2025年世界環境デー: 私たちの日々のニーズに対し、自然に基づく解決策を提供する熱帯林
2025年6月5日, 横浜

熱帯林は私たちの日常のニーズに自然に基づく解決策を提供します。写真: ITTO
世界が直面する様々な喫緊の課題の中、国際熱帯木材機関(ITTO)は、2025年6月5日の世界環境デー(World Environment Day 2025)に、最も強力な解決策の一つが私たちの手に届くところにあると改めて発信します―—それは、私たちの森林です。
熱帯林は、気候にポジティブな影響を与え、環境に優しい代替案を提供することができる未開拓の可能性を持っています——生分解性で持続可能な素材は、私たちが日常的に使用しているほとんどの従来の非再生可能製品や環境有害物質を置き換えることができます。
特に、持続可能な経営が行われている熱帯林から得られる木材と非木材林産物は、先駆的な役割を果たしています。
森林から未来へ: 循環型バイオエコノミーにおける木材
循環型バイオエコノミーの核心は、資源の再生と廃棄物の削減です。持続可能なかたちで経営された森林は、まさにその役割を果たします。木材は再生やリサイクルが可能で、生涯にわたり二酸化炭素を貯留します。木材は耐久性があり多用途で、合成繊維、金属、コンクリート、プラスチックの有効で効率的な代替品となることができます。例えば、建設に木材を使用することで、伝統的な材料と比較して建物の二酸化炭素排出量を最大60%削減できます(英語)。
循環型バイオエコノミーが勢いを増す中、再生可能で環境に優しい素材としての木材に対するグローバルな需要はますます重要になっています。ITTOは、熱帯木材を含む森林資源の持続可能な生産、貿易、消費を促進する取組を支援しています。ITTOの「合法で持続可能なサプライチェーン(Legal and Sustainable Supply Chains: LSSC)」プログラムを通じて、加盟国は国内の木材利用の促進、木材サプライチェーンとシステムの強化、地域市場の活性化、持続可能な生計と経済の促進を支援しています。
LSSCプログラムに加え、ITTOは森林に関する協調パートナーシップ(Collaborative Partnership on Forests: CPF)の国際キャンペーンに積極的に貢献しています。例えば、「Grow the Solution(解決策を育てよう)」は気候危機に対する木材ベースの解決策を促進し、より大規模な取組である「Sustainable Wood for a Sustainable World: SW4SW、持続可能な世界のための持続可能な木材)」は、自然に基づく解決策と持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)を推進する持続可能な木材バリューチェーンを支援するマルチステークホルダーイニシアチブです。特にSDG 12(持続可能な消費と生産パターンを確保する)を含む多くの目標を支援しています。

木材を超えて: 非木材林産物(NTFPs)の主流化の推進
熱帯林は非木材林産物(NTFPs)の重要な供給源です。食料や生計手段を提供するだけでなく、NTFPsは多くの産業の基盤となっています。現代医薬品の約25%が熱帯雨林の植物から由来する(英語)ように医薬品開発を促進しているほか、健康と栄養ニーズの解決、衛生用品の提供、さらには化粧品や美容製品の製造にも貢献しています。
熱帯林産物の利用は歴史的な伝統であり、現在では画期的な研究とイノベーションにより、私たちの現代の生活の中心となっています。
化粧品業界では、一例として、消費者の好みに合わせた天然素材の使用に重点を置いています。合成素材の代替として植物由来の素材への関心が高まり、フェイスクリーム、石鹸、シャワージェル、オイルなど、さまざまな美容製品に植物エキスが使用されるようになっており、市場での人気を博しています。

ITTO はコロンビアのバイオエコノミー・ウィーク 2025(Colombia’s Bioeconomy Week 2025)に参加し、ITTOの数多くの取組の一例として、上記について紹介しました。ラモン・カリーオITTOプロジェクトマネージャーは、持続可能な森林経営(SFM)は循環型バイオエコノミーの構築に欠かせない要素であると述べました。カリーオ プロジェクトマネージャーは、SFMは環境の持続可能性の基盤であるだけでなく、地域開発の原動力でもあると強調しました。同氏は、コロンビアのバホ・カリマ地域における ITTO支援による取組を紹介し、先住民コミュニティが森林資源の持続可能な利用の推進に関与していることを強調しました。このプロジェクトは、その多くが女性であるコミュニティのメンバーをエンパワーし、彼らが協同組合を結成して、森林の在来植物から作られた石鹸やエッセンシャルオイルなどの付加価値製品を生産、販売することを可能にしたものです。この取組は、森林に基づく生計が生物多様性の保全と経済のレジリエンスの両方に貢献できることを示しています。

森林製品の力を解き放ち、より緑豊かで公平な未来を築く
持続可能な木材と非木材製品は、特に、合法で持続可能なサプライチェーンを通じて調達される場合、環境的に健全であり、社会的・経済的にも有益です。森林由来の製品への消費シフトは、再生可能な材料の促進と二酸化炭素排出量の削減だけでなく、バイオエコノミーの活性化、汚染の削減、生物多様性の支援、熱帯地域のグリーン経済の強化、そして森林コミュニティの自立支援という新たな機会をもたらします。合法で持続可能な木材と非木材林産物(NTFP)のサプライチェーンを促進する私たちの取組は、森林製品の活用が持続可能性とレジリエンスに向けた構造的な変化のツールとなることを示しています。
「森林は、最も環境にやさしい素材の一つである木材とNTFPの提供を通じて、カーボンニュートラルな循環型バイオエコノミーへの移行において中心的な役割を果たします。」と、シャーム・サックルITTO事務局長は述べてました。「森林はきれいな空気と水も提供します。環境保護、特に熱帯林の保護は、すべての人々が共に責任を負うべきものです。私たちは、現在と未来の世代のために、これを実現するための力を強化するよう、国際社会に呼びかけます。」
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