2020年は熱帯丸太の生産、輸入共に減少 - 世界の木材状況に関する最新評価を発表

2021年8月30日

S横浜の集材場に置かれた製材品。写真撮影:J. Claudon/ITTO

横浜、2021830日:本日ITTOが発表した「世界の木材状況に関する隔年評価報告書2019~2020(Biennial Review and Assessment of the World Timber Situation 2019–2020)」によると、主に新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、2020年の熱帯丸太の生産は3パーセント、輸入は11パーセント減少しました。ITTOの旗艦報告書である本書では、世界73カ国における第一次熱帯木材製品および第二次加工木材製品の生産と貿易に関するデータを掲載しています。

本報告書の主な結果は次の通りです:

  • 新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が2020年に熱帯木材産品の生産、消費、貿易に及ぼした影響は、国の感染状況や感染症拡大の抑制・緩和対策により、様々である。主な熱帯木材産品市場における需要もまた、感染症拡大以前の元々の経済状況や政府の感染症対策の成果度合いにより国毎に差異がある。
     
  • ITTO加盟国における総熱帯丸太生産量は2019年には前年をわずかに上回る2億9,400万立方メートル(㎥)で、この4分の3近くがブラジル、インド、タイ及びベトナムの3カ国によるものであった。2020年には3.1パーセント下がり2億8,500万㎥であった。新型コロナウイルス感染症の拡大が収穫作業や輸送可能量に影響し、生産国の大半がこれに対して制限措置を取ったためである。労働面及び物流面での制約は多くの生産国で2020年半ばまでに緩やかとなった。
     
  • ITTO加盟国による熱帯丸太の輸入量は2014年をピークに減少を続けている。2019年には前年比13パーセント減となる1,450万 m3、2020年にはこれをさらに16パーセント下回る1,220万 m3で、ITTOが評価を開始した1987年以来最低を記録した。国際的に取引された熱帯丸太の大半は中国とインドに渡っており、2019年にはこの2カ国が熱帯丸木総輸入量の83パーセント、2020 年にはおよそ81パーセントを占めた。
     
  • 2020年の中国による熱帯丸太輸入量は11パーセント以上減り、860万m3であった。原材料の供給制限、コンテナ運賃の高騰、2020年第一四半期の加工活動の縮小、輸出市場での加工木材製品需要の長期に渡る落ち込みを受けたためである。しかし、第一四半期末までに新型コロナウイルス感染症の封じ込めに成功し、中国経済は他国に比べ安定した経済回復を見せ、2020年後半には建設活動が再び活発となり輸入も再開した。
     
  • パプアニューギニアの2020年の熱帯丸太輸出量は290万m3で、前年に比べ23パーセント減ったものの、2020年の世界最大の熱帯丸太輸出国となった。主な輸入国は中国であった。2020年に発動された輸出制限及び2025年までに丸太輸出を終了するという政府の意向を受け、今後10年間のパプアニューギニアの丸太輸出量は減少し続ける見通しである。アジア太平洋地域からの丸太の入手が困難になるため、アフリカや、最近では中南米といった別の供給元に熱帯丸太の需要が集中する。2020年の中南米の輸出量は2016年の2倍に迫る220万m3に増大している。増加分のほとんどはブラジルから輸出されたもので、同国の2020年の輸出量は140万m3であった。2018年以前のブラジルの熱帯丸太輸出量は少なく、主にユーカリ種のものであった。
     
  • 2020年の熱帯製材品の輸出量は10パーセント減となる920 万m3 であった。新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に伴う需給の変化を反映したものである。最大の輸入国は中国で、輸入量は2019年比で12パーセント減少したものの、他国を大きく引き離しており、ITTO加盟国全体による輸入量の61パーセントを占めた。
     
  • 東南アジアの合板は、生産量・輸出量共に2020年も引き続き減少した。主に、インドネシアとマレーシアで輸出用貨物コンテナが不足したほか、新型コロナウイルス感染症拡大により合板工場への丸太供給量と労働力も不足したため生産縮小を余儀なくされたことが原因である。ベトナムの2020年の輸出量はそれ以前の傾向に反し、熱帯合板は32パーセント増となる150万 m3に増加した。ITTO加盟国による熱帯合板の輸出量は、最低であった2016年以降増加を続け、2019年には2016年比で24パーセント伸び680万m3に達した。しかし、2020年には再び減少に転じ580万m3であった。貿易形態は主要な市場毎に異なり、輸入量は日本では大幅に縮小したが、米国では新型コロナウイルス感染症の第一波収束後の住宅着工・改修件数の上昇により増大した。
     
  • 本隔年評価報告書最新版では2010年から2020年までのインドの木材需給の概要及び2030年までの予測を掲載している。
本隔年評価報告書に掲載のデータはITTOのオンライン統計データベースでも公開しています(1990年から2020年まで)。本データベースは、熱帯木材や第一次木材産品(産業用丸木、製材品、ベニヤ、合板)貿易の長期的な動向や木材生産と加工における重要な変化を分析するのに有用なツールです。

「世界の木材状況に関する隔年評価報告書2019~2020」では、世界の熱帯木材の総貿易量や非ITTO加盟国の動向もまとめています。

「世界の木材状況に関する隔年評価報告書2019~2020(Biennial Review and Assessment of the World Timber Situation 2019–2020)」本文および報告書中の図表とグラフはこちらのウェブサイトからダウンロード可能です(英語):https://www.itto.int/annual_review/