調査:世界の課題解決には森林教育の強化が必要

2021年6月25日

ITTOは現場プロジェクトやフェローシップを通じて実践的な教育や訓練を支援し、熱帯林業分野の専門知識の強化に努めています。写真撮影:DGFRN(ベナン)

2021年624日:多くの国々では小学校から大学に至る全教育レベルで森林教育が不十分 – 国連食糧農業機関(FAO)、ITTO、国際森林研究機関連合(IUFRO)が他の国際機関や地域機関の支援で実施した地球規模調査でこれが明らかになりました。

森林教育に関する地球規模調査(英語)では、森林教育改善のための一層の取組が世界各地でなされなければならないことが判りました。森林教育は改良を重ねており、大半の地域で森林教育修了者の数、多様性、能力ともに向上が見られていますが、南半球の途上国の多くでは森林教育資源は不十分であるか限られています。

さらに、小学校と中学校で森林や木に関する効果的な教育が行われず、森林に関連する学問を続け、キャリアを目指すような生徒の意欲を引き出せていない地域がほとんどです。また、卒業生は森林や木の経営が持つ文化的・社会的側面についてあまり理解していない場合が多いのです。多くの地域では、革新的な教授アプローチ、デジタルツールやオンライン学習が適切に活用されておらず、学生をグリーンジョブ部門での起業や就職に備えさせる森林教育は世界のほとんどの地域で十分ではありません。

国際森林教育会議(2021622日~24日開催)

森林に関する地球規模調査の結果は、3日間の日程で行われ本日閉会した国際森林教育会議(英語)で発表されました。本会議では、森林や木が世界森林目標(Global Forest Goals)及び持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)の達成に十分に寄与し、人 – 自然 – 森林の間に広がる隔たりを縮めるにあたっての重要性が話し合われました。本会議はITTO、FAO、IUFROが開催し、ドイツが資金協力を行いました。

会議の参加者は、森林教育の現状を議論し、森林教育の強化にあたっての主な課題、ニーズ、機会及びイニシアティブ関する話し合いの中で自身の経験や見解を共有しました。そして、森林減少・森林劣化を軽減し、生態系を保護・再生し、気候変動の緩和・適応に取組み、SDGsの達成に向けて森林や木が持てる力を発揮させるには確固たる森林教育や研修プログラムが極めて重要である点で一致しました。

マリア・エレナ・セメドFAO事務局長による開会挨拶では、「森林と木の持続可能な経営はSDGs達成において非常に重要です。森林減少と森林劣化を食い止め、持続可能な方法で森林資源を管理しなければなりません。」と述べられました。「このためには、森林経営者、従事者、政策決定者、科学者、教育者への十分な訓練が必要です。さらに、森林に関して地域住民と先住民が有す豊富で貴重な知識とスキルも無くてはなりません。将来の森林の担い手を輩出する全学校教育レベルの強化に早急に努める必要があります。」

本会議の開催中、ITTOは、森林教育改善に向けた国際的な取組の一環として無料のオンライン学習講座(英語)を開講しました。本講座は、起業家、林業従事者、政府機関職員及び学生が合法かつ持続可能な木材サプライチェーンを理解するのに役立てられます

「私たちの生活において自然がいかに重要かということを教えてくれるのは森林です。」スティーブ・ジョンソンITTO事務局長代理はこのように話しました。「今後の森林の持続可能性及び生産性を確保し、人々が持続可能な林業の特徴を理解するよう見聞を広めるための森林経営に関する教育や訓練も重要です。」

ジョンソン博士は、ITTOは、熱帯地域で森林に携わる若手・中堅両方の人材のより高度な職務経験の蓄積を30年近く支援している画期的なフェローシップ・プログラム等を通じ、熱帯地域全体の森林教育や訓練に引き続き寄与していくと述べました。

「重要なフェローシップ・プログラムへの資金協力が増えれば、熱帯林業分野での実務研修、専門能力開発、プロとしての大成の機会を大幅に広げるでしょう。」とジョンソン博士は述べました。

ジョン・パロッタIUFRO会長は、世界全体で森林教育を強化する必要がある点を確認し、「IUFROは、林業関連のカリキュラム改善を進め、革新的で有効な教授アプローチや技法を促進し、全世界の森林教育で不足する部分を補う取組を支援します。」と話しました。


行動要請(Call to action)

席上、会議出席者は、森林教育に関する国際的行動要請(英語)への支持を表明しました。この行動要請の目的は、全教育レベルにおける森林学習改善のために政策や戦略を強化し、林業職の社会的重要性についての認識を高め、森林に関連する伝統的な知識や先住民の知識の理解を深める必要について啓発することです。会議の出席者以外の利害関係者やアクターも行動要請への支持をオンライン(英語)で行うことができます。


森林教育パートナーシップ(Forest Education Partnership)の設立

国際森林教育会議の3日目、森林に関する協調パートナーシップ(Collaborative Partnership on Forests(英語):CPF)による森林教育に関する共同イニシアティブが立ち上げられました。このイニシアティブの目的は、行動を起こし、啓発と支援を拡大し、森林教育に向けたパートナーシップを発展させることです。同イニシアティブの主な取組として、森林教育パートナーシップ(Forest Education Partnership)の設立、森林教育に関する情報普及・ネットワーク構築に資するオンラインプラットフォームの開始、森林教育カリキュラムと訓練体制の改善に向けた活動、若年層が森林関連のキャリアを目指すよう促す世界的な広報キャンペーンの実施が挙げられます。


国際持続可能性開発研究所(International Institute for Sustainable DevelopmentIISD)のSDG知識ハブによる「森林教育に関する革新(ルネッサンス)要請Call for a Renaissance in Forest Education」(英語)を読む

 

関連するSDGs

会議の参加者は、森林教育の現状を議論し、森林教育の強化にあたっての主な課題、ニーズ、機会及びイニシアティブに関する話し合いの中で自身の経験や見解を共有しました。

森林減少・森林劣化を軽減し、生態系を保護・再生し、気候変動の緩和・適応に取組み、SDGsの達成に向けて森林や木が持てる力を発揮させるには確固たる森林教育や研修プログラムが極めて重要です。

森林教育は、良好な環境とSDGsの達成に向けて森林や木が持てる力を十分に発揮するための助力となり得ます。