政策に活用できる教訓を生み出すITTOの森林火災プロジェクト

2024年12月4日, 横浜

ITTO事務局は各担当者らと緊密に連携し、ITTOプロジェクトを成功裏に実施しています。写真:P.Sarigumba/ITTO

2024年12月4日、横浜:インドネシアとペルーで完了したITTOプロジェクトはいずれも、森林火災管理に関する貴重な知見を提供し、それらは熱帯林火災管理の新しいガイドライン作成に役立てられる予定であると、第60回国際熱帯木材理事会3日目に発表されたプロジェクト評価が指摘しました。両プロジェクトとも日本政府の資金提供を受けています。

ITTO事務局は各担当者らと緊密に連携し、ITTOプロジェクトを成功裏に実施しています。写真:P.Sarigumba/ITTO

「インドネシアにおける森林・土地火災の管理に関するキャパシティビルディング」プロジェクトは、南スマトラ州、中央カリマンタン州、南カリマンタン州で様々な火災関連活動を行いました。例としては、地域コミュニティで焼却ゼロの実践に関する研修を実施するとともに、土地を焼き払わずに農地を開墾する技術を実証するための8つのエリアを設置した取組、研修を通じて3つの州のすべての地元消防隊の能力を向上させた取組などが挙げられます。火災予防パトロールのための新しい監視・報告システムが開発され、現在では全国的に適用されています。

第60回国際熱帯木材委員会の再造林と森林経営の委員会。写真:P.Sarigumba/ITTO

コンサルタントのルーシー・アミサ氏が提出したプロジェクトの事後評価報告書は「プロジェクトは、対象となった3つの州のステークホルダーの管理・技術能力を強化することに成功した」と報告しています。

ペルーでは、「ペルーの熱帯林および森林プランテーションにおける森林火災予防・対応」プロジェクトが同国の5つの県で実施され、200人以上のボランティア消防隊員が訓練を行いました。同プロジェクトは、森林火災の予防と対応における国・地域当局と地域社会の連携と協力を改善するとともに、地域や先住民族コミュニティの火災予防・対応ネットワークへの参加を支援しました。プロジェクトはまた、森林火災管理業務を改善するための政府機関の能力を向上させ、自らが火災予防と対応のための変革の担い手であるというコミュニティの意識の向上に貢献しました。

財務と管理に関する委員会のセッション開始前に議論する消費国、オーストラリア、カナダ、アメリカの代表団。写真:P.Sarigumba/ITTO

「プロジェクトは、地域経済、生態系サービス、生物多様性にとって不可欠な森林資源を保護することを目的とし、火の使用に代わる手段の促進を通じて、持続可能な森林経営を支援する上で重要な役割を果たした」と事後評価は結論づけました。

現在、ITTO、国連食糧農業機関(FAO)、および「森林に関する協調パートナーシップ」のメンバーが参加する熱帯林における総合的火災管理をより広く普及させるための共同事業の下で、統合的な熱帯林火災管理に関する現場指向のガイドラインの作成が行われていますが、2つのプロジェクトから得られた教訓は、同ガイドライン開発のベースとなる知識の一部となります。ガイドラインは、1997年に発行された熱帯森林の火災管理についてのITTOガイドライン(英語)を基に作成されます。
 

他団体との協力

他団体との協力・連携は、3日目の理事会の主要な議題となりました。シャーム・サックルITTO事務局長は、「森林に関する協調パートナーシップ」のメンバーやその他の国際機関とITTOが行っている多様な取組について説明しました。

ITTOが現在取り組んでいる協力の機会について報告するシャーム・サックルITTO事務局長。写真:P.Sarigumba/ITTO

サックル事務局長は、ITTOが2024年3月に正式に緑の気候基金に認証されたことを理事会に報告しました。現在、資金提供のための申請書の提出準備とともに、認証機関の一員となるためのプロセスが進行中です。

またITTOは、生物多様性条約(CBD)、アジア森林協力機構(AFoCO)、国際協力機構(JICA)、国連砂漠化防止条約(UNCCD)、国連森林フォーラム(UNFF)との覚書の運用を進めており、さらに地球環境問題研究所との新たな覚書も間もなく完成します。国連大学や日本のリモートセンシング技術センターとの覚書も検討中です。

サックル事務局長は、ITTO がホスト国の日本での広報活動の一環として、2024 年に 9 つの教育イベントに参加したと述べました。

セッション中に発言する農林水産省の本田知之氏。写真:P.Sarigumba/ITTOP.Sarigumba/ITTO

また、この議題の下では、高田実 国連森林フォーラム事務局次長、ロバート・ナシCIFOR-ICRAF事務局長、山本彩リモート・センシング技術センター(RESTEC)常務理事からも発言がありました。

理事会セッションで発言するRESTECの山本彩氏。写真: P.Sarigumba/ITTO

新しい協定と資金調達

コンサルタントのアレクサンダー・ナップ氏は、新しい国際熱帯木材協定(ITTA)の交渉の可能性と、これまでの理事会会合での発表に基づくフィードバックを踏まえた組織の資金調達の選択肢について発表しました。ナップ氏は、理事会の検討課題として、ITTOの加盟国の構成や組織構造などについて、いくつかの選択肢を提示しました。また、組織の限られた財源を最も効率的に活用するため、内部および外部からの資金調達の優先順位に関する提案も行いました。

新ITTAの交渉の可能性を加盟国に提示するアレクサンダー・ナップ氏。写真:P.Sarigumba/ITTO

各委員会の活動

財務と管理に関する委員会は理事会3日目に作業を終了し、金曜日に報告書を提出します。再造林と森林経営の委員会は、現在進行中および完了したプロジェクトを検討するため会合を実施し、4日目に再開して作業を完了する予定です。経済学・統計・市場に関する委員会と林産業に関する委員会は合同セッションを開催し、近日中に再度会合を開く予定です。

ITTCの会合では、加盟国による二国間会合の機会も提供されます。写真はタイとコートジボワールの代表団。写真:P.Sarigumba/ITTO
理事会では、事務局とITTOプロジェクトの実施機関の代表が交流することもできます。写真:Photo: P.Sarigumba/ITTO

理事会の詳細、発表資料については、https://www.itto.int/ja/ittc-60/presentations/をご参照ください。

IISDレポートサービスによる会期中の毎日の報道は、こちら(英語):https://enb.iisd.org/ittc60-international-tropical-timber-council.