Managing tropical forest biodiversity across international borders

2016年12月9日

生物多様性条約第13回締約国会議(CBD COP13)で開催のITTO・CBD・バードライフインターナショナル共催サイドイベントで講演を行うカンボジア森林局のチェン・ダニー氏。写真提供:S Lim

メキシコのカンクンで開催中の生物多様性条約第13回締約国会議(CBD COP13)で取り上げられた環境保全プロジェクトによると、国際的な枠組みの中でエコリージョナル(生態地域)アプローチを取ることで、国境をまたぐ地域における森林やその生物多様性を効果的に保全できるとの見解が紹介されました。
 
生物多様性が豊かな熱帯林の多くは越境地帯に広がっています。しかしながら、国境を越えてこのような森林を守り、共通のルーツや文化を共有する住民と先住民族が互いに交流することは容易ではないことが示されました。
 
12月8日に開催されたITTO・CBD・バードライフインターナショナル共催サイドイベントでタイ、カンボジア、ラオスにまたがるエメラルドトライアングル複合保護林(ETPFC)と、リベリアとシエラレオネに広がるゴラ地域で行われたプロジェクトそれぞれの成果と教訓について取り上げられました。「ボーダレスな世界でのボーダレスな保全:越境地帯で熱帯林の生物多様性を保全するための各国の取り組み」と題した本サイドイベントでは、越境地帯の持続可能な森林経営と生物多様性の保護にとって国際協力が不可欠であること、そして同時にそれぞれの国の国境地帯に暮らす人々がお互いの文化的つながりを保てるようにすることが重要であるかが明らかにされました。
 
次に、カンボジア森林局を代表して、チェン・ダニー氏がITTO資金提供プロジェクトPD 577/10 Rev.1 (F):「タイ、カンボジア、ラオスにまたがる越境生物多様性の保全のための国際協力の推進に向けたETPFCの管理(フェーズIII)」の成果について発表しました。65万3400ヘクタールの面積を有するETPFCには、絶滅危惧種10種を含むIUCNレッドリスト野生生物種50種が生息しており、大メコン圏で最も重要な生物多様性保全地帯の一つに挙げられます。同プロジェクトによって共同モニタリングや能力育成、研究、地域社会のエンパワーメント、そして生活改善等を通じて越境地域の森林保護が強化されました。
 
バードライフ・インターナショナルの政策部門長のペペ・クラーク氏が続き、シエラレオネとリベリアにまたがるゴラ地域には、保護林及び地域主導で管理された森林が30万ヘクタールに及んでいるとの説明がありました。この地域は327種類の鳥類と31種類の淡水魚、絶滅の恐れのある9種類の哺乳類(コビトカバ、西部チンパンジー、ソメワケダイカー、マルミミゾウ)と2880種類の維管束植物が生息する生物多様性のホットスポットであり、バードライフインターナショナルの資金提供プロジェクトでは森林保護、REDD+、住民参加、持続可能な生活と野生生物のモニタリングに取り組んでいると同氏は述べました。
 
生物多様性条約(CBD)事務局長のブラウリオ・デ・ソウザ・ディアス氏代理のブレイズ・ボーダン氏は開会の挨拶で、熱帯林の生物多様性保全のためのITTO-CBD 共同イニシアティブでこれまで実施してきた事業と生物多様性戦略計画2011-2020、ならびに林業関連の愛知生物多様性目標(目標5,7,11,14,15)への同イニシアティブの貢献に対して感謝の意を表明しました。
 
IITTO、CBD事務局とバードライフインターナショナルは、ローカルからグローバルレベルでのアプローチ、現場重視の活動やプロジェクトや啓発を通じて、生物多様性の保全に向けて取り組んでいます。ITTOとCBD事務局は熱帯林の生物多様性保全のためのITTO-CBD共同イニシアティブを通じて22カ国11件のプロジェクトに資金提供を行い、特に生物多様性の保全、森林監視、持続可能な形で様々なメリットを享受できるような順応的管理、外来種からの保護、そして土地利用の変化を避けるための天然熱帯林の価値向上などに重点を置いています。また、ITTOとバードライフインターナショナルは2012年以来共同事業を実施しており、2020年までの覚書を締結し、特に森林再生、地元の生活改善、森林破壊の原因の阻止、森林保全、森林再生、持続可能な森林経営に関する意識向上に注力する計画です。
 
今回のCOP13でITTOは閣僚級会合(ハイレベルセグメント)(カンクン宣言が採択される)や農林水産業や観光業における生物多様性の主流化が焦点となるワーキンググループI及びIIへの助言を提供しています。