ITTOの火災ガイドラインとプロジェクトが第8回国際原野火災会議で取り上げられる

2023年5月26日

ITTO火災予防プロジェクトが実施されたペルーの5つの県のうちの1つ、ワヌコ県の山岳地帯にある火災が発生しやすい景観。写真:SERFOR

2023年5月26日、横浜:先週ポルトガルのポルトで開催された第8回国際原野火災会議の一環として行われたワークショップでは、ITTOの火災予防と対応に関する3つのプロジェクトと、熱帯林の火災管理に関するガイドラインが注目されました。会議ではまた、火災管理に関する協力を促進するための景観火災管理枠組(Landscape Fire Governance Framework)が採択されました。

ITTO主催のワークショップで司会を務めたITTOのマ・ファンオク博士は、ITTOの火災プロジェクトは、熱帯林における火災管理に関するITTOガイドライン(英語)に定められた原則をもとに設計されており、ガーナ、インドネシア、ペルーなど熱帯地域の能力開発に貢献していると述べました。また、ITTOの森林火災対策と火災管理の改善に対する長期的な取り組みについて述べ、連携の重要性を強調しました。

世界的な森林火災の専門家であり、世界火災モニタリングセンター(Global Fire Monitoring Center: GFMC)のチーフであるヨハン・ゲオルク・ゴルダマー教授は、ITTOの火災管理ガイドラインは1997年に発表された時点で、先駆的なものであり、ITTOのガイドラインは、1999年に世界保健機関(WHO)が発表した「植生火災に関する健康ガイドライン(Health Guidelines for Vegetation Fire Events)」や、2006年に発表された国連食糧農業機関(FAO)の「火災管理自主ガイドライン(Fire Management Voluntary Guidelines)」の策定にも重要な役割を果たしたと述べました。また、2013年に発表されたGFMCの「村落防衛ガイドライン(Village Defense Guidelines)」は、山火事から村や農場を守るために不可欠な指針を提供していると述べました。さらに、3つの熱帯地域間で教訓を共有することは、統合的な火災管理の進展を促進し、この分野における国際協力を強化するために不可欠である、と語りました。

ガーナのCSIR-森林研究所の森林生態学者であるルーシー・アミッサ博士は、コミュニティベースの森林火災管理について語りました。アミッサ博士は、自国におけるITTOプロジェクト「地域コミュニティの協力による火災管理と火災後の復旧」[PD 284/04 Rev. 2 (F)]の成果を発表し、コミュニティ火災管理は、特に伝統的権威などの地域の統治構造を利用する場合に効果的なアプローチとなりうることを示しました。また、森林火災に対する持続可能な解決策としては、コミュニティの積極的な参加を得て、景観の回復や森林経営の取り組みに火災管理を統合することが必要である、と指摘しました。

ペルー国立森林野生動物局(SERFOR)のエルビラ・ゴメス・リベロ氏は、ITTO プロジェクト「ペルーの熱帯林および森林プランテーションにおける森林火災予防・対応」 [PP-A/56-340-2] の成果を発表しました。リベロ氏は、このプロジェクトが、カハマルカ県、ワヌコ県、フニン県、パスコ県、ウカヤリ県の各地域の地方自治体、地域リーダー、農村開発推進者の能力開発に大きく貢献したと述べました。また、文化省と協働で実施した異文化間戦略の成功により、いくつかのコミュニティで先住民が参加し、森林火災予防の取り組みが改善されたことを紹介しました。

インドネシアのボゴール農科大学(IPB)のバンバン・ヘロ・サハージョ教授は、地域コミュニティと企業の両方が、焼畑を伴わない代替手段を見つけることが極めて重要であると述べました。また、火災管理能力を高める必要があり、最近インドネシアで行われたITTOプロジェクト「森林・土地火災管理に関する能力開発」[PP-A/56-340-1] では短期間で素晴らしい成果が得られたが、このような取り組みがさらに必要であると指摘しました。さらに、バンバン教授は、火災による温室効果ガス排出を軽減するための科学的介入の必要性と、火災によって発生する汚染、火災マッピング、煙の広がりなどに関する正確な情報の重要性について語りました。

ワークショップでは、統合的な森林経営における社会科学者の関与の重要性や、山火事のリスクを軽減するための森林法の施行強化の必要性などについても議論されました。また、世界の森林面積の約3分の1を占める熱帯林は、森林に関わる生産物や生態系サービスを提供し、生物多様性を宿す存在として不可欠ですが、山火事に対する脆弱性が高まっています。そのため、熱帯林火災に対処するための国際協力の重要であるとの認識について、概ね合意が得られました。

また、今回の会議では、持続可能な開発目標を達成するための社会的準備を整え、火災によって引き起こされる人々と環境へのリスクを低減することを目的とした景観火災管理枠組が採択されました。この枠組は、政府、企業、学術界、市民社会の連携を促進し、景観火災の課題に対処するためのバランスのとれた、技術的な情報に基づいた解決策を育成するものです。

サイドイベントのプレゼンテーションは以下よりダウンロードできます。

関連するSDGs

熱帯林の火災管理を改善することで、大気汚染、生命の損失、資産や環境への損害を減らすことができます。

統合的な森林火災管理は、山火事のリスクを低減し、その結果、温室効果ガスの排出を減らすことができます。

統合的な森林火災管理は、持続可能な森林経営の不可欠な要素であり、生物多様性の保全、森林破壊の阻止、土地劣化の軽減、土地回復の促進に役立てることができる。