ITTO事務局長、木質バイオマスエネルギーへの持続可能な森林経営の貢献度向上を求める

2023年5月19日

国連森林フォーラム第18会合のパネルディスカッション「森林、エネルギー、生活」で発言するシャーム・サックルITTO事務局長。写真:Angeles Estrada Vigil/ENB-IISD

2023年5月19日、横浜: 熱帯林の再生可能エネルギーの潜在能力を発揮させるには、包括的、革新的、統合的な持続可能な森林経営(SFM)実践が必要であると、シャーム・サックルITTO事務局長は、国連森林フォーラム第18会合でのプレゼンテーションで語りました。

「森林は歴史的にエネルギーと生計の主要な源であり、とりわけ熱帯地域の農村部の人々にとっては現在もそうです。」「森林は、カーボンニュートラルな再生可能エネルギーの供給源であると同時に、農村部の雇用を創出し、木材産業の収益性を高めるという大きな可能性を秘めています。しかし、この可能性は未だにあまり評価されていません。」

サックル事務局長は、森林とエネルギーと生活の繋がりに関するパネルディスカッションで、木材を用いたバイオマスエネルギーは、小規模またはコミュニティ規模のプロジェクトに適しており、所得の増加、耕作限界地の生産的利用、農村経済の強化につながる可能性があると述べました。さらに、木材やバイオマスエネルギーを生産するための持続可能な森林経営は、炭素を隔離・貯蔵し、炭素集約的な材料や化石燃料を代替すること、および、森林や森林関連企業の経済性を向上させることを通じて、気候変動の緩和に寄与します。また、持続可能な森林経営は持続可能な開発目標(SDGs)のほぼ全てに貢献します。

「林業・木材産業は、バイオマスエネルギーに積極的に取り組み、木材由来のエネルギー資源がもたらす利点を活用することで、大きな利益を得ることができます。」とサックル事務局長は語りました。「特に、製材所やその他の加工施設で生産される木材残渣を活用すれば、気候変動に悪影響を及ぼす従来のエネルギー源への依存度を下げることにもなり、バイオマスエネルギー生産にとって好機となります。」

木材を原料とするバイオマスエネルギーセクターの発展がエネルギーセクターにおいて奨励されることが極めて重要であると、サックル事務局長は述べています。

「木質バイオマスエネルギーセクターをエネルギー計画の主流とし、その潜在能力を活用すると同時に、中小の森林関連企業の収益性を高め、農村の貧困を減らし、生活を向上させることが急務です。」

プレゼンテーションにおいて、サックル事務局長は、森林に関するバイオマスが持続可能なエネルギー源となるための重要な要素 ―例えば、経済的な成功をもたらす可能性のある劣化した土地の修復、木材廃棄物の利用に関する技術や情報および知識の普及、木質燃料や木炭の伝統的な供給システムの尊重、木質バイオマスの利用拡大が森林破壊や自然林の転換につながらないようにすることなど― について説明しました。

また、サックル事務局長は、ブラジル、コートジボワール、インドネシア、トーゴでの例を挙げ、木質のエネルギー資源の開発と効率化に貢献したITTOプロジェクトについても説明しました。

ディスカッションの中で、サックル事務局長は、利用可能な多くの評価ツールのひとつに過ぎないと言明しつつ、持続可能性を評価する効果的なツールとしての認証の重要性を強調しました。また、ITTOが森林火災についてのITTOガイドラインの活用や能力開発プロジェクトを通じて、山火事の予防と管理で加盟国と協力することに強くコミットしていると強調しました。サックル事務局長は、合法的に伐採され、持続可能な方法で経営された木材資源を利用する機会は無限にあると述べるとともに、それらはSDGsの達成に向けて前進しつつ、気候変動の緩和と適応を実施するうえで最もコスト効率が良く、環境に優しい自然ベースのソリューションの一つとなり得ると述べました。

ITTO事務局長のプレゼンテーション資料のダウンロードは以下より。