ITTO、COP30で気候変動対策としての持続可能な熱帯林経営を強調

2025年11月21日, ベレン

ITTOは、COP30におけるハイレベル会合および専門的議論に終日積極的に参加し、持続可能な森林経営、責任ある森林に基づくバリューチェーン、森林火災に対するレジリエンス、そして国際的なパートナーシップに関する本機関の主導的役割を示しました。© Ramon Carrillo/ITTO

ITTOは、国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(30th Conference of the Parties to the UNFCCC: COP30)におけるハイレベル会合および議論に終日積極的に参加し、持続可能に経営された熱帯林が、地球規模の気候および開発目標の達成に欠かせないものであることを強調しました。11月18日の参加を通じて、ITTOは、熱帯における持続可能な森林経営(Sustainable Forest Management: SFM)、責任ある森林に基づくバリューチェーン森林火災に対するレジリエンス、そして国際的なパートナーシップに関する主導的立場を示しました。

COP30のハイレベルセグメントにおける声明の中で、ITTOのシャーム・サックル事務局長は、熱帯林を「COP30の中心」に据えたブラジルの取組を称賛し、気候変動対策および生物多様性保全における熱帯林の不可欠な役割を強調しました。© Ramon Carrillo/ITTO

ITTO事務局長、熱帯林へのパラダイムシフトと的確な投資の必要性を訴求

COP30のハイレベルセグメントにおける声明の中で、ITTOのシャーム・サックル事務局長は、ブラジルが熱帯林を「COP30の中心」に位置付けたことを称賛しました。同氏は、熱帯林は気候変動の緩和と適応、さらに生物多様性保全に不可欠であり、1.6億人の生活を支える気候スマートな循環型バイオエコノミーの基盤でもあると強調しました。

サックル事務局長は、持続可能な熱帯林経営が、貧困削減・生計向上から炭素貯蔵や気候変動へのレジリエンス向上に至るまで、幅広い恩恵をもたらすと述べました。そして、持続可能な伐採が森林減少と混同されるべきではなく、新たなストーリーと地球規模の議論における即時の転換が必要と訴えました。

「資金は、熱帯林を持続可能に経営する人々に届けられるべきです。」とサックル氏は述べ、合法かつ持続可能な木材に対する国内・地域・国際市場の強化の必要性を強調しました。また、総合的なバリューチェーンは、気候変動対策と包摂的な開発において変革的成果をもたらす可能性があるものの、そのためにはCOP30での議論が、革新的なパートナーシップと、現場の関係者に届く持続可能な資金の創出につながる必要があると指摘しました。

ITTOのシャーム・サックル事務局長は、持続可能な木材の消費は気候の観点から必須であり、開発の機会でもあると強調しました。© Ramon Carrillo/ITTO

持続可能な木材による責任ある建築ソリューションの推進

ITTOは、「持続可能な世界のための持続可能な木材(Sustainable Wood for Sustainable World: SW4SW)」イニシアティブの共同主導機関として、ビルト・バイ・ネイチャー(Built for Nature)が主催したサイドイベント「森林と人のための建築:強靭で責任ある建築ソリューションの実現」に貢献しました。

政府、市民社会、産業界の登壇者は、世界の温室効果ガス排出量の約40%を占める建設セクターの気候への影響と、持続可能な建材への転換の必要性を指摘しました。

オーストリア連邦農林・気候・環境保護・地域・水管理大臣ノルベルト・トチュニック閣下は、森林に基づくバイオエコノミーの解決策の価値を強調するとともに、2026年に開催予定の森林に基づくバイオエコノミーに関するウィーン・グローバルサミットの開催を発表しました。

Built by Natureの最高経営責任者ポール・キング氏は、建築物に森林を活かすための行動計画の一部である「責任ある木材建設の原則」を紹介し、建設業界の再教育と建築物のライフサイクル全体において持続可能な木材を活用するよう訴えました。

サックル事務局長は、持続可能な木材の消費は気候変動対策として不可欠であると同時に、開発の機会でもあると強調しました。さらに、適切な住居を持たない28億人、熱帯地域で極度の貧困状態にある約16億5千万人の存在を踏まえ、持続可能な資金供給の拡大と、手頃な価格の木材建築へのアクセス向上の重要性を指摘しました。

「木材による建築は単なる潮流ではなく、必要性です。」とサックル事務局長は述べ、ITTOがSW4SWの加速計画を支援していることを強調しました。また、能力構築、木造住宅に対する認識の転換、多様な熱帯木材の活用促進に向けた政策的支援の重要性を指摘しました。

パネリストらはまた、持続可能な木造建築を拡大するためには、政治的意思、民間セクターの関与、技術ガイドラインや政策の改善が必要であると議論しました。サックル事務局長は、コンクリートや鉄鋼を「開発の象徴」とみなす文化的な認識を、気候スマートなバイオベースの持続可能な選択へ進化させる必要性を強調しました。

地域主導と国家の野心的目標による森林火災予防の強化

「熱帯地域における森林火災の防止:地域のリーダーシップ、国家目標、資金調達」と題したセッションにおいて、ITTOのプロジェクト・マネージャーであるラモン・カリーオ氏は、熱帯地域における統合的な火災管理を支援する新たな熱帯火災ツールキットの開発状況を紹介しました。

同ツールキットは、国際的に認知されている「5Rs Fire Framework」に基づき、信頼性の高い集約的なプラットフォームとして設計されており、熱帯地域の国々の森林火災管理リソースへのアクセスにおける重大なギャップを補うことを目的としています。また、FAOの「グローバル・ファイヤー・ハブ(Global Fire Hub)」イニシアティブに貢献し、予防、早期警戒、備え、コミュニティ主体の火災管理を強化することになるでしょう。

参加者は、地域のリーダーシップ、国家的な森林火災戦略、および資金需要の関連性を探るワークショップとパネルディスカッションに参加し、熱帯林およびそれに依存する地域社会にとって森林火災がますます深刻な脅威となっていることを認識しました。

フランス開発庁が主催したパネルにおいて、川口才文ITTO財務・総務担当官は、より強固なガバナンスと民間セクターとの緊密な連携を通じた持続可能な森林経営の深化が、生計向上を実現しつつ森林減少を防止する上で不可欠であると強調しました。 © Ramon Carrillo/ITTO

世界の主要森林流域に関する国際対話におけるITTOの発言

フランス開発庁(AFD)および Expertise France が主催した「地球の肺:世界の3大森林流域の保全と開発に向けたインパクトのある解決策(Des poumons pour la planète : solutions à impact pour la préservation et le développement des 3 principaux bassins forestiers du monde)」と題するパネルにおいて、ITTOの川口才文ITTO財務・総務担当官が、サックル事務局長の代理として発言しました。

議論では、森林・土地利用に関するグラスゴー・リーダーズ宣言以降の進捗が検討されました。コンゴ民主共和国の大臣は森林減少防止への同国のコミットメントを再確認し、フランスは森林保護およびコンゴ盆地における持続可能な開発への支援を改めて表明しました。

ITTOは、より強固なガバナンス民間セクターとの緊密な連携を通じた持続可能な森林経営の深化が、生計向上を実現しつつ森林減少を防止する上で不可欠であると強調しました。また、これまでに1,400件以上のプロジェクトを実施してきたITTOが、熱帯全域における現場レベルでの実践的行動を通じて森林減少ゼロへの長期的に取り組んでいることを示しました。

COP30のサイドラインにおいて、シャーム・サックルITTO事務局長は、ブラジル森林公社局長のガロ・バトマニアン氏と会談し、両機関間の協力強化に向けた幅広い議論を行いました。 © Ramon Carrillo/ITTO

ブラジル森林公社への表敬訪問

COP30のサイドラインにおいて、ITTOはブラジル森林公社のガロ・バトマニアン長官を表敬訪問しました。会談では、COP30で発表されたブラジルの「トロピカル・フォレスト・フォーエバー・ファシリティ(Tropical Forest Forever Facility)」に関する最新情報を含め、持続可能な森林経営および森林再生に関する両機関の協力強化の機会について議論が行われました。