COP28:ITTO、熱帯林へのさらなる気候資金が必要と主張

2023年12月7日

ITTOとパートナー共催のサイドイベント「持続可能な森林経営の推進: 炭素と生物多様性のための資金調達メカニズム」の全体セッション。写真:Angeles Estrada/IISD-EBN

2023年12月7日:アラブ首長国連邦・ドバイにおける国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)の開催期間中に、ITTOとパートナーが主催したサイドイベントで、何名もの演者が、この重要なメッセージを強調しました。

シャーム・サックルITTO事務局長は、"持続可能な森林経営の推進"をモットーに開催された会合で、 熱帯林は、その可能性を実現するために必要な投資を得るのに苦労してきたと語りました。

「社会経済や環境保護だけでなく、(炭素の)隔離・蓄積率という点においても、森林には認められ、認知される可能性が膨大にあります。」とサックル事務局長は述べました。

サックル事務局長はまた、熱帯林の損失を減らし、経営を最適化し、生態系サービスを充実させ、先住民族や森林に依存するコミュニティを含む社会的・生態学的な強靭性を高めるために、熱帯林のための持続可能な資金メカニズムを導入することが「最も重要」であるとの認識を示しました。

登壇者らは、熱帯林には公的資金の拡充と同様に民間部門からのさらなる投資が必要であると強調し、政策立案者は税制改革やブレンドファイナンス(Blended Finance)などを通じて、投資家のリスクを軽減するインセンティブを生み出す努力を重ねる必要があると述べました。

マ・ファンオクITTO森林経営部門担当官は、持続可能な森林経営(SFM)は、木材生産強化による炭素排出削減のための自然ベースのソリューションであり、影響の少ない伐採や木質バイオエネルギーなどの導入も含まれると述べました。マ担当官は、熱帯木材と熱帯木材製品の合法的かつ持続可能なサプライチェーンに関するITTOの一連のプログラムを紹介し、大メコン圏におけるチークの持続可能な生産を促進するITTOプロジェクトを例に、様々な利点を説明しました。同プロジェクトは、造林方法、付加価値の付け方、マーケティングを改善し、森林に依存するコミュニティに利益をもたらしています。最近、プロジェクトの第2フェーズが開始しました。

日本の森林総合研究所(Forestry and Forest Products Research Institute: FFPRI)の平田泰雅氏は、ある試算によると、SFMに必要な公的資金は、必要とされる4,600億米ドルの1%にも満たず、森林にとって有害である可能性がある活動への公的支出に比べると矮小化されていると述べました。

「グレーな公的資金がすべてグリーンなものに振り向けられたとしても、資金総額は大幅に不足しています。」「つまり、森林への資金を大幅に増やすことが喫緊の課題なのです。」と平田博士は述べました。

インドネシアのガジャマダ大学の国際林業学生協会(IFSA)の支部代表であるファイハ・アズカ・アザヒラ氏は、熱帯林の保護には若者が重要であるとし、持続的な開発における若者の役割を強調しました。

若い人々はIFSAのような組織を通じて、また地域社会や勉学、キャリアを通じて、貢献することができる、とアザヒラ氏は述べました。IFSAのメンバーは、さまざまな地域の若者をネットワークで繋ぎ、森林に関する啓発を行い、意識向上を実施しています。

「若い世代は未来を形成する重要な役割を担っています。私たちは変化の担い手なのです。」とアザヒラ氏は述べました。

サイドイベントではまた、ペルーアマソナス先住⺠連合(Confederation of Amazonian Nationalities of Peru: CONAP)会長のオセアス・バルバラン・サンチェス氏によるプレゼンテーションが行われ、アマゾンの生態系を持続的に経営する能力を示している先住民に対して、より直接的な気候変動資金を提供するよう求めました。 国連大学サステイナビリティ高等研究所の研究員であるスニーサ・スブラマニアン氏は、ビデオプレゼンテーションで、女性に権限を与えた14のITTO森林景観回復プロジェクトの評価について説明し、最後に、このようなプロジェクトにおける利害関係者間の協議の重要性を強調しました。

IISD/EarthNegotiationsBulletinレポートサービスによるサイドイベントの報告(英語)はこちらからご覧いただけます。

気候変動緩和のための持続可能な木材利用

2023年12月5日にジャパンパビリオンで開催されたサイドイベント「持続可能な森林経営を通じた気候変動の緩和策及び適応策の促進」では、サックル事務局長は、持続可能な木材利用が、森林に付加価値を与えることで気候変動の緩和にどのように貢献できるかを説明しました。

サックル事務局長は、環境にあまりやさしくない材料の代替としての木材の国内利用を強化することを目的としたインドネシア、マレーシア、タイ、ベトナムにおけるITTOのケーススタディを紹介しました。持続可能な木材利用は、建設業界の温室効果ガス排出量を削減し、パリ協定の下での各国の公約達成に貢献する大きな可能性を持っています。

ジャパンパビリオンで開催されたサイドイベント「持続可能な森林経営を通じた気候変動の緩和策及び適応策の促進」の登壇者。写真:S. Kawaguchi/ITTO

気候変動対策のための対話と新しい経験

サックル事務局長は、同日の2023年12月5日、イタリアパビリオンで開催された国連開発計画(UNDP)と非政府組織であるイタリア創価学会仏教協会(Istituto Buddista Italiano Soka Gakkai)主催のディスカッション「気候変動対策と地球のケアのための対話と新しい経験」にも参加しました。ディスカッションでは、若者のさらなる参加を含め、変革の機運をいかにして生み出すかが焦点となりました。

イタリアパビリオンで開催された「気候変動対策と地球のケアのための対話と新しい経験」で発言するシャーム・サックルITTO事務局長。写真:S. Kawaguchi/ITTO

マングローブの持続可能な経営
ITTOはまた、2023年12月4日にITTO、国際林業研究センター- 国際アグロフォレストリー研究センター(CIFOR-ICRAF)、インドネシア環境林業省、Nusantara Carbon社/Kandelia Alam社の共催によりインドネシアパビリオンで実施されたセッションにも参加しました。

サックル事務局長がモデレーターを務め、マ・ファンオク担当官が、東南アジア諸国連合(ASEAN)によるITTOの持続可能なマングローブ生態系のための地域戦略の開発への支援について説明しました。

インドネシアパビリオンでのサイドイベント「力強く持続可能なマングローブ生態系ガバナンスの促進」の登壇者。写真:S. Kawaguchi/ITTO