世界の先住民の国際デーを祝して―熱帯林の管理者たち
2022年8月9日

マレーシア、サラワク州の先住民族コミュニティの女性。ITTOプロジェクトの一環として、プロンタウ国立公園の緩衝地帯経営のために、地元コミュニティと協力してラタン・ヤシの皮を使った作業をしている。写真:P. Chai
2022年8月9日、横浜:「世界の先住民族の国際デー」に、ITTOは森林の土地と資源に関する地域コミュニティと先住民族の所有権、支配権、慣習上の権利と役割を完全に認め、支援することを改めて表明します。本国際デーは、伝統的知識の保存と伝達における先住民族女性の役割(英語)を今年のテーマとしています。
ITTOの運営に関する条約である「2006年の国際熱帯木材協定」では、組織の目的を達成するために、先住民族と地域コミュニティの能力を高めることが重要と認識されています。またITTOは、熱帯林業に関わる先住民族の女性たちを全面的に支援しています。
シャーム・サックルITTO事務局長は、「先住民族の女性は熱帯林業において、伝統的な森林知識の管理者として、また多様な林産物の収集者や利用者として、重要な役割を果たしています。」と語りました。
サックル事務局長は、特に、持続可能な開発目標(SDGs)の1「貧困をなくそう」、5「ジェンダー平等を実現しよう」、12「つくる責任、つかう責任」、13「気候変動に具体的な対策を」および15「陸の豊かさも守ろう」の達成には、先住民族女性の役割を促進することが重要と指摘。「ITTOプロジェクトの中で先住民族が関与するものには、女性の役割とジェンダー問題に特に注意を払っています。」と述べました。
例えば、ITTOプロジェクト(英語)は、グアテマラのチマルテナンゴ県で、先住民族のコミュニティ企業であるパツン女性グループの発展に寄与しました。同グループは、ITTOの支援により、松葉を持続可能な方法で収穫し、それらをもとにノベルティ製品を製造するという新しい事業を展開。グループのメンバーであるミリアム・コイは、「私にとって、松葉を使った作業は新しい経験です。また経済的な収入をもたらすので、女性たちや家族にとって大きな助けになっています。」と語りました。
ITTOプロジェクトは、これまで長い間、先住民族を支援してきました。
グアテマラの別のITTOプロジェクト(英語)では、西部高地の先住民族の参加を確保し、コミュニティ林での持続可能な経営手法を開発し、森林に対する圧力を軽減する支援を行いました。参加者の40%を女性が占めていた同プロジェクトでは、苗床管理の能力向上も促進。プロジェクトの下で設立されたネバジ市の森林苗床は、破壊された森林約32ヘクタールの再生を可能にしました。
マレーシアのサラワク州では、複数のITTOプロジェクト(英語)において、ペナン族やイバン族と協力して、プロンタウ国立公園周辺で生物多様性の保全、生計の向上、新しい保護区管理方法の開発に取り組みました。果樹の栽培、漁業の開発、販売用の手工芸品の製造、住宅と水供給インフラの改善に関するペナン族の能力を強化することが、プロジェクトの目的です。また、林産物の長期的な供給のために経営すべき3つの共同森林を定めました。
西アフリカのITTOイニシアティブ(英語)では、6カ国(ベナン、コートジボワール、ガーナ、リベリア、マリ、トーゴ)で、劣化した森林土地の再生への小規模森林保有者の参加を推進しています。小規模森林保有者が直面する課題と機会の分析より、特に、土地保有権を確保するためのベースラインの作成、インセンティブ・支援スキーム・金融メカニズムの開発、および森林教育に関する能力開発を推奨しています。
『ITTO環境社会マネジメントガイドライン』(英語)は、セーフガードとリスクマネジメントをITTOプロジェクトの実施プロセスに組み込むための体系的な手順を提供するもので、森林の土地と資源に対する地域社会と先住民族の権利を認識し支援するための原則が含まれています。