気候変動対策に不可欠な持続可能なマングローブ林経営

2017年11月15日

インドネシアのベタン・ケリフム国立公園にあるこの沿岸地域のコミュニティーは、気候変動の影響を受けやすく、持続可能なマングローブの経営が地域住民の暮らしにとって不可欠。写真提供: K. Sato/ITTO

マングローブ林の持続可能な経営は、世界的な取り組みである気候変動の緩和・適応策にとって大変重要なことであり、政策立案者から一層の注目を集める必要があります。このように、現在ドイツのボンで開催中の国連気候変動枠組条約第23回締約国会議(UNFCCC COP23)のサイドイベントで、ITTOのゲアハートディタレ事務局長が述べました。マングローブ林は大量の炭素を貯蔵し、海岸線を保護し、回復させる力(レジリエンス)を備えています。それだけでなく、沿岸住民数百万人の収入源にもなっています。

ディタレ博士は沿岸地域における土地利用計画の立案、多面的な利点を考えたマングローブ林経営の統合、地域社会の生活が向上できるような革新的資金メカニズム、沿岸の保護、マングローブの喪失と劣化の防止などが必要だと呼びかけました。これらに対処できれば持続可能な開発目標(SDG)の13「気候変動に対抗する」と14(海洋と海洋資源の保全・持続可能な利用)に貢献できます。

2017年11月13日に開催されたこのサイドイベント「熱帯地方のマングローブ:気候変動の緩和と適応の可能性を実現する」は、日本の国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所、日本国際協力機構(JICA)、インドネシア環境林業省、国際林業研究センター、ITTOの共催で行われました。 11月17日に閉幕するUNFCCC COP23は、気候変動に関するパリ条約の運用に関する諸問題に現在取り組んでいます。

サイドイベントの講演者は、持続可能な開発のための2030年のアジェンダとパリ協定に対するマングローブ生態系の貢献を強化するために、国内および世界の取り組みを拡大する必要があると力説しました。そして、パリ条約の国別約束(NDC)のもとで持続可能な開発目標の達成に向けて、マングローブを気候変動の緩和と適応に関する国内および国際戦略へ推進していくことを求めました。

また、このサイドイベントでは世界最大のマングローブ林を抱えるインドネシアの事例を取り上げました。同国では、二酸化炭素排出削減、経済成長、気候レジリエンス、開発への公正な機会の提供の4本の柱によるNDCを作成しています。

サイドイベントの参加者は、マングローブ生態系がSDG5「ジェンダー平等」に貢献していることを認識しました。多くの地域で、女性はマングローブの再生と修復、食糧生産のためのアグロフォレストリーの導入、クリーンエネルギーの促進(燃費の良いストーブや持続可能なマングローブ林経営の導入など)、エコツーリズムを含めた収入を得られる活動などにおいて主導的役割を果たしています。しかしながら、能力開発、資金調達へのアクセス、およびユーザー権利を確保する法的枠組みを通じて、女性のさらなるエンパワーメントが必要であることが指摘されました。

さらに、「ブルーカーボン」を最もよく測定する方法についても議論されました。参加者は、日本の民間部門と協力して、インドネシア、日本、フィリピンで実施されている「サンゴ三角における青色炭素生態系とそのサービスの包括的評価と保全」プロジェクトについて報告を受けました。その中でスピーカーは、沿岸生態系の保全と管理のための地域の取り組みにおいて、炭素動態と環境サービスに関するデータとマッピングの必要性を強調しました。

この他にも、海面上昇を踏まえたマングローブ林経営、若者のマングローブの保護と政策立案への参加、インドネシアのマングローブに対する脅威、マングローブに関する基準と指標の開発、長期的なマングローブ林の持続可能な経営についても話し合いが行われました。ディーターリ博士の他にも、サイドイベントでは以下のスピーカーが講演しました。
 

  • 林野庁次長 牧元幸司氏
  • 国際林業研究センター(CIFOR) 主任科学者 ダニエル・ムルディヤソ教授
  • インドネシア
森林資源監視・モニタリング担当ディレクター ルアンデ・アグン・シュガーディマン博士(環境林業省気候変動局長 ナー・マスリパティン博士代理)
  • 国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所 研究ディレクター 平田泰雅氏
  • コミュニティー森林経営のためのアフリカ女性ネットワーク(REFACOF)代表 セシール・ビビアン・ヌジェベ氏
  • JICA地球環境部グループディレクター 森田隆博氏


 
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