に向けたコミュニティ主体で参加型の有効な体制の適用を支持しました。 [マトンド氏の開会挨拶の詳しい内容はこちらで閲覧できます]
 
日本国林野庁長官である本郷浩二氏は、日本と同様、アフリカの多くの国々が洪水、干ばつ、サイクロンといった気候変動によって以前にも増して激しい自然災害の影響を受けている点に触れました。SFMがSDGsの目標13(「気候変動に具体的な対策を」)および全17目標中13目標に対して多大に寄与し得るとし、違法伐採を根絶しSFMを推進するには即時行動が必須であると述べました。さらに、合法的に収穫された木材および木材製品の促進を目的とする日本のクリーンウッド法にも言及しました。

日本国外務省地球規模課題審議官大使である鈴木秀生氏は次のように述べました。ITTOは設立以来、気候変動や生物多様性保全といった世界的な課題への取組に多大に貢献してきました。アフリカにおけるITTOの役割は特に有意義で、違法伐採対策、森林法の施行およびガバナンスの推進、木材を追跡するための情報技術の適用を行なってきました。鈴木大使はまた、国際的に取引される木材の合法性を確保するなどSDGsの追及において民間セクターの関心が高まっている点に言及し、ITTOが日本の民間セクターとより密接に協力し、持続可能な木材のサプライチェーン構築を支援することへの期待を表明しました。

本サイドイベントでは、アフリカおよび日本の専門家による現場レベルの行動に関する次のプレゼンテーションが行われました:
  • セシル・ンジェベト・コミュニティ森林経営のためのアフリカ女性ネットワーク(African Women’s Network for Community Management of Forests:REFACOF)代表:「西・中央アフリカにおける女性主導による森林 景観回復の促進を通じた地域コミュニティの貧困対策」
  • クロード・カチャカ・スディ・中央アフリカ森林環境トレーニング機構ネットワーク(Network of Central African Forestry and Environmental Training Institutions:RIFFEAC)地域コーディネーター:「コンゴ川流域諸国における持続可能な森林経営グッドプラクティスのトレーニングにおける課題(合法で持続可能なサプライチェーンに関するもの)」
  • 中田博・JICA国際協力専門員:「多様なアフリカの森林経営‐熱帯降雨林から半乾燥林まで」
  • 仲井一志・ヤマハ株式会社楽器・音響生産本部調達技術部材料調達グループ主事「タンザニアの地域住民と連携したアフリカン・ブラックウッドの持続可能な調達の実現」
谷合正明参議院議員が閉会挨拶を行い、次のように述べました。毎年およそ330万ヘクタールの森林が世界で失われており、気候と人間の福利に悪影響を及ぼしています。SDGs達成のために森林が持つ可能性を最大限に引き出すには、資源を持続的に管理し、違法伐採に立ち向かい、市民社会との協力を強化し、人材の能力強化を行うなどの行動を起こす必要が今あります。ITTOとJICAはこの取組を支援するのにふさわしい強力なパートナーです。

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