COP15サイドイベント:熱帯林の生物多様性保全に関するグローバルな教訓を発表

2022年12月20日

ITTO-CBD共同イニシアティブの活動地域であるカンボジアのプレアビヒア保護林の近くを移動するアジアゾウ。写真:プノン・タマオ野生動物保護センター/森林局/ワイルドライフ・アライアンス

2022年12月20日、横浜:ITTO、生物多様性条約(CBD)、地球環境戦略研究機関(IGES)は、生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で共催したサイドイベントで、生計向上と生物多様性に関する成果をより良いものにするために、アマゾン、メコン、コンゴにおける森林景観の再生と持続可能な森林経営(SFM)に関するベストプラクティスを共有しました。

12月15日に開催されたサイドイベントでは、5人の専門家が講演し、マ・ファンオクITTOプロジェクトマネージャーがモデレーターを務めました。サイドイベントでは、2011年から実施され、最近2025年まで更新されることが決まった、熱帯林の生物多様性保全のためのITTO/CBD共同イニシアティブの成果を確認。また、保護区に設定された場所以外での効果的な地域ベースの保全手段である「保護地域以外で生物多様性の保全に資する地域」(Other Effective area-based Conservation Measures : OECMs)の保全効果についても検討しました。

「ITTO-CBDイニシアティブは、地域の生活と森林経営の改善、劣化した森林の回復、生物多様性の保全において、素晴らしい成功を収めています。」とマ博士は述べました。「ITTOは、熱帯生産林の持続可能な経営を含むOECMが、生物多様性の保全に重要な貢献をすると同時に、地元の人々が森林から確実に恩恵を得られるようにすると強く信じています。」

サイドイベントで、CBD事務局のジャマル・アマギリジョバ氏は、森林は世界の陸上生物多様性の多くを宿しているが、世界の森林面積は驚くべき速さで減少しており、その原因はとりわけ熱帯地域における森林破壊であると指摘しました。また、熱帯林の生物多様性保全のためのITTO-CBD共同イニシアティブの過去10年間の成果を賞賛し、生産ランドスケープにおける生物多様性の主流化への継続的な貢献を期待していると述べました。

基調講演では、森林の生物多様性の専門家であるイアン・トンプソン博士が、ITTO-CBDイニシアティブの実施中に得られた教訓について報告しました。

「共同イニシアティブは、愛知目標のうち6項目でプラスの効果を上げることに貢献しました。」とトンプソン博士は述べました。「本イニシアティブは、地球環境ファシリティ(GEF)の提案と連携して、さらに効果を高めることができる可能性が高いと言えます。」

IGESのプログラムディレクターであるアンドレ・メーダー氏は、ポスト2020生物多様性枠組におけるOECMの役割について語りました。

「陸域の生物多様性は保護区を越えて保全する必要があり、社会生態学的生産ランドスケープにおける生物多様性の持続可能な利用は、人間のウェルビーイングに不可欠です。」と述べました。

カルロス・ラザ大使によるビデオプレゼンテーションでは、アマゾン協力条約機構(ACTO)事務局長のマリア・アレクサンドラ・モレイラ・ロペス氏が、ACTO加盟8カ国が木材生産のためにアマゾンの森林を持続的に経営する上で直面している課題と、そのための共同の取組について概要を説明しました。

「生息地を効果的に保護し、生態系機能を維持するための制度的・地域的な力を構築するためには、政府、民間企業、学界を含む集団的努力が不可欠である。」と、同氏は述べました。

タイのカセサート大学森林学部のヨンユット・トライスラット教授は、カンボジア、ラオス、タイの国境にある重要な保護地域であるエメラルド・トライアングル保護林群について、共同経営の鍵となる要素について発表しました。この国境を越えた保全地域は、ITTO-CBDイニシアティブの一環である長期的なITTOプロジェクトの恩恵を受けています。

「国境を越えた協力は国境地帯の紛争を減らし、緩衝地帯に住む地元の人々の生活を向上させます。」とトライスラット教授は述べました。

中部アフリカ森林・環境研修機関ネットワーク(RIFFEAC)の地域コーディネーターであるクロード・カチャカ・スディ教授は、ITTO-CBDイニシアティブの一環としてITTOプロジェクトが支援するコンゴ盆地の林業トレーニングプログラムについて話し、SFMと生物多様性保全の専門能力を向上させたと報告しました。

「SFMと生物多様性に関する12のトレーニングモジュールの開発は、IUCN/ITTO生物多様性ガイドライン(英語)と相互に関与しており、この地域の多くの森林に関するトレーニングセンターで重要な参考資料として良い影響を与えています。」とスディ教授は述べました。

シャーム・サックルITTO事務局長は、閉会の辞として、ITTO-CBDイニシアティブの実施から得られた教訓を共有した講演者に感謝し、ITTOプロジェクトの成功は事業地を越えて再現することが可能であると述べました。

「熱帯林の持続可能な経営について、すべてのステークホルダーと協力し続ける必要があります。」とサックル事務局長は語りました。「生物多様性を保全し、地域住民の生活向上を可能にするためのSFMへの持続可能な投資は、生物多様性のグローバルな枠組みの達成に向けて非常に重要です。」

カナダのモントリオールで開催された生物多様性条約第15回締約国会議は、2022年12月19日に閉幕しました。

サイドイベントのプレゼンテーションのダウンロードはこちら(英語)