中国とベトナムの木材合法性確認システムとグッドプラクティスに関する新たな分析結果を発表

2023年4月5日

中国で製造された国内外向けのパーティクルボード。写真:J. Claudon/ITTO

2023年4月5日、横浜:中国とベトナムでは、法的枠組みの強化により、木材産業の持続可能なものにすることが促され、また輸入業者が両国から出荷される木材製品の合法性と持続可能性をより効率的に確認する方法の構築が奨励されていると、先週ITTOの共催で実施されたウェビナーで報告されました。

これらは、最近完了したITTOプロジェクトの調査結果の一つであり、2023年3月31日のウェビナーで発表されました。プロジェクトの実施を支援した公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)も共催した本ウェビナーには、中国、ベトナム、日本から約190人が参加しました。このイベントは、2017年に施行された日本のクリーンウッド法の実施を支援し、持続可能な森林の実践やビジネスを確保するために木材の合法性に関する最新情報を広めることを目的としています。

ITTOの二カ年事業計画の一環として実施されたプロジェクト[PP-A/56-342BP]では、中国とベトナムの木材合法性確認のためのスキームを分析し、それぞれの木材セクターの事業者のベストプラクティスを明らかにしました。また、このプロジェクトの一連の報告書では、国際的なステークホルダーが、合法かつ持続可能な木材貿易をさらに促進するために講じることができる措置についても明らかにされています。

ウェビナーの冒頭、農林水産省 林野庁 木材貿易対策室の赤羽元室長は、木材合法性の問題に対する認識が、木材生産国を含む国内外で高まっていることを指摘しました。

赤羽室長は、ウェビナーで提供される情報が、ITTO加盟国の事業者にとって、製品の合法性を確認し、より信頼できるかたちで合法性を証明するために役立つよう期待すると述べました。

テトラ・ヤヌアリアディITTOプロジェクトマネージャーは、合法的で持続可能なサプライチェーンの構築、国内市場における持続可能な木材利用の促進、森林ガバナンスの改善など、このプロジェクトがどのようにITTOの目標に貢献するかについて説明しました。

ウェビナーで発表された国別報告書の要旨は以下の通りです。


中国

鮫島弘光IGESリサーチマネージャーは、中国の改正森林法の影響や中国の事業者による合法性の確認の実施状況などに関連する調査結果を説明しました。2019年に改正された森林法第65条は、違法伐採に由来することが分かっている木材の取引を禁止するものです。

本事業の一環として調査した中国の木材関連企業では、それらのほぼすべての企業がデューデリジェンスシステムを導入して顧客に関連情報を提供していると回答しました。またすべての企業が木材サプライヤーに合法性に関する書類の提出を要求していると回答しました。

この結果は、中国の木材関連企業が、主要な市場やサプライヤーに関わらず、合法性を確認するための国内要件を認識していることを示唆しており、中国から木材製品を輸入する企業がサプライヤーに合法性の確認を要求することを容易にし、ひいてはデューデリジェンスを促進する可能性があります。

しかし、第65条のもとで要求されデューデリジェンスのレベルは明示されていません。以前は、多くの中国企業が欧米の輸出顧客の要求に従って合法性を検証していましたが、今回の改正の結果、合法性を判断する基準において、中国によって決定される部分が多くなりました。

さらに、輸出先に木材の合法性を確認するためのシステムがなかったり、中国の小規模農業事業者が育てた木は伐採許可の対象外であったりするため、多くの企業が必要書類の入手に苦労していることがわかりました。中国企業は、サプライヤーの変更やサプライチェーンの上流への投資など、こうした問題を解決するための取り組みを行っています。

本調査を通して、中国のサプライヤーの状況を把握し、合法性を確保するための取り組みを支援することで、中国から木材や木材製品を輸入する企業は、合法性が認められた木材を持続的に調達することができるようになると明らかになりました。


ベトナム

ベトナムに関するプロジェクトの調査結果は、藤崎泰治IGESリサーチマネージャーによって発表されました。

ベトナムは、すべてのサプライチェーンから違法木材を排除するための法的枠組みを確立するための実質的な取り組みを行ってきました。例えば、2020年の政令(政令102号)で、ベトナムの輸入業者に対するリスクの識別基準とデューデリジェンスの要件を導入したことなどです。

本プロジェクトは、日本への輸出をケーススタディとして、税関データ、主要回答者へのインタビュー、ベトナムの木材輸入業者へのアンケートを用いて、輸出製品の高リスク樹種を特定し、輸入業者への推奨事項を作成しました。

主な調査結果としては、高リスクの木材を使用した日本への輸出製品は、近年、取引額も小さく、減少傾向にあり、2020年の総額に対して0.2%程度でした。また、高リスク樹種の数も少なくなっています。

また本調査では、政令102号が制定されたのはわずか2年前であるため、ベトナムの輸入業者によるデューデリジェンスやサプライチェーン間での情報交換が未だ完全には機能していないことも明らかになりました。

ベトナムから木材製品を調達しているすべての国に適用されると考えられる輸入業者への勧告は、主に以下の通りです:

  • 木材が輸入品であるかどうかを確認し(ベトナムの国産材は低リスクとみなされる)、政令 102 号に記載されている高リスク種を熟知する。
  • 高リスク樹種をベトナムに輸入する場合、政令 102 号に基づき必要とされる原産地証明書(Form 3)のコピ ーをサプライヤーに要求する。この書類は、その後輸出される木材製品のデューデリジェンスの証明とみなすことができる。


ベトナムにおける木材製品のサプライチェーンが複雑で重層的であるため、デューデリジェンスは複雑になっています。ITTOプロジェクトは、ベトナムにおいて重要な小規模なアカシア植林セクターについて詳細に調査しました。

主な調査結果として、ベトナムの林業協同組合は、小規模農業従事者による木材生産の合法性を確保・検証し、持続可能な森林経営に貢献できると明らかになったことが挙げられます。また、加工事業者は生産者との連携強化、サプライチェーン関連文書のチェック、森林経営への関与などを通じて、合法性検証を改善するための対策を講じることができることもわかりました。

本調査は、輸入業者がベトナムにおけるサプライチェーンを理解しようとする際には、上記の点を考慮し、サプライチェーンの確立、維持、改善についてサプライヤーと協力するよう提案しました。

木材生産者や森林組合は、持続可能な森林経営には安定した木材需要と消費が必要であり、そのためには輸出企業が輸入国のビジネスパートナーと信頼関係を築くことが不可欠であると強調しています。

国別報告書のサマリーは以下よりダウンロードできます(日本語)。報告書の完全版は2023年半ば以降からITTOのホームページで公開される予定です。


免責事項:サマリーは、プロジェクトの一環として実行機関から提出されたものであり、編集は加えられておりません。その内容および表明された見解は著者のものであり、必ずしもITTOまたはITTO加盟国の見解を反映するものではありません。資料で使用されている呼称は、国、地域、都市、地域、その当局の法的地位、または国境と境界の画定に関するITTOのいかなる意見の表明を意味するものではありません。

関連するSDGs

本プロジェクトは、木材産業や貿易業者の間で木材の合法性確認システムやデューデリジェンスについての理解を深め、その結果、木材製品の責任ある生産と消費を支援します。

持続可能な方法で生産された木材は、多くの炭素集約型材料の再生可能な代替品です。持続的に経営された熱帯林とそれに関連するサプライチェーンは、気候変動との闘いを支援します。