西・中央アフリカ向けワークショップで林産物統計能力が向上

横浜、20211119日:ITTOと国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations:FAO)が共同開催したオンラインワークショップでは、西・中央アフリカにおけるデータの収集・報告方法に関する認識が改められ、統計ソフトの利用方法、調査設計方法、データ通信方法といった領域での技術訓練のニーズ特定にも至りました。

本ワークショップは2021年10月25日から29日にかけて開催され、16か国から41名が参加しました。信頼できる林産物統計データの提供能力の向上を目指すITTOとFAOによる取組の一環として行われたものです。森林に関連する現実的で一貫性のあるデータの作成は、ITTO・FAO両機関が最重要に掲げる使命の一つです。

林産物統計は、持続可能な林業の実践、資源枯渇の回避、森林産業の動向の把握、投資決定、データに裏付けられる政策設計のために重要です。共同森林部門質問票(Joint Forest Sector Questionnaire:JFSQ)を通じて各国が提出したデータはITTO及びFAO(英語)のデータベース上に置かれる基礎情報となり、林産物の生産と貿易における動きを分析するために世界各地で使用されています。データはITTOの「世界の木材状況に関する隔年評価報告書(Biennial Review and Assessment of the World Timber Situation 及びFAOの「林産物年間( Yearbook of Forest Products(英語)という2種類の主要統計刊行物にも基づいています。

本ワークショップは、2回の全体セッション(フランス語と英語の同時通訳付き)及び3組のワーキンググループ(中部アフリカグループ(フランス語)、西アフリカグループ(フランス語)、西アフリカグループ(英語))を中心に行われました。具体的には、参加国の統計能力の強化、ITTO、FAO及び各国のフォーカルポイント間のつながりの強化、地域機関との協力の拡大、JFSQに関する課題への回答や説明を目的としました。

本ワークショップに参加した16か国(ベナン、ブルキナファソ、カメルーン、中央アフリカ共和国、コンゴ共和国、コートジボワール、コンゴ民主共和国、ガボン、ガンビア、ガーナ、マリ、モーリタニア、モザンビーク、ニジェール、セネガル及びシエラレオネ)では、アフリカ大陸全体のおよそ44パーセントにあたる熱帯産業用丸木と60パーセントにあたる製材品が生産され、88パーセントに上る一次熱帯産品が輸出されています。

2度開催された全体セッションでITTOとFAOは、JFSQの重要性、現在みられるデータに関する制約、FAOが新たに行った木質燃料生産のモデル分析、林産物統計における合法性の課題、FAOの「世界森林資源評価(Global Forest Resources Assessment)」(英語)、透明性のある森林データの重要性(CBIT-Forest(英語))及び非木材林産物の経済的な意義について発表しました。

また、全体セッションでは、中央アフリカ森林協議会(Commission des Forêts d’Afrique Centrale:COMIFAC)、中央アフリカ森林観測所(Central Africa Forest Observatory:OFCA)、国際林業研究センター(Center for International Forestry Research:CIFOR)、国際熱帯木材技術協会(International Tropical Timber Technical Association:ATIBT)、世界資源研究所(World Resources Institute:WRI)が登壇し、それぞれのデータ収集経験を共有し、森林産業での意思決定を支える一貫性のあるデータの重要性や森林セクターの一層の透明性の必要性を議論しました。このようなテーマは被招待国を対象に行われた企画調査の結果選定されたものです。この企画調査では、ITTOとFAOから被招待者に対し、データの利用度合いやどのテーマに関心があるかが尋ねられていました。

ワーキンググループでは、8か国が森林資源や利用可能なデータに関して発表しました。この発表を機に、各国はアフリカの森林セクターについて把握し、ITTOとFAOはアフリカが抱える課題や改善点又は明確にしなければならない点を一層はっきりと認識することができました。

すでにオンライン又はデジタルデータ収集システムを整備している国もありますが、地方レベルから中央レベルへのデータの移動、自動データ入力・処理の不備、セクター間の調整がなされていないこと等、未だ課題は多く残っています。定義についても改善の余地があります。国内の省庁間、アフリカ地域全体、国家間でばらつきがあり、国際的分類システムを基にJFSQが定める定義とも一致していません。さらに、統計ソフトの使用方法、調査設計方法、データ通信方法といった分野での追加的な技術研修も必要です。

本ワークショップで築かれたつながりや行われた議論によって、アフリカ各国内及びアフリカ各国間でのコミュニケーションが活発になり、林産物統計の継続的に改善に資するようなパートナーシップ構築の一助となることが期待されます。

ワークショップの発表資料(英語又はフランス語)をダウンロードする

以下のワークショップのアジェンダ(英語及びフランス語)をダウンロードする

関連するSDGs

持続可能な林業、資源枯渇の回避、森林産業の動向の把握、投資決定、データに裏付けられる政策設計のために林産物統計は重要です。

持続可能な熱帯林産業は、持続可能な方法で森林を経営することで収益を生み、山村住民に雇用と収入をもたらすことから、森林の劣化、森林減少及び貧困という課題に十分答え得る対策です。熱帯林産業の発展には健全な統計データが不可欠です。

頑健な国家統計体制が整備されることで熱帯木材貿易における透明性が強化され得ます。

データ収集・報告における地域レベルでの協力によってアフリカ全域での持続可能かつ合法的な木材貿易の改善につながる可能性があります。