ITTOフェローシッププロラム25周年記念

2014年11月18日

ダニエラ・パウレット助教授(ブラジル)が第50回ITTCにおいて、ITTOフェローシップが自分のキャリアに与えた影響を話しているところ。写真提供:C. Aoki/ITTO

11月3日から8日まで横浜で開催された第50回国際熱帯木材理事会(ITTC-50)において,ITTOフェローシッププログラムの25周年を記念し、23人に総額15万780米ドルのフェローシップが授与されました。また、理事会の50周年記念の開会式に3人のかつてのフェローを招待し、3人の成功談を披露しました。
 
招待されたのは、ブラジルのダニエラ・パウレット助教授、ガーナのポール・ボス博士、ミャンマーのサン・ウィン教授の3人で、ITTOのフェローシップが自分たちのキャリアにどれだけ影響を与えたかを強調しました。

パウレット助教授は2008年にコスタリカのCATIEで行われた「天然熱帯林の多様な管理:気候変動の問題に直面した管理」に関する国際コースを受講しました。フェローシップを通じて、政府機関の職員としての業務の充実を図り、さらにブラジルの西パラ連邦大学の助教授となり、ブラジルのアマゾンで持続可能な森林経営や地域コミュニティの生活向上のための仕事に励んでいます。

ボス博士はITTOフェローシップを2度授与されました。一度目は1997年にアメリカの北アリゾナ大学の修士課程に参加し、2度目は2009年にスミソニアン研究所主催の環境リーダーシップコースを受講しました。フェローシップを通じて得られた技術により母国のガーナで混合在来種のプランテーションを設立したり、森林の健全性を監視したり、ボビリ蝶自然保護区及びエコーツーリズムセンターを設立するのに貢献しました。ボス博士はガーナ森林研究所で2005年度の科学者賞及び2007年のガーナ農民の日祝祭にて国家農業研究者最高賞を授与されました。現在ガーナ森林研究所で上席研究科学者として勤務し、また自国の大学生や大学院生にも教えながら自分が培った知識を伝えています。ボス博士は、1997年に授与されたITTOのフェローシップが林業の分野でのキャリアに飛び込むための跳躍台(きっかけ)になりましたと、述べました。

サン・ウィン教授は2003年と2008年にITTOフェローシップを授与され、ミャンマーの多様な山岳民族の焼畑農業の状態について報告書をまとめました。その報告書を基にした論文は、ミャンマーの持続可能な森林経営を推進するという理由で2005年に森林研究会議で一等賞を受賞しました。また、その報告書は山岳地帯の住民の食料安全保障を強化するため2005年の世界食料デーで受賞しました。フェローシップによってミャンマー政府で次々に昇進し、今では環境保全森林省の森林大学の副学長の地位についています。現在、焼畑従事者の生活を向上させるためのアグロフォレストリープロジェクトを行っており、また大学では多くの大学生や大学院生に長年培ってきた知識を伝えています。「ITTOフェローシッププログラムはITTOの加盟国の若い世代の人材育成に大いに貢献しています」と述べました。

25年の実績をもとに、ITTOフェローシッププログラムは熱帯林とそこで生活する人々の将来をよりよくするために人材開発を推進し続けます。

2014年秋季のフェローシップ授与者は次のとおりです。

Angwere, Walter Onekon Angwere 氏(カメルーン): ケニヤ、ナイロビのアフリカンナザレーネ大学における「環境と自然資源管理」の修士課程
 
Atoche Montoya, Werhner 氏(ペルー): アメリカ、コロラド州フォートコリンズのコロラド州立大学における第24回保全地域経営に関する短期コース
 
Awokou, Simon Kodjoli 氏(ベナン):ガーナ、クマシのガーナ森林研究所における「熱帯アフリカのプランテーションでのマホガニーの持続可能な生産に向けて」の国際会議
 
Camacho Moreno, Eleonora 女史(メキシコ): コスタリカ、トゥリアルバのCATIEにおける第27回「熱帯自然林の多様な経営に関する国際集中コース」
 
Camargo, Marisa Camilher女史 (ブラジル): フィンランド、ヘルシンキ大学における「気候変動のためのビジネスソリューション:効果的な森林ガバナンスに向けて」の博士課程フィールドリサーチ
 
Ebune, Rita Mosume 女史(カメルーン): オランダ、ワゲニンゲンUR、開発とイノベーションセンターにおける「自然資源に関する競合する要求」に関する短期研修コース

Ev, Anoop 博士 (India): エクアドル、グアヤキルにおける第3回世界チーク会議2014
 
Eyi Ndong, Hugues Calixte 博士(ガボン): ベルギー、ブルッセルのメイセ植物園において「非木材森林産品の特定のための実践ガイド」の準備
 
Guaman Hernandez, Marco Vinicio 氏(エクアドル): コスタリカ、トゥリアルバのCATIEにおける「生物多様性保全の実践」に関する修士課程
 
Hashmiu, Ishmael 氏(ガーナ): 「ガーナにおける 聖なる森とその土地で生活する森林に依存するコミュニティの適応を向上させるための生態系サービスへの支払いに関する見込み及び制約の統合的な評価」に関する技術文書の準備
 
Kedjeyi, Bidéname 女史(トーゴ): フランス、モンペリエのアグロパリテックのおける「トーゴのファザオ-マルファカサ公園の生態系要素に関する簡略化されたマッピング」に関する修士研究
 
Kouacou, Yao Elvis Franklin 氏(コートジボアール): フランス、カンのザマンテクノロジーにおける「飛行物体を利用した森林経営」の短期研修コース
 
Molina Murillo, Sergio Andres 博士(コスタリカ): アメリカ、スタンフォードのスタンフォード大学における自然資本プロジェクトフェロープログラム.
 
Nchu, Innocent Ngiehnu 氏(カメルーン): オランダ、エンスヘーデのトゥウェンテ大学における「オプティカル、SARリモートセンセンシング及びGISを使ったアグロ生態系システムへの気候変動の影響の評価」に関する短期コース

Nsiah, Samuel Kwadwo 氏(ガーナ):カナダ、オンタリオ、サンダーベイのレイクヘッド大学 における「移行帯における伝統的に保全された森林のコミュニティマッピング及びインベントリ:政策策定及び生物多様性の保全に関するGIS及び住民の知識の利用」に関する修士論文
 
Oppong, James Amponsah 氏(ガーナ): ガーナ、クマジのクワメ・ンクルマ科学技術大学における「2種の重要な樹種に関するフェノロジー及び種子発芽の向上」に関する修士研究
 
Paguada Pérez, Darwin Rolando 氏(ホンジュラス): コスタリカ、トゥリアルバのCATIEにおける「熱帯林と生物多様性の経営及び保全」の修士課程
 
Rebollar Domínguez, Silvia 博士(メキシコ):メキシコ、ユカタン科学研究センターの物質研究所における「2種の熱帯木材種の物理的な試験を開発するための研究」に関する技術文書の
 
Sann, Bo氏 (ミャンマー): 日本、京都大学における「熱帯乾燥林の二次遷移:樹種の機能的な特徴に関連した多様性のパターンと再生過程」に関する博士研究
 
Shamsudeen, R. Sheik Mohammed博士 (インド): インド、カヌールのカヌール大学における「木の生物的劣化:虫と海洋生物」に関する本の執筆
 
Thinn, Thinn 女史(ミャンマー): 日本、京都大学のおける「ミャンマーのエーヤワディデルタにおけるサイクローンの被害にあった地域の土地利用変化とマングローブの回復に関する評価」に関する博士研究
 
Valentina, Vaglica女史 (イタリア): グアテマラ、グアテマラシティの保全地域国家評議会、森林経営部における「ワシントン条約附属書への新しい木材種Dalbergia spp.のリスト」に関する技術文書の準備
 
Verma, Deepti 博士(インド): 「インドの山岳地の経済の向上のための非木材森林産品をベースにした山小屋企業の成長の機会:インドのウッタラーカンド及びヒマーチャル・プラデーシュに関するケーススタディ」に関する技術文書の準備
 
 
[1] ITTOでは熱帯林業とその関連分野における加盟国の人材育成と専門知識の習得のために、フリーザイラ・フェローシップ基金を通してフェローシップを提供しています。フェローシッププログラムでは、持続可能な熱帯林経営の促進と熱帯木材の効率的な利用と加工、国際熱帯木材貿易に関する経済情報の改善を目指しています。