ITTC議長、新型コロナウイルス感染症終息後の熱帯木材セクターの回復へ期待を寄せる

2021年11月29日(月)の主な協議内容
インドネシア・北スラウェシ州の伝統的なセンパカ樹種製の家屋。ここではITTOがセンパカ林開発プロジェクトを実施し、自然林への負荷を軽減し村落開発に資する新しい資源の創造に寄与した。ケイルッディン・モード・ラニ国際熱帯木材理事会(ITTC)議長は、新型コロナウイルス感染症終息後の森林セクターの回復を切望している。写真撮影:Y. Choi/ITTO

2021年11月30日(火):新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は、世界の経済情勢・展望を大きく変えました。森林産業も例外ではありませんが、第57回国際熱帯木材理事会(International Tropical Timber Council:ITTC)の開会式にて、今次ITTCの議長を務めるケイルッディン・モード・ラニ氏は、各国が回復に向けた策を講じるにつれて森林産業が「持ち直す」望みはあると述べました。

第57回ITTCは、新型コロナウイルス感染症の流行が継続しているためオンラインで開催されています。

同じく開会式で挨拶を行ったスティーブン・ジョンソンITTO事務局長代行は、ケイルッディン議長の発言に賛同し、「ほぼ全経済セクターが新型コロナウイルス感染症の影響を受けましたが、ITTOの生産加盟国を含めた輸出指向の大型森林産業を持つ国々が受けた打撃はとりわけ深刻です。」と述べました。

「ロックダウン(都市封鎖)措置が取られる中、企業はなかなか従業員を現場に復帰させることができていません。」ジョンソン博士はこのように話しました。「従業員が出勤することができても、製品を市場に出荷するためのコンテナの確保又は船積み能力を確保することがほぼ不可能です。何とかこれができたとしても、運賃は新型コロナウイルス感染症拡大以前に比べて10倍にまで高騰しています。運送費の上昇で製品の輸入市場価格も大幅に値上がりし、需要を押し下げるという悪循環が起きています。」「ITTOおよび他の機関・企業は、合法化かつ持続可能なサプライチェーン、グリーンサプライチェーン、森林減少を引き起こさないサプライチェーンの実現に向け尽力していますが、新型コロナウイルス感染症の流行により、サプライチェーン自体が存在しなければこのどれも達成することはできないことに気付かされました。」

ケイルッディン議長は、コロナ渦で急速に進められたデジタル技術により、森林産業の効率化が進み得るでしょう、と述べ、今後の森林セクターの前向きな見通しへの期待を表しました。


この他、第一日目には、2021年12月7日に失効する2006年の国際熱帯木材協定(International Tropical Timber Agreement, 2006)の5年間の延長を理事会メンバーが全会一致で支持しました。正式決定は今週後半に行われる予定です。

さらに、次期ITTO事務局長最終候補者3名による各15分間のプレゼンテーションが行われました。この3名は、シャーム・サックル氏(マレーシア)、フランシスコ・ソウザ氏(ブラジル)、ユーリ・タムリン氏(インドネシア)です。理事会は今会期中に最終選考を行い、2021年12月3日(金)に新事務局長を決定する予定です。

森林経営に関する委員会(Committee on Forest Management)が招集されプロジェクト及び政策策定活動のレビューを行いました。次のような活動が議論されました:西アフリカでの小規模森林景観再生の促進、中央アフリカ諸国向けの合法かつ持続可能なサプライチェーンに関する研修カリキュラム開発、ITTOの熱帯地域における森林景観再生のためのガイドライン(”Guidelines for Forest Landscape Restoration in the Tropics")の普及、熱帯林の生物多様性保全のためのITTO/CBD)共同イニシアティブ(ITTO–Convention on Biological Diversity Collaborative Initiative for Tropical Forest Biodiversity)及びアフリカの状況に合わせた持続可能な森林経営にかかるITTO基準と指標の作成。

同委員会では、3件のプロジェクト及び1件の事前プロジェクトの終了を正式に発表しました。この内1件は、インドネシア・北スラウェシ州におけるセンパカ(Elmerrillia spp.)種の保全と持続可能な利用にかかるプロジェクトです。センパカ種は長く伝統的な家屋の建築に使用されており、その需要が高まっていることから長期的な将来が不安視されています。本プロジェクトでは、地域住民との協力の下、自然林への負荷軽減、今後のセンパカ材の安定供給および地域住民の生計向上を目的としてセンパカ種のプランテーションを設立しました。センパカ種子の収集、貯蔵、発芽に関する研修も実施し、3つの村に苗床を設置しました。総面積 18ヘクタール(18万㎡)のプランテーションを設立し、植林による収入向上や村落開発の可能性を実証しました。

ITTCは毎年開催され、持続可能な熱帯林経営の促進と持続可能な方法で生産された熱帯木材の貿易の促進を目指して幅広い事項が議論されます。

国際持続可能性開発研究所(International Institute for Sustainable Development:IISD)リポーティングサービスによるITTCの報告(毎日更新、英語)は次のウェブサイトにて閲覧できます:https://enb.iisd.org/ITTC57-International-Tropical-Timber-Council

ケイルッディン・モード・ラニITTC議長(右)がマレーシア・プトラジャヤ(Putrajaya)の執務室からオンラインによる第57回国際熱帯木材理事会(ITTC)の開会挨拶を行った。スティーブン・ジョンソン ITTO事務局長代行(左)がこの挨拶に注意深く耳を傾けている
インドネシア代表が第57回ITTCの第1日目に発言
資格審査委員会(Credentials Committee)のレイ・トーマス・フェルナンデス氏(フィリピン)が第57回ITTCの第1日目に発言
生産国スポークスパーソンを務めるホルヘ・マルー氏(ペルー)が第57回ITTCの第1日目に発言
マレーシア代表のプバディ・ゴビンダサミ氏が第57回ITTCの第1日目に発言
消費国スポークスパーソンを務めるルーク・トンプソン氏(右下)が第57回ITTCの第1日目に発言
アン・タイラー氏(ニュージーランド)からITTO事務局長職の募集、選考、任期についての選考委員会の報告が行われる
シャーム・サックル次期ITTO事務局長候補(右)がITTCに対してプレゼンテーションを行う
フランシスコ・ソウザ次期ITTO事務局長候補(下)がITTCに対してプレゼンテーションを行う
ユーリ・タムリン次期ITTO事務局長候補(下)がITTCに対してプレゼンテーションを行う
福田淳氏(日本)が第57回ITTC第1日目に開かれた森林経営の委員会(Committee of Forest Management)会合にて発言
ジェニファー・コンジェ氏(米国)が第57回ITTC第1日目に開かれた森林経営委員会(Committee of Forest Management)会合にて発言