TICAD9: 気候変動に強く、脱炭素化が進んだアフリカを実現する熱帯林の重要性

2025年8月22日, 横浜

2025年8月20日開催の「アフリカ開発会議(TICAD9)」のテーマ別イベントで基調講演を行うモハメド・ヌルディン・イドゥリスITTO貿易・産業部長。© Paula Sarigumba/ITTO

森林は、気候変動との闘いにおいてアフリカにとって依然として最大の天然の味方である、と ITTO 貿易・産業部長のモハメド・ヌルディン・イドゥリス氏は、第9回アフリカ開発会議(TICAD9)での基調講演で述べました。

アフリカの熱帯林は、世界の熱帯林面積の16%を占め、レジリエンスと包摂性にとって極めて重要であり、大陸全体の何百万人もの人々の生計を支えています。しかし、森林の減少と劣化は、気候変動対策と経済成長を阻害しており、喫緊の課題となっています。

イドゥリス博士は、TICAD9テーマ別イベント「気候に対して強靭で脱炭素なアフリカに向けた日・アフリカパートナーシップ」で基調講演を行いました。イドゥリス博士は、アフリカの脱炭素化を推進する上で国際協力の役割を強調し、ITTO はアフリカの加盟国のための協力の取組の最前線に立っていると述べました。

「アフリカの脱炭素化を実現するには、国際協力、コミュニティの関与、そして持続可能性への揺るぎないコミットメントが必要です。」とイドゥリス博士は述べました。

TICAD9テーマ別イベント「気候変動に強く、脱炭素化されたアフリカのためのアフリカ・日本パートナーシップ」で基調講演を行うイドゥリス博士。© Paula Sarigumba/ITTO

持続可能性への取組は、ITTO が推進する持続可能な森林経営(SFM)を取り入れることで前進させることができます。基調講演の中で、イドゥリス博士は、コートジボワール、ベナン、トーゴ、コンゴ盆地におけるITTOの活動例を挙げ、ITTOがアフリカ加盟国の利益促進の最前線に立ってきたことを紹介しました。

コートジボアールでは、ITTOのプロジェクトが地元の女性団体と協力し、アフア保全林の100ヘクタールエリアを回復させ、炭生産用の木材の継続的な供給を確保しました。同プロジェクトは地域の生活水準を向上させ、森林保全の重要性を強調し、短期的な経済的必要性と長期的な回復・管理の優先事項を両立させました。

ベナンでは、ITTOは同国南部の地域にまたがる生態的・文化的価値の高い聖なる森を守りました。プロジェクトでは、聖なる森林周辺の緩衝地帯68.5ヘクタールの再植林を実施し、参加型プロセスで策定された森林経営計画を承認し、保全を監督する地元の運営委員会を設立しました。

ITTOの研究は、コンゴ盆地の5カ国で林業関係者向けに持続可能な森林経営(SFM)トのレーニングを行う能力向上プロジェクトの開発につながりました。初期の研究で、SFMを実施するために必要な資格を持つ人材が不足していることが判明したため、中部アフリカにある26の森林・環境訓練機関がITTOプロジェクトを通じて協力し、伐採が許可された地域でSFMを実施するために必要なスキル、知識、資格を参加者に提供する訓練プログラムを開発しました。

イドゥリス博士によると、これらのプロジェクトは「植林、再植林、持続可能な森林経営を通じて、アフリカはレジリエンスを強化しつつ、世界の緩和努力に貢献できる」ことを示しています。

森林による脱炭素化推進

T同イベントでは、日本の滋賀県知事である三日月大造氏の挨拶、アフリカにおける持続可能で公平な未来に関するパネルディスカッション、および日本の環境省とアフリカ開発銀行との間で覚書の署名も行われました。

パネルディスカッションでは、エチオピアの駐日大使であるダバ・デブレ・フンデ氏が、同国の「グリーン・レガシー・イニシアティブ(Green Legacy Initiative)」について説明しました。この取組は、4年間で200億本の苗木を植樹し、緑の景観の回復、食料安全保障の向上、経済発展への貢献を目的としています。

アフリカにおける適応促進に関するパネル討論会で聴衆に語り掛けるダバ・デブレ・フンデ駐日エチオピア大使。© Paula Sarigumba/ITTO

エチオピアのアプローチは森林の多機能的な影響を示し、ダバ大使は「樹木の植樹は気候変動、食料安全保障、雇用など多くの分野に影響を与えます。」と指摘しました。

アフリカ開発銀行グループ(AfDB)のケビン・カリウキ副総裁は、気候資金の現実とアフリカ大陸のニーズとのギャップを説明し、「アフリカは世界で最も気候変動に脆弱な地域でありながら、グローバルな気候資金の4%未満しか受け取っていません。」と述べました。

カリウキ氏は、アフリカ開発銀行がアフリカの気候変動対策を進めるための解決策を共同で創出する取組の例として、サヘル地域で荒廃した景観の回復を通じて砂漠化対策を進める「グレート・グリーン・ウォール(Great Green Wall)イニシアティブを紹介しました。

気候変動への耐性を高める取組の中心にある森林

国際機関、パートナー諸国、民間部門、市民社会などのステークホルダーが一堂に会する多国間フォーラムである TICAD は、世界的な支援と資金援助を通じてアフリカ大陸の発展をさらに推進する場となっています。

日本とアフリカの双方と強いつながりを持つ ITTO は、持続可能な森林経営を通じて経済成長を支援しながら、炭素排出量の削減に向けた国際協力を促進する上で重要な役割を担っています。

イドゥリス博士は、「TICAD は、アフリカと日本のリーダーたちが、民間企業や非営利団体とともに、気候変動に強く脱炭素化した未来のためのパートナーシップを構築するためのユニークなプラットフォームを提供しています。」と結びました。