国際森林デー2022 持続可能な方法で生産された熱帯木材の選択 – 人と地球のために

2022年3月21日

持続可能な熱帯木材を選択することは、地球が長く健康で活力に溢れるため、森林に依存するコミュニティのために極めて重要です。写真撮影: W. Cluny

横浜、2022年321日:国際森林デーにあたってシャーム・サックルITTO事務局長は、熱帯林と熱帯木材製品は、喫緊の気候変動課題に対策が取られ、社会で大きく不足している自然資源が供給され、山村地域が持続可能な方法で発展する機会を得るために不可欠です、と言葉を寄せました。

「生物多様性、気候変動緩和と適応への寄与といった熱帯林が持つ価値はよく知られていますが、さらに、熱帯林に依存する何百万人もの人々に生計をもたらしてもいます。」シャーム・サックルITTO事務局長はこのように話しました。

「しかし、持続可能な林業を主体にした場合、健全な地球の探求において熱帯木材産業が果たす重要な役割についてはあまり知られていません。持続可能な方法で生産された熱帯木材製品の利用は、環境に対する意識を持つ消費者の責任ある選択と言えます。」

耐久性に優れた点、審美性が高い点、頑丈である点など、熱帯林には素晴らしい特性が多数あります。建築物(屋内・屋外用)や家具といった長期年数の製品や設備に使用する場合、熱帯木材は何十年、何百年にもわたり炭素を貯留し、気候変動の緩和を助けます。また、熱帯木材製品は、汚染物質を発する資材や環境負荷の大きい資材に代わって使用されることで温室効果ガスの削減にも寄与します。熱帯木材が持続可能な方法で収穫されれば、森林に付加価値を与え、同時に森林保全もなされ、森林が生育する国が大いに必要とする収益をもたらし、特に熱帯地域において持続可能な森林経営(sustainable forest management:SFM)の実践を可能にします。

しかし、熱帯木材及び熱帯木材製品は、金属、コンクリート及びプラスチック、そして熱帯地域以外の木材と市場シェアの争奪戦から抜け出せない状態です。熱帯林業が森林劣化と森林減少の原因であるとされ、熱帯林業セクターの参入を阻んでいる市場もあります。主に先進国の消費者の多くには、熱帯木材と聞くと森林劣化と森林減少というイメージが浮かぶようです。

「『人と地球のための木材の選択』という国際森林デー2022のテーマは、熱帯木材を持続可能な方法で収穫することで森林は減少しないというメッセージを断言する絶好の機会です。」サックルITTO事務局長はこのように述べました。「新型コロナウイルス感染症の収束後および現在の世界的混乱の中、持続可能なより良い復興を遂げ、持続可能な木材生産と特に消費を含めた持続可能な林業の役割を一層強化することがこれまで以上に必要です。」

SFMは、常にITTOの事業の中核を成してきました。木材が合法的かつ持続可能な方法で生産されるようにすることが不可欠です。SFMは、林産物や森林によるサービスの途切れない提供を可能にし、同時に、森林の様々な価値・生産性・強靭性・再生能力を維持し、森林土壌・水・炭素貯留・生物多様性を保全し、食料の安全保障および森林に依存する住民の文化と暮らしを支え、森林の利用から生じる恩恵が公平に分かち合われるようにします。

SFMは、持続可能な開発目標(SDG)12(つくる責任 つかう責任)の達成に極めて重要な要素です。サックル事務局長は、合法かつ持続可能なサプライチェーンは、森林資源の管理から加工、販売促進、消費に至るまで、森林事業が合法性と持続可能性の原則を守るようにするもので、SDG12達成にふさわしい手段です、と述べました。

さらに、「合法かつ持続可能なサプライチェーンは、環境面・社会面の負の影響を最小限に抑え、汚染、労働者待遇、ジェンダー平等、生物安全保障(バイオセキュリティ)、社会的に疎外された人々、生物多様性、土地利用といった課題に対処します。」と話しました。「ITTOは独自の合法かつ持続可能なサプライチェーンプログラムを通じてこれを促進しています。」

ITTOは、多数のプロジェクトや活動に資金協力を行い、熱帯木材と木材製品の持続可能な生産および販売を促進してきました[i]

「市場参入を可能にし、持続可能な生産に必要なバランスを保つことで持続可能な消費へと重点を移行することが、熱帯林業の存続と未来のために非常に重要です。」とサックルITTO事務局長は述べました。

環境に負荷をかける資材の代わりに持続可能な方法で生産された熱帯木材を選択することは、地球が長く健康で活力に溢れるために極めて重要です。責任ある選択を促していくには、あらゆる規模でのあらゆるアクターによる取組の強化が求められます。ITTOは、加盟国やパートナー機関とこれに向けて引き続き協力していきます。


[i] 例えばグアテマラでは、ITTOのプロジェクト(英語)が、木材を利用した台所用品を製造する事業や松葉を使った販促品を製作する事業をはじめとして、森林の住民による合法かつ持続可能なサプライチェーンを備えた森林主体型ビジネスの開発の支援を行った。この2つの新規事業は増収に成功し、他企業がSFMを導入するきっかけを作った。

フィリピンでは、ITTOのプロジェクト(英語)が、森林ガバナンス向上のために木材追跡システムを開発し、木材加工作業に透明性を付加し、投資家による木材セクターの信用向上に寄与した。

ITTOのフェローシップは、1,400人を超える若者や中堅研究者による合法かつ持続可能な熱帯木材サプライチェーンの様々な側面におけるキャリア開発機会の開拓を支援してきました。フェローの一人、カメルーン出身のジャンーボスコ・サハ・シンダ氏(英語)は、廃棄おがくずと再生ポリ塩化ビニルを利用した有望な合成木材製品を調査した。

ITTOは、オンライン講座(英語)を通じて、実務に携わる人々や一般の人々が合法かつ持続可能な熱帯木材サプライチェーンについて学び、情報を得るための支援を行っている。最終的には、本講座およびこの他に実施している教育の取組によって、持続可能な木材の生産と供給にかかるキャパシティ・ビルディングを行い、消費者による熱帯木材製品のサプライチェーンの支援を促していく。

関連するSDGs

持続可能な木材製品の消費が増えれば、経済面、社会面、環境面で多くの恩恵がもたらされます。