2021年のフェローシップ授与者18名がITTCにて決定へ

2021年12月1日(水)の主な協議内容
新型コロナウイルス感染症対策の規制が緩和された時期、コスタリカ・トゥリアルバ(Turrialba)にてITTOフェローのアンヘリーナ・バレーロ氏が保全の生物学的・社会経済的基礎をクラスメートと議論している。写真撮影:A. Barrero

2021年12月2日(木):2021年のITTOフェローシップ選考委員会(ITTO Fellowship Selection Panel)がオンラインで招集され、第57回国際熱帯木材理事会(ITTC)でITTOフェローシップを授与する18名を推薦しました。本年の授与者(フェロー)候補はアフリカ地域から7名、アジア・太平洋地域から6名、中南米・カリブ海地域から5名で、全授与候補者のうち7名が女性です。

今週オンライン開催されている第57回ITTCの第3日目、事務局のシャーム・サックル氏がITTCに対してITTOフェローシップ選考委員会の報告書を発表しました。ITTCは同委員会の推薦を検討し、閉会前までに授与者を最終決定します。フェローシップの付与総額はおよそ12万7,000USドルです。

ITTOは加盟国の熱帯林業や持続可能な熱帯林経営、熱帯木材の効率的な利用および加工、熱帯木材の国際貿易に関する経済情報の改善といった関連学問領域における人材開発を促進し専門知識を強化するために、フリーザイラー・フェローシップ基金(Freezailah Fellowship Fund)を通して奨学金を提供しています。1989年に立ち上げられたITTOフェローシップ・プログラムの付与総額は1,440万USドルに上り、49カ国から1,400名を超える若者や中堅研究者がキャリア開発のチャンスを得ました。主な協力機関は、日本、米国、オランダ及びオーストラリア政府です。

フェローシップの経験をフェローが自ら綴った記事がITTOのニュースレターである「熱帯林ニュースレター(Tropical Forest Update:TFU)」の毎号に掲載されます。最新号(TFU 30 No.2)では、コートジボワールのシリル・バイ-ティッセ氏が、トンキピ州(Tonkpi)山岳地域でリモートセンシング(遠隔計測)と地理情報システム(GIS)を用いて水食感度を地図上で表すバイ-ティッセ氏と仲間の活動について記しました(記事は英語)。今月後半に発行予定のTFUの次号では、コロンビアのアンヘリーナ・バレーロ氏(写真)が、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行で計画変更を余儀なくされたものの、見事に開発と保全の実践分野で修士号を取得した経験を書き記します。

年事業計画(Biennial Work Programme)にかかる協議

第3日目には、2021年~2022年のITTO二カ年事業計画(Biennial Work Programme:BWP)の進捗についても話し合われました。日本を中心とした援助機関は、2年間のBWP事業に対する予算として計上された総額の48パーセント相当をこれまでにプレッジしています(435万ドル)。

ITTCメンバーからは、世界木材追跡ネットワーク(Global Timber Tracking Network)の運営をITTOが引き継ぐという提案、合法かつ持続可能なサプライチェーンと市場アクセスに関する教育カリキュラムの開発にかかるITTOの活動、新型コロナウイルス感染症の拡大が熱帯林に関わる地域住民や熱帯林セクターに及ぼした影響への対策としてBWPが強化されうるか否かについてさらなる説明が求められました。

次のようなBWP下の現場指向型活動が協議されました:合法かつ持続可能なグローバルサプライチェーンプラットフォームの設立と実施、西アフリカにおける小規模森林景観再生の促進、中央アフリカ諸国向けの合法かつ持続可能なサプライチェーンに関する研修カリキュラム開発、利害関係者によるコンゴ川流域の合法かつ持続可能なサプライチェーンの実施に向けたキャパシティ・ビルディング、ミャンマーにおける持続可能な森林経営基準と木材合法性枠組の強化、中国、ミャンマー及びベトナムにおける木材の合法性証明システムとグッドプラクティスの分析、国際森林教育、ITTOの「熱帯地域における森林景観再生のためのガイドライン(Guidelines for Forest Landscape Restoration in the Tropics)」の普及

新ITTO戦略的行動計画の検討

ジェニファー・コンジェ氏(米国)は、2022年~2026年期のITTO戦略的行動計画にかかるワーキンググループの報告を行いました。ITTO戦略的行動計画(Strategic Action Plan)案は、採択されれば、ITTOの目的である熱帯木材生産林の持続可能な経営および持続的かつ合法的に管理された熱帯木材の貿易拡大と多角化の促進に向けた前進を目指し、次の5年間のITTO政策・プロジェクト活動の指針となります。計画案では4つの戦略的重点項目、4つの分野横断的戦略とこれに関連する38の目標が設定されており、2026年までの達成を目指します。ITTCはこの戦略的行動計画案の採択可否を検討し、今週後半に決定します。

さらに、ITTO事務局が提出したコミュニケーション計画案について協議が行われました。本案は次の3つの目標を掲げています:1) 熱帯林に関するITTOのソート・リーダーシップを高める、2) 有効な持続可能な森林経営方法を促進する、3) 熱帯木材産業のメンバーにとって有益な職務を果たす。

ジョン・リー氏(ペルー)は、ITTOプロジェクト提案書に対する専門家パネルによる技術評価( Expert Panel for the Technical Appraisal of Project Proposals)の第56回会議の報告を行いました。本パネルは、2021年6月から7月にかけて、14件のプロジェクト提案書(アフリカ:6件、アジア・太平洋:5件、中南米・カリブ海:3件)のオンラインによる評価を実施しており、5件を即時の資金拠出対象として推薦しました。7件には修正、2件に対しては再立案を求めています。

財務と管理に関する委員会(Committee on Finance and Administration)が招集され、最後に行われたセッションの報告書について議論・採択しました。今次ITTC開催に先立ち、ITTO事務局が本委員会作成の文書を配布しコメントを募集しており、コメントは対応策として報告書案に盛り込まれました。

ITTCは、ITTO事務局が提出したバックグラウンドペーパーに基づき、ITTOの運営管理勘定への支払いおよび運転資本準備金(Working Capital Reserve)の使用について協議しました。メンバーは本ペーパーを歓迎し、会期間ワーキンググループを立ち上げて管理予算と運転資本の使用に対してメンバーの支払いを促す奨励策についての提案書を作成することとなりました。

ITTCは毎年開催され、持続可能な熱帯林経営の促進と持続可能な方法で生産された熱帯木材の貿易の促進を目指して幅広い事項が議論されます。

国際持続可能性開発研究所(International Institute for Sustainable Development:IISD)リポーティングサービスによるITTCの報告(毎日更新、英語)は以下のウェブサイトにて閲覧できます:
https://enb.iisd.org/ITTC57-International-Tropical-Timber-Council
第57回国際熱帯木材理事会(ITTC)第3日目、日本の本山佳子氏(左下)、ケイルッディン・モード・ラニ議長(右上のパネル中の左)、ITTO事務局職員