ITTOのプロジェクト、熱帯生産林の生物多様性保全に関する国連森林フォーラムのイベントで注目を集める

2023年5月17日

インドシナトラ。写真:Chheang Dany

2023年5月17日、横浜: これまでの数々のITTOプロジェクトによって、持続可能な森林経営が生物多様性の保全と生物多様性に関する世界目標の達成に重要な役割を果たすということが示されていると、シャーム・サックルITTO事務局長は、先週行われた国連森林フォーラム(UNFF)第18会合のITTO主催のサイドイベントで語りました。

このイベントのモデレーターを務めたサックル事務局長は、熱帯地方の何百万人もの人々が、生計を立てるために、森林の生産的用途での利用に依存していると述べました。したがって、森林を持続的に経営し、生物多様性の保全に最大限の貢献をすることが喫緊の課題です。

「私たちは、ITTOの資金提供による様々なプロジェクトで、木材やその他の商品・サービスの生産のために森林を利用することと、森林の持つ生物多様性の大部分を保全することの両立が可能であることを示してきました。」とサックル事務局長は述べました。

これらのプロジェクトは、「熱帯生産林における生物多様性保全と持続可能な利用のためのITTO/IUCN共同ガイドライン(ITTO/IUCN Guidelines for the Conservation and Sustainable Use of Biodiversity in Tropical Timber Production Forests)」(英語)の原則に従って設計されており、サイドイベントでもその一部が発表されました。

イベントでは、生物多様性条約(CBD)事務局のジャマル・アマギリジョバ氏が、2030年までに生物多様性の高い地域の損失を減らし、劣化した森林の30%を回復するとともに、森林における保護地域のネットワークを拡大することなどを掲げた昆明-モントリオール世界生物多様性枠組(日本語)の森林目標について概説しました。CBDと他の条約や国際機関との連携やシナジーを強化すること、また熱帯林の生物多様性保全のためのITTO/CBD共同イニシアティブ(日本語)のようなイニシアティブは、能力開発と教育のために不可欠であると、アマギリジョバ氏は述べました。

森林生物多様性の専門家であるイアン・トンプソン氏は、熱帯林生物多様性のためのITTO-CBD共同イニシアティブのアセスメント(日本語)からの主要な成果を発表しました。2011年に開始されたこのイニシアティブは、アフリカ、中南米、東南アジアの23カ国で実施されており、ベルギー、日本、スイス、米国、韓国、CBDから提供された1,340万米ドルの予算で実施されています。トンプソン博士は、国境を越えた地域や生産林業に関連する緩衝地帯を含む保護地域での戦略的かつインパクトのあるプロジェクトに焦点を当て、このイニシアティブを拡大する見通しについて述べました。また、限られた資金にもかかわらず、共同イニシアティブは非常に効果的かつ効率的であり、世界の森林目標すべてにプラスの影響を与えたというのが評価の結論であると、トンプソン博士は述べました。同氏は、小規模なプロジェクトであっても、生計を向上させることで地域社会に大きな利益をもたらす可能性があると語りました。

タイのカセサート大学のヨンユット・トライスラット教授は、タイ、カンボジア、ラオスの国境を越えた保護地域であるエメラルド・トライアングル保護林群(英語)の経営に関する長期にわたるITTOプロジェクトの成果の概要を説明しました。2001年に開始され2016年に終了したこのプロジェクトは、エメラルド・トライアングル内のさまざまな種の生息地の保護を強化しました。また、タイとカンボジアの国境紛争が減少したこと、保護区の職員と地域社会の協力、信頼、能力が向上したことなど、プロジェクトのさまざまな成果を紹介しました。

ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)のミルトン・カナシロ氏は、「ブラジル・パラ州における小規模農家のコミュニティ森林経営イニシアティブ:持続可能な生産のための協力的枠組み」と題したビデオ・プレゼンテーションを行いました。 彼は、木材生産において、公共教育のパートナーや低インパクト伐採のトレーナーのサポートによるコミュニティ森林経営のエンパワーメントが重要であると語りました。コミュニティ林業による持続可能な森林経営は、経済成長、地域コミュニティの発展、生物多様性の保全、持続可能な開発目標の達成に不可欠であると、カナシロ博士は述べました。

発表後のディスカッションでは、サイドイベント参加者から、生物多様性保全計画を含む持続可能な森林経営計画の実施、水産養殖の生物多様性評価に関する研究、保有権の保障を高めることを含む地域コミュニティの効果的な関与、民間投資の拡大が重要であるとの認識が示されました。

サックル事務局長は、議論を総括し、持続可能な森林経営における豊富な経験を持つITTOは、熱帯諸国と協力して開発ニーズと生物多様性保全に取り組むことを約束すると述べました。ITTOは、生産林が生物多様性を効果的に保全し、受け入れることができることを示す証拠を文書化しています。

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