年次市場ディスカションパネリスト:新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が熱帯木材貿易に及ぼした影響は何年も残る

2021年11月30日(火)の主な協議内容
ITTOの年次市場ディスカッションの登壇者によると、輸送コンテナ不足と運賃の高騰で熱帯木材産業は困難に直面しているとのことです。写真撮影:グアテマラ国立森林研究所 (INAB)

2021年12月1日(水):今週オンライン開催されている第57回国際熱帯木材理事会(ITTC)の会期中に行われた2021年年次市場ディスカッション(Annual Market Discussion)の登壇者は、新型コロナウイルス感染症の拡大とこれによる経済への副次的な影響は貿易が行われている主要地域全体の熱帯木材取引にも大打撃を与え、今後長期に渡って問題が派生しかねないとの見方をしました。

年次市場ディスカッションはITTOの貿易指紋グループ(Trade Advisory Group:TAG)が実施しました。新型コロナウイルス感染症拡大渦の熱帯木材の製造及び取引における課題を中心に話し合い、熱帯木材セクターの短期的な見通しを探りました。このディスカッションは一般公開されており、世界各地から7名が登壇しました。

貿易諮問グループのコーディネーターを務めるバーニー・チャン氏(右下)が第57回国際熱帯木材理事会(ITTC)第2日目に開催された年次市場ディスカッションの開会挨拶を行う

ブラジルに所在するSTCPコンサルティング社の代表イバン・トマセリ教授によると、2021年の中南米の木材産業は、生産は継続して行われ輸出も増えたことから、新型コロナウイルス感染症をうまく乗り切ったと言えるとのことです(中南米の生産者の大多数派輸出に大きく依存しています)。しかし、輸送コンテナの不足と高騰(新型コロナウイルス感染症拡大以前の価格に比べ10倍というケースも)、港や工場での備蓄、注文取消しといった深刻なサプライチェーン上の問題が起きています、とトマセリ教授は述べました。中南米ではワクチン接種のペースが遅い国があり、新型コロナウイルス感染症の影響は今後3~4年続くと予測しました。

中国国立森林製品産業連盟(China National Forest Products Industry Association)のウー・シェンフー博士は、新型コロナウイルス感染症の流行により、人件費、物資、エネルギー及び輸送といった中国の木材製品生産者が被る費用が大幅に値上がりました、と話しました。さらに、同感染症によって通商障害が悪化していることや供給業者と購入業者との間のコミュニケーションが低下したことがコスト高に重なり、問題を深刻化させています。ウー博士は、熱帯諸国のほとんどは現在丸太の輸出を禁止しており、中国の製造業者が十分な原材料を確保することができず、大きな課題となっている点に留意しました。同感染症拡大を機に、中国国内市場向けの「グリーンな(環境負荷が少ない)」製品の開発及びエネルギー消費量削減や資源利用の一層の効率化を目指す技術革新が進みました。一帯一路(Belt and Road Initiative)構想の一環として、中国とヨーロッパを結ぶ義烏(浙江省)-欧州貨物鉄道が現在年間1,000本以上運行しています。2020年中は1,200本運行し、木材製品を含む様々な生産物を積んだ65,000ものコンテナを運搬しました。

国際木材製品協会(International Wood Products Association:IWPA)のブラッドリー・A・マッキンリー最高経営責任者(CEO)は、2021年、北米では在宅勤務の増加や都市からの人口流出により、住宅の建設、修繕、改修が増え、輸入木材製品の需要が非常に高くなっています、と述べました。経済活動が回復したことから、労働者不足と賃金の値上げが発生し、物価上昇率はここ30年以上で最高を記録しています。他の地域と同様、北米の木材製品輸入業者もコンテナ不足、在庫水準の低下、コスト高といったサプライチェーン上の課題に直面し、この障害はしばらく続くと推測しました。

国際熱帯木材技術協会(ATIBI)のブノワ・ジョベ-ドゥバル最高経営責任者は、コンゴ川流域の熱帯木材産業が直面している長期的な課題として、収穫された樹種の多様化、利用頻度の低い樹種の販売促進につなげるための産業化、物流改善、税制改革、専門分野に関する研修の促進、森林・産業に関する研究の強化、資金調達手段へのアクセス拡大が必要であると話しました。ジョベ-ドゥバル氏は、コンゴ川流域諸国の政府は自国内での加工作業の振興のために丸太の輸出を制限しつつありますが、これには投資と研修が必要です、と述べました。コンゴ民主共和国とガボンで発効した新たな森林法は、石油セクターに既存する同様の措置に基づく「生産分与(shared production)」の概念を取り入れていますが、これが林業でどのように機能するかは現時点では不明であるとしました。さらに、熱帯木材に否定的なイメージを抱く市場があることを示す一例として、2024年に開催予定のパリ五輪に関連する建築物に熱帯木材を使用することが禁止されている点にも触れ、ヨーロッパの購入業者や一般の人々とのコミュニケーションや販売促進活動の改善に向けてATIBIが行っている取組を紹介しました。

アセアン家具産業協議会(ASEAN Furniture Industries Council)のアーニー・コー議長はアセアン地域の家具産業の動きについて報告し、新型コロナウイルス感染症が拡大する間、2020年上半期には同感染症の影響への危惧が高まり、同年下半期には需要と生産コストの上昇が起きるなど、激しく変動しました、と話しました。2021年初頭には家具生産がさらに増えましたが、運賃の著しい値上がりといった物流面での問題が発生し、多くの家具工場は輸送コンテナが利用できないために完成品を倉庫に保管し続けなければなりませんでした。2021年半ばには、ロックダウン(都市封鎖)が行われたアセアン諸国があり、生産は落ち込みましたが、現在は再び増加に転じています、と述べました。

コー氏は、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、顧客が地元で製品を調達することで自国の地域のサプライチェーンの強靭性強化を努めるようになれば、家具市場の地域化につながる可能性を示しました。さらに、人の移動が再び活発になり、住宅の修繕に対する出費が少なくにつれ、現在の高い水準の家具需要が安定することに期待を示しました。

インドネシア環境林業省(Ministry of Environment and Forestry:MOEF)のシギット・プラモノ氏は、同国の合法性保証・証明システムであるSVLK(Indonesian Timber Legality Assurance System)に関する発表を行いました。このシステムは、20年に渡る協力作業を経て整備されたものです。2021年10月時点で森林主体企業5,600社及び3,000万ヘクタール相当の国有生産林がSVLKシステムによる認証を受けています。さらに、2013年以降、SVLKシステムの下で150万を超える合法性証明書が発行され、これによって775億ドル相当の木材製品が輸出されました。この他、丸木にかかる付加価値税の撤廃、ベニアにかかる輸出関税の引き下げ、役所での手続きの簡素化等、インドネシア政府がコロナ渦で実施した木材製品産業支援の取組を発表しました。新型コロナウイルス感染症の拡大のため、2020年の大部分の木材輸出量は減少しましたが、2021年には再び増加に転じています。

国連貿易開発会議(United Nations Conference on Trade and Development:UNCTAD)のジャン・ホフマン氏は、海上輸送貿易の最近の動向を発表し、運賃がしばらくは高値に止まることが予想される理由を次のように述べました。1) 新型コロナウイルス感染症は未だ収束しておらず、ソーシャル・ディスタンスやその他の規制が必要であることから、船舶は港での長期間の停泊を余儀なくされるため、2)建造される船舶が減少しており、シッピング・サイクルが起きるため、3) 海運会社間の合併が進んでおり、競争が減っているため、 4) 運送からの炭素排出量削減が求められているが、転換期にはコストの引き上げが予測されるため、5) (温室効果ガス排出量削減のために)船舶が速度を落とすならば、船舶数を増やす必要があるため、6)国際的な規制環境(特に排出量や炭素価格に関わりのあるもの)が不透明であることから、リスクプレミアムが拡大するため。ホフマン氏は、模擬実験では、運賃の高騰が小島嶼開発途上国(Small Island Developing States:SIDS)の消費者に最も影響を及ぼすことがわかりました、と述べました。

続いて、ホルヘ・マルー氏(ペルー)は、運賃の高騰と物流にかかるその他の問題は、輸出国が自国の木材製品に付加価値をつけ、自国の市場を拡大させる必要があることを示していると述べました。マウロ・リオス氏(ペルー)は、輸送コンテナ不足と運賃の値上がりに最も影響を受ける輸出製品を特定することが有益であるとし、2022年のITTO活動の中でこの問題への対処がなされるよう提案しました。アリシア・グライムス氏(米国)は、登壇者から新型コロナウイルス感染症が投じた課題への様々な政府対策が述べられたこと、及びどの政府対策が有効であったか民間セクターの話を聞くことができれば興味深いでしょう、と話しました。

2021年年次市場ディスカッションの発表資料はこちら(英語)から閲覧できます。

「木材の収穫で森林は減少しない」
貿易諮問グループ(Trade Advisory Group)がITTOに対してこの周知を要望

2021年年次市場ディスカッションと併せて貿易諮問グループ(Trade Advisory Group:TAG)が開催されました。同グループを代表して、バーニー・チャン氏は、グラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)は、木材貿易が森林減少につながっているという誤った認識を流布させるのではなく、持続可能な方法で生産された熱帯木材製品に対する需要を推進するべきであるという声明を発表しました。

同声明では、「私たちは、COP26で採択された行動喚起を一般の人々が熱帯産の木材製品の利用をやめる手段として捉えて欲しくはない。熱帯林及び熱帯林貿易における国際社会のリーダーとしてのITTOに対し、木材の収穫で森林は減少しないと堂々と明言して欲しい。」と述べられています。

同声明ではまた、森林の減少及び劣化に関連した物品や製品について、欧州連合(European Union:EU)が提案した新たな規制に対するTAGメンバーの懸念が表明されています。同声明の中でこの規制案への様々な懸念が挙げられ、EUがITTO加盟国・事務局、各国及び国際的木材貿易機関と関わりを持ち、規制案が「実務面で適切であり現場で機能し得るものである」よう努めて欲しいと要請しています。さらに、TAGはITTOに対し、同規制案に関するEUとの協議を要請しています。

TAGは、ITTOの政策活動やプロジェクト活動について助言を行うことを目的に2000年に設立されました。熱帯木材貿易に関心があれば、熱帯林産業の代表者、木材輸出業者・輸入業者、木材貿易・産業コンサルタント、貿易・産業協会など、誰でも参加できます。

TAGの声明(英語)はこちらで閲覧できます。

各委員会は経済、統計、市場、森林産業にかかる活動をレビュー

今次ITTCの第2日目には、経済学・統計・市場に関する委員会(Committee on Economics, Statistics and Markets:CEM)及び林産業に関する委員会(Committee on Forest Industry:CFI)が共同で会合を開き、フィールド活動や政策活動をレビューしました。熱帯木材及び熱帯木材製品への市場でのアクセス、森林及び木材認証、FLEGT独立市場監視(FLEGT Independent Market Monitor(英語))の市場分析といった活動が議論されました。本会合での発表資料はこちら(英語)から入手可能です。

ITTCは毎年開催され、持続可能な熱帯林経営の促進と持続可能な方法で生産された熱帯木材の貿易の促進を目指して幅広い事項が議論されます。

国際持続可能性開発研究所(International Institute for Sustainable Development:IISD)リポーティングサービスによるITTCの報告(毎日更新、英語)は次のウェブサイトにて閲覧できます:https://enb.iisd.org/ITTC57-International-Tropical-Timber-Counci

イバン・トマセリ教授(上)が第57回国際熱帯木材理事会(ITTC)第2日目に開催された年次市場ディスカッションで新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が中南米の木材産業に及ぼした影響について発表
ATIBTのブノワ・ジョベ-ドゥバル氏が第57回国際熱帯木材理事会(ITTC)第2日目に開催された年次市場ディスカッションにて持続可能な経営下にある熱帯木材が抱える課題と熱帯林の今後について発表
アーニー・コー氏(右下)は第57回国際熱帯木材理事会(ITTC)第2日目に開催された年次市場ディスカッションにてコロナ渦におけるアセアン諸国の家具生産と輸出について発表
シギット・プラモノ氏(右)が第57回国際熱帯木材理事会(ITTC)第2日目に開催された年次市場ディスカッションにてインドネシアの合法性認証システム及び政府によるコロナ渦の木材産業支援措置について発表
ジャン・ホフマン氏(右)が第57回国際熱帯木材理事会(ITTC)第2日目に開催された年次市場ディスカッションにて輸送コンテナ問題について説明
アリシア・グライムス氏(米国)が第57回国際熱帯木材理事会(ITTC)第2日目に開催された年次市場ディスカッションにて発言
日本の福田淳氏(右下)第57回国際熱帯木材理事会(ITTC)第2日目に開催された経済学・統計・市場に関する委員会(CEM)及び林産業に関する委員会(CFI)の合同会合にて発言