ITTO-BMLEHウェビナー、持続可能なチークプランテーションおよび材積推定の推進における革新的技術の活用を探る

2025年11月4日, 横浜

世界各地のチークプランテーションの持続可能な経営を確保するために、さまざまな現行および新たな技術が活用できます。 © Y. Oskanov/Pond5

2025年10月27日、横浜 — 持続可能なチークプランテーションおよび材積推定のための革新的技術に関するウェビナーに、日本およびインドの専門家が参加し、世界のチークプランテーションの持続可能な経営を実現するため、さまざまな現行および新たな技術を活用できることを示しました。

このウェビナーは、小規模農業従事者およびにコミュニティによるチークプランテーションにおける高品質な木材生産を促進し、生計の改善および社会的・環境的成果の向上を図ることを目的とするITTOプロジェクトの一環として開催され、適応に関する遺伝子解析および人工知能(AI)の活用により、気候変動に強い栽培戦略を策定し、プランテーションの材積を効率的かつ正確に推定する手法が紹介されました。

2025年10月22日に開催された同ウェビナーは、国際熱帯木材機関(ITTO)とドイツ連邦農業・食料・故郷省(BMLEH)が共催する連続セミナーの第5回目にあたります。タイ・カセサート大学のヨンユット・トライスラット氏がモデレーターを務めました。

国際農林水産業研究センター(Japan International Research Center for Agricultural Sciences: JIRCAS)の谷 尚樹 教授は、インドネシア・ジャワ島におけるチークの適応に関する遺伝子と地域の気候条件との関係についての研究成果を紹介しました。一方、インド森林研究教育評議会( Indian Council of Forestry Research and Education: ICFRE)森林遺伝学・樹木育種研究所のアニ・A・エリアス博士は、インドのケララ州で実施したAIを活用したチーク材積推定の事例研究について発表しました。

谷 尚樹 教授は、気候変動に強いチークプランテーションを実現するため、適応に関する遺伝的子解析を活用して栽培戦略を探る方法を説明しました。 © Shaiith/Pond5

気候変動に対するレジリエンスを確保するための意思決定を支援する環境適応的遺伝子の解析

遺伝構造と地域適応との関係を探ることは、チークの遺伝的起源および遺伝的適応能力に関する有益な知見をもたらします。これは、熱帯樹種が気候変動に対して脆弱であることを踏まえると、特に重要です。

谷教授は、チークの遺伝的な適応と地域の気候条件との関係に関する研究成果を発表しました。研究チームは、チークが自然分布するインド、タイ、ラオス、ミャンマーの8地点およびインドネシアの9系統における全ゲノム配列データを用いて解析を行い、その結果、インドネシア・マラバール系統のチーク集団は、遺伝的オフセットが低いことから、将来の気候変動に対して遺伝的強靭性(十分な遺伝的多様性)を有している可能性があると示されました。

谷教授によれば、こうした情報は、気候変動に強い持続可能なチークプランテーションの今後の戦略を策定する上で有益な指針を提供します。たとえば、研究ではジャワ島中部および東部地域が将来のチークプランテーションとして適している可能性が示唆されています。

人工知能などの新たな技術の活用により、チークプランテーションの材積推定を含む熱帯林の経営がより効率的になります。 © ITTO

チーク材積推定の改良に向けたAI活用:インド・ケララ州の事例

エリアス博士は、発表の中で持続可能な森林経営および意思決定における現地調査(フィールド・インベントリー)の重要性を強調しました。森林の成長の把握、伐採可能材積の算出、伐採木材の輸送計画などは、とりわけ重要です。

しかし、従来の材積推定手法は多くの時間と労力を要します。エリアス博士によれば、AIなどの新技術を活用することで、特に現地調査の効率が大幅に向上するとのことです。

その考えに基づき、博士と研究チームはAIを活用した新たな材積推定フレームワークを開発し、インド・ケララ州での実証研究を行いました。この新手法では、現地画像と畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて材積を算出します。

エリアス博士によれば、AIを活用した方法は既存の手法よりも明らかに時間がかからず、調査区内の樹木本数による制約がないことが確認されました。これにより、労働集約的な現地調査への依存を減らし、資源の最適化と計画策定のためのデータに基づく知見を提供できるようになります。

現行および新技術は、持続可能な熱帯林経営の実現および小規模農業従事者の支援に活用することができます。 © ITTO

持続可能な森林経営の重要な推進力としての革新的技術

谷教授およびエリアス博士の発表は、環境適応的遺伝子の解析による将来に適した栽培戦略の策定や、AIを活用した材積推定の効率化を通じて、現行および新技術がいかに熱帯林の持続可能な経営に貢献し得るかを明確に示しました。

シャーム・サックルITTO事務局長に代わり、貿易産業部長のモハメド・ヌルディン・イドゥリス博士は、同ウェビナーでは、“アースインテリジェンス(Earth Intelligence)”の概念を探ったと述べました。これは、地球観測、AI、社会経済情報、市民観測、先住民の知識など多様な情報源を、モデリング・予測・シナリオ分析と統合し、新たに顕在化する脅威に対応し、小規模農業従事者の支援および情報に基づく意思決定を強化するものです。

本ウェビナーは、ITTO-BMLEHプロジェクト「熱帯地域における小規模農業従事者・コミュニティベースのチークおよび他の高価値樹種植林における高品質な木材生産の促進」の下で行われる、知識共有を目指す全12回の連続セミナーの5回目にあたります。

これらのウェビナーは、地域的・国際的な協力、情報共有、知識管理、政策策定およびアウトリーチのためのプラットフォームを提供し、持続可能な小規模チークおよびその他樹種プランテーションの強化を目指しています。

—---------

過去のITTO-BMLEHウェビナー録画は こちらからご覧いただけます(英語)。