ITTOフェローの足跡を辿る -「ソリューション・ジャーナリズム」を通じて

2020年5月7日

ITTOフェローのタリア・ロスタナウ = ガルシア(起立している右端の人物)がペルーのアマゾン地域にてエコツーリズムについて取材しています。写真撮影:D. Zimmermann

ペルー出身のタリア・ロスタナウ = ガルシアはITTOフェローシップを通じて得たスキルを活かし「ソリューション・ジャーナリズム(解決模索型報道)」を追い求めてアマゾン地域のタンボパタ国立保護区(Tambopata National Reserve)を訪れた時のことを書き記しました

タリアは母国ペルーの熱帯林保全の力になろうと2014年に森林利用学の学位を取得しました。2015年には自然と生態系についての“2enRuta”というビデオブログを開始し、ペルーの生態系について発信しながら心からの情熱を見出しました。ITTOフェローシップを活用して米国・カリフォルニア大学バークレー校でジャーナリズムのサーティフィケートを取得し、アマゾン地域の持続可能な開発イニシアティブについて伝えるための知識、ツール、自信を身につけました。現在はフリーランスのジャーナリストとしてオンライン雑誌 「Rumbos del Peru」や「Touring」に寄稿し 、近日中に「Mongabay Latam」にも記事が発表される予定です。

タリアは、環境問題に関する対策がどのような効果をあげているか、またはあげていないか、なぜその効果があったのか、あるいはなかったのかを説明するため、根拠に基づく報道を行うソリューション・ジャーナリズム(解決模索型報道)を実践しています。活動の一環として、タンボパタ国立保護区(Tambopata National Reserve)で実施されている保全イニシアティブについての取材に着手しました。ソリューション・ジャーナリズムを通じて、アマゾンの森林を守るために科学とエコツーリズムがどのように力を合わせることができるかを明らかにしたいと考えています。タリアは近日発表の記事の中で次のように述べています:

「早朝にリマを出発し、マドレ・デ・ディオス(Madre de Dios)州の州都でありアマゾン熱帯雨林に位置するプエルト・マルドナド(Puerto Maldonado)に向かいました。機中でウトウトとしながら目的地のタンボパタ国立保護区について思いを馳せました。ワニ、サル、カエル、ジャガーにも会えるかもしれません。目を覚まし窓の外を見ます。そこにはアマゾンの密林が広がり、茶褐色の曲がりくねった川面と川の流れの変化によってできたコチャ(池)が見えます。森は次第にまばらになり、土は淀んだ水が溜まって赤みを帯び、何かがおかしいことが見てとれます。この地では金の違法採掘が横行しています。2017年から2018年にかけて、違法鉱業活動によって18,000ヘクタール超の林地が失われました。これはサッカー場25,000面に匹敵します。」

「この壊滅的状況は、世界でも非常に高い生物多様性を誇るタンボパタ国立保護区の緩衝地帯で起こっています。問題は深刻でしたが、ペルー国立自然保護区管理事務局(National Natural Protected Areas Service)や国の関係機関、NGO、民間企業による尽力のおかげで保護区内での鉱業の拡大を抑制することができました。さらに2019年2月、ペルー政府は当該地域の金の違法採掘の根絶を目的とした「水銀作戦(Operación Mercurio)」という一大計画に乗り出しました。結果は非常に良好で、採掘による森林減少は、2018年2月から6月までの期間の900ヘクタールから2019年同期の66.7ヘクタールへと92パーセント抑えられました。」

「現在、タンボパタ国立保護区はエコツーリズム愛好家の間で人気を博しています。ペルー国内や世界中から45,000人以上が毎年この場所を訪れ自然に触れています。保護区内および緩衝地帯で実施されているこの持続可能な活動の恩恵を受けている地域の企業や住民もいます。27万4,690ヘクタールに広がる地域には、600種以上の鳥類、1,200種の蝶類、100種の両生類、180の魚類、169種の哺乳類、103種の爬虫類が生息しています。この地区やペルーのアマゾン地域の自然保護区全体で観光業が持続的に発展し、地域住民が環境負荷の少ない経済活動を行えるようになることが期待されています。」

タリアの今後の活動に、大型のコンゴウインコとオウムの自然史、保全、エコツーリズム、管理についての長期の分野横断的研究である「コンゴウインコプロジェクト」についての報道があります。コンゴウインコはタンボパタ国立保護区もその1つである生息地域の生態系保全状況の基準となる旗艦生物と考えられています。

タリアの活動が示すように、ITTOフェローシップ・プログラムは若手林業専門家のキャリアとスキルの形成に役立てられています。ITTOの奨学金を受けた人々は今日までに約1,400名で、本プログラムが熱帯林業分野における世界的な専門性強化に多大に貢献していることを示しています。