ITTOの新事務局長にシャーム・サックル氏
2021年12月6日(月):ITTOの統治機関である国際熱帯木材理事会(ITTC)は2021年11月29日から12月3日までオンライン開催した第57回セッションでITTOの新事務局長にシャーム・サックル氏を全会一致で任命しました。サックル氏は50名近くの応募者の中から選出されました。
マレーシア出身のサックル氏は、2008年から2017年までマレーシア木材審議会(Malaysian Timber Council)の地域部長としてヨーロッパを担当し、2017年よりITTO事務局次長を務めています。
サックル氏は国際貿易のスペシャリストで、国際情勢の法的・政策分析、木材・森林産業、広報活動やアウトリーチにおいて卓越した技能と豊富な経験を有しています。さらに、国際交渉に長けており経験豊かです。ロンドン大学キングスカレッジ(Kings College)にて法律学修士号を取得し、1993年にイギリスで認定を受けています。
サックル氏はITTO事務局長職の最終候補者3名のうちの一人で、任命受託に際し、総意の原則を取り入れることはITTOの極めて秀でた特徴であると述べました。
「ITTOは長い冒険の旅路のさらに新しい章をスタートさせます。」サックル氏はこう話し、次のように続けました。「初の女性事務局長として、協議と協力を重んじる精神を示したITTCの全メンバーに拍手を送ります。私は、ITTOの関心事を誰しもにとって公正・公正かつ均衡の取れた方法で前進させることを皆様に誓います。」
ケイルッディン・ラニITTC議長及び理事会メンバーはサックル氏の事務局長選出を暖かく祝福しました。サックル氏は2022年年明けに正式に就任予定です。
市民社会諮問グループ(CSAG)、ITTOの気候変動対策についてのペーパー作成を提案
市民社会諮問グループ(Civil Society Advisory Group:CSAG) は、第5日目にチェン・ヒン・ケオン議長を通じて声明を発表しました。その中で、ITTOが、加盟国及び事務局、民間セクター、貿易諮問グループ(Trade Advisory Group:TAG)、市民社会、CSAGが気候変動緩和と適応に具体的にどのように寄与できるかをまとめたペーパー作成を委託するよう提言しています。
「森林の経営状態はこれまでも現在も良好ではなく、森林資源は過剰に搾取され失われています。」声明の中ではこのように述べられています。「ITTO加盟国は、この数年間に作成された関連するガイドライン、政策、報告書をどのように行動に移すことができるでしょうか?提案するようなペーパーで利害関係者一人一人が可能な行動を示すことができます。現在、加盟国がITTO提供の資料をその力が発揮できる場面で具体的に活用しているとは言えません。」
CSAG声明では、国際社会が、「より良い復興(ビルド・バック・ベター)」を遂げ、持続可能性と強靭性に一層優れた将来に向け前進するならば、持続可能で責任のある森林資源利用の促進と違法で持続不可能な利用に対する方策を中心に据えた新型コロナウイルス感染症からの回復戦略を進める必要があります、と述べられています。
同声明では「雇用、収益、生計、文化が失われないこと及び資源と供給の持続可能性は単独で取組むべきではありません」とも述べられています。「重要な課題は林業の技術面にとどまりません。持続可能な森林経営(Sustainable Forest Management:SFM)に関わる問題を現場の林業従事者や技術者だけに委ねてはならないのです。」
さらに、同声明の中で、年次市場ディスカッション(Annual Market Discussion :AMD)をTAGとCSAGの共同セッションとして開催するよう改めて要請されました。現在、AMDにはビジネス指向のパネリストが登壇する傾向にありますが、「ビジネスも市場も、保健、保全、持続可能性、生計、先住民と地域住民(Indigenous Peoples and local communities:IPLCs)と切り離された状態では機能しないことは周知の通りです。CSAGは知識共有を促し得る私たちの専門性や知見及びそのようなプラットフォームから出される提言をITTCに提供します。」
CSAGが発表した声明の全文(英語)はこちらから閲覧できます。
ITTOの活動に380万USドルがプレッジされる
ITTCメンバーは、ITTOの活動に対して2021年中に総額377万USドルの拠出がなされたことを発表されました(中間資金拠出を含む)。内訳は次の通りです:韓国111万USドル、日本84.8万USドル、米国55.5万USドル、ワシントン条約(CITES)事務局37.6万USドル、ブルーノ・マンサー基金(Bruno Manser Fonds:BMF)20万USドル、スイス・バーゼル市20万USドル。中国10万USドル、国連食糧農業機関(FAO)16.7万USドル、創価学会8.96万USドル、貴重な森林財団(Precious Forests Foundation)1.1万USドル、Kisso-an 1,720 USドル。この他、11.6万USドルがITTOの既存資金として使用可能となりました。1
拠出金は主に次の活動に対して活用されます:コスタリカにおける商業目的で再造林された森林の競争力向上に向けた取組、トーゴ2県の女性グループによる劣化した森林景観再生、ワシントン条約の樹種プログラム(CITES Tree Species Programme:CTSP)におけるITTO担当業務、韓国山林庁(Korea Forest Service)職員のITTO事務局出向、ベトナムにおける森林製品の持続可能な国内消費促進(ITTOの新規資金構造/パイロットプログラムライン下で提出されたコンセプトノートから策定に至った最初のプロジェクト)。いくつかのプロジェクトや活動については、資金の一部を受領済みであり、残る資金の供与の目処がつき次第当該プロジェクトや活動を開始する予定です。2
第5日目には、ITTCは次の7つの決議を全会一致で採択しました:2006年の国際熱帯木材協定(International Tropical Timber Agreement, 2006)の5年間の延長(2026年12月6日まで)、新規プロジェクト8件及び事前プロジェクト3件の承認支持とプロジェクト4件、コンセプトノート1件(正規プロジェクトとして策定予定)、事前プロジェクト1件及び活動16件に対する資金協力の承認、2022年~2023年のITTO二カ年事業計画(2022–2023 Biennial Work Programme)の承認、ITTO戦略的行動計画2022-2026(ITTO Strategic Action Plan for 2022–2026)の承認、他の国際機関との協力や連携について、試行的なITTOプログラム・アプローチに関する諮問委員会の付託条項の採択及び事務局長の任命。また、ITTCは、今次会合開催前及び会期中にオンラインで開かれた4つの関連委員会による報告書を採択しました。
58回目となる次回のITTCは横浜市にて2022年11月7日から12日まで開催される予定です。議長にジェシー・マホーニー氏(オーストラリア)、副議長にヌルディーン・イッドリス氏(ガーナ)が選出されました。
閉会挨拶にて、ケイルッディン・ラニ議長は、消費国及び生産国の両スポークスパーソン、全メンバー、事務局長代行、事務局、通訳者、技術担当者に対し、円滑に理事会が進行できたことへの感謝の意を表しました。
ITTCは毎年開催(必要に応じて複数回)され、持続可能な熱帯林経営の促進と持続可能な方法で生産された熱帯木材の貿易の促進を目指して幅広い事項が議論されます。
国際持続可能性開発研究所(International Institute for Sustainable Development:IISD)リポーティングサービスによるITTCの報告(毎日更新、英語)は以下のウェブサイトにて閲覧できます:
https://enb.iisd.org/ITTC57-International-Tropical-Timber-Council
1 金額は正確でないものもある
2 任意拠出金を受ける全活動の一覧は第57回ITTC決議1に記載されている(12月中旬にITTOホームページに掲載予定)