ITTOが世界の木材状況に関する隔年評価報告書を公開

2017年8月7日

ITTOは、世界の木材セクターと木材市場の発展と動向についての見解を示した最新の世界の木材状況に関する隔年評価報告書2015-2016を公開しました。この報告書は、一次木材製品(工業用丸木、製材、ベニヤおよび合板)の生産、貿易および価格、二次加工木材製品(SPWPs)の貿易と価格、取引された主要熱帯木材、そして第一次熱帯木材製品の貿易の方向性などの内容を取り上げています。本書のデータは ITTOのオンライン統計データベースに含まれているもので、1990年から2016年の間のデータを更新しています。そして、熱帯木材および主要な熱帯木材製品の貿易の進展具合や長期的傾向を分析するための強力なツールであるとともに、木材生産と加工についての重要な転換点にもなっています。

本書では、世界最大の合板生産国の一つになった中国の合板産業についての包括的ケーススタディー[1],を特集しています。このケーススタディでは、中国が世界の原材料供給に及ぼす影響や、合板生産の効率化、合板の最終用途における国内へのシフトについて詳述しています。
 
隔年報告書の一次木材製品についての主な調査結果は以下の通りです。
  • ミャンマーやマレーシアなど主要木材生産国の供給に制約がかかったことと、中国の需要の低迷によって、2015年と2016年の熱帯木材製品の世界貿易は減速した。
  • ITTO加盟国による熱帯木材の輸入量は、2015年に1690万㎥に達し、中国での需要が加速した2014年のピークから13%低下した。丸太の輸入量は2016年に減少(3%)し、1630万㎥となったが、これは2014年に輸出制限が厳しいミャンマーからのインドとベトナムの輸入が大幅に減少したことが主な要因である。
  • 引き続き、中国は熱帯丸太の輸入に関して2015年にITTOの輸入総額の59%を占め、2016年には63%を占めた。
  • 2015年の主要対貿易フローは、パプアニューギニアとソロモン諸島から中国、マレーシアからインドまでであった。
  • アジア太平洋の多くの重要な生産国、とりわけカンボジア、インドネシア、ラオス、フィリピン、タイには何らかの形で丸太の輸出禁止が実施されている。
  • ITTO生産国は、2015年に1230万㎥の熱帯丸太を輸出したが、これは世界の総輸出量の4分の3であった。最大の輸出国であるパプアニューギニアの貨物輸送量は、2015年には360万㎥で、主な輸送先は中国(87%)であった。
  • アジア地域は、従来通り熱帯木材貿易の中心となっており、中国とそれ程ではないがタイとベトナムが主要輸入国である。カメルーン、マレーシア、タイは主要輸出国である。
  • ITTO生産国は2015年に950万㎥の熱帯製材を輸出し、熱帯木材の世界的な輸出の88%を占めた。中国の輸入は2015年の510万㎥から2016年660万㎥に急増した。それにはより多くの生産国が対輸出制限を課し、中国の製造コストが上昇したためである。
  • タイは2015年に熱帯製材(主にプランテーションゴムノキ)の最大輸出国であり、そのうち99%が中国に輸出された。
  • 熱帯合板の世界貿易は過去10年間で減少傾向にあり、2015年の輸入は510万㎥に減少している。日本は2015年のITTO加盟国の中での熱帯合板輸入の30%を占めていたものの、輸入量は、日本国内の在来種から加工された合板が代替品となったことや、輸入熱帯合板に対する価格上昇への圧力、為替相場の変動、国内需要の低迷などの影響を受けて下落した。
  • インドネシアとマレーシアは、熱帯合板の輸出を引き続き中心となっているが、マレーシアの輸出は2015年には19%低下して250万㎥であった。これは、原材料の入手に制限があることと、日本の需要と供給が低迷したことに影響を受けたものであった。
 
隔年報告書の二次加工木材製品についての主な調査結果は以下の通りです。
  • 全ITTO加盟国のSPWPsの輸入(そのうち3分の2近くが木造家具やその部品であった)額は、2015年に約913億米ドルとなり、世界のSPWP輸入量の89%となった。
  • ITTO消費国は、2015年にITTOのSPWPs輸入の約94%を占めた。その貿易の大部分(輸出額の82%)は消費国間での取引であった。
  • 輸入需要は、米国、欧州連合(EU)加盟国、日本を中心とする先進国経済が主だっている。また、オーストラリア、カナダ、香港特別行政区、韓国も重要な市場である。
  • SPWPsの輸出は供給源によって大きく変化したが、それは先進国の比較的緩やかな輸出の伸びを補うものではなく 、近年の中国、フィリピン、ベトナムからの実質的輸出拡大によるものである。
  • SPWPの輸出額は2015年に334億ドルであったとされている。中国は2003年以来世界最大の輸出国であり、2015年にはITTO消費国の全輸出の33%を占めた。
  • ITTO生産国は2015年にITTO加盟国のSPWP輸出の18%を占め、わずかにシェアが増加した。
  • アジア太平洋は2015年にITTO生産国の82%以上の輸出を占めるSPWPの主要生産地域であった。中南米は17%を占め、アフリカの輸出は全体の1%未満であった。
  • ベトナムはSPWPの輸出で2015年には2014年の10%増の35%、62億米ドルであった。
  • インドネシアとマレーシアのSPWP輸出は、2015年にそれぞれ4%減の35億ドルと25億ドルであった。
  • 2015年のITTO生産国内におけるSPWPの他の主要輸出国はブラジル、インド、メキシコ、フィリピン、タイであった。
 
中国合板産業のケーススタディー

本書の中国の合板産業に関するケーススタディーには、282の合板工場の詳細調査と26の現地視察が含まれており、これは現在中国の合板業界で最も包括的かつ完全な調査の1つとなっています。中国は、経済移行や改革の一部に起因して、相対時間(25年)の間に世界最大の合板生産国となりました。このようなブームによって原材料の供給が制限されていました。現在、供給量の70%は主にポプラやユーカリなどの急速に成長するプランテーションからのものであり、この需要を機会に中国のプランテーション地の拡大が促進しています。

ケーススタディーでは、合板製造のプロセスに関する貴重な情報を詳しく提供しています。例えば、中国では1立方メートルの合板を生産するために平均1.43立方メートルの原材料が使用され、木材換算率は世界で最も先進的な経済の水準に匹敵しています。中国で生産された合板の最終用途に変化が見られました。1980年代に中国で生産された合板の70%が家具製造に使われましたが、今日では12%となっています。その他の主な用途は、建設(25%)と内装(21%)です。中国の合板生産の今後の課題には、低コスト労働の持続可能性(中国産業の重要な利点の1つ)と、国内プランテーションや潜在的に中国と外国企業を含む国際的な合弁プランテーションによる原料供給の持続可能性が挙げられます。


隔年報告書2015–2016のダウンロード
隔年報告書のグラフと図のダウンロード
隔年報告書の表のダウンロード
中国合板産業についてのケーススタディーのダウンロード
過去の報告書(1987–2014)
                                                                               
 
[1] 中国のケーススタディーは、ITTO、FAO、APFNetの間の共同事業の一環として実施された