持続可能な熱帯林の利用は生物多様性の保全に不可欠 ―ITTO事務局長

2023年5月18日

ITTOプロジェクトのもと、タイの農村部で行われた苗床と組織培養のトレーニング。生物多様性を保全するための手段として、生産林にもっと注意を払う必要があります。写真:タイ王立森林局

2023年5月18日、横浜: シャーム・サックルITTO事務局長は、先週ニューヨークで開催された国連森林フォーラム第18回会合のサイドイベントで、生物多様性保全の手段として生産林にもっと注意を払うべきであると語りました。

「完全に保護された地域の設置は明らかに重要ですが、それは効果的な生物多様性保全戦略の1つの要素にすぎません。」とサックル事務局長は述べました。

「熱帯諸国の大部分では、貧困削減と経済活性化の手段として、森林の生産的な利用が欠かせません。ITTOは、木材やその他の商品・サービスの生産のために森林を利用することと、森林が保有する生物多様性の大部分を保全することの両立が可能であると信じています。」

2023年5月8日(月)に生物多様性条約(CBD)と国連森林フォーラム(UNFF)事務局が主催したサイドイベントが開催されました。同イベントでは昆明-モントリオール世界生物多様性枠組(GBF)と、「国連森林戦略計画2017-2030」に明示された世界森林目標(GFGs)および関連ターゲットとの相互連関を探求しました。

サックル事務局長は、2009年に発表された「熱帯木材生産林における生物多様性の保全と持続可能な利用のためのITTO/IUCNガイドライン(ITTO/IUCN Guidelines for the Conservation and Sustainable Use of Biodiversity in Tropical Timber Production Forests)」(英語)は、生物多様性へのリスクを最小限に抑えるための生産林でのベストプラクティスを記載した画期的な文書であると述べました。

「このガイドラインに示された11の原則は、政策立案者や森林経営者が生物多様性の保全を改善し、森林を持続的に利用するために取るべき行動に関する重要な指針を与えてくれます。」

またサックル事務局長は、熱帯林の生物多様性保全のためのITTO/CBD共同イニシアティブ(日本語)について言及し、2010 年から 2020 年の間に 23 の熱帯地域の国々で 16 のプロジェクトを支援したと明らかにしました。同イニシアティブでは、中部アフリカでは400人以上の林業従事者に持続可能な森林経営のトレーニングを実施したり、アマゾンでは生態系に対して責任を持つ森林経営のフレームワークを用いて、生物多様性の保全を向上させたりしています。

熱帯生産林の生物多様性保全を促進するために必要なのは、資源の動員を増やすことだとサックル事務局長は述べました。

「生産林における持続可能な森林経営の導入を促進し、劣化した地域を回復させるためには、さらなる投資が必要です。」「これにより、保護区への圧力が軽減され、地域住民や国の経済に環境的・社会経済的な利益をもたらすことができます。持続可能な林業は、熱帯林に含まれる驚異的な生物多様性を保護するための最も強力な手段の1つです。」

サックル事務局長は、ITTOは現在の戦略的行動計画2022-2026(日本語)を含め、GFGsとGBFに完全に一致した存在であると述べました。