世界森林目標達成のため、より多くの協力、インパクト、投資が必要―ITTO事務局長が発言
2025年5月9日, ニューヨーク

UNFF20の開催期間中、シャーム・サックルITTO事務局長は、世界森林目標(Global Forest Goals)に向けての進展を加速させるため、コラボレーションの強化、インパクトの拡大、投資の拡大を提唱しました。写真: Ramón Carillo/ITTO
熱帯林に必要なのは保護だけではありません。熱帯林には投資が必要です。持続可能な資金調達と自然に基づく解決策に世界的な注目が集まる中、国際熱帯木材機関(ITTO)は、最も重要な資源を緊急に動員する必要性を強く訴えました。
ニューヨークの国連本部で開催された国連森林フォーラム第20回会合(20th session of the United Nations Forum on Forests: UNFF20)において、ITTOは、持続可能な熱帯林経営と合法的に伐採され持続可能なかたちで生産された木材および関連する非木材製品の取引に焦点を当てた、触媒的フィールドプロジェクト、影響力の高いパートナーシップ、および、戦略的資金調達の対話を挙げ、それらを通じてITTOが発揮した世界森林目標(Global Forest Goals: GFG)推進におけるリーダーシップを強調しました。
世界森林目標達成のための協力
5月7日、ITTOは「Joining Forces for Forests(森林のために力を合わせよう)」と題したサイドイベントに、森林に関する協調パートナーシップ(Collaborative Partnership on Forests: CPF)のメンバーと共に参加しました。同イベントは、世界森林目標(Global Forest Goals)1、3、5を支援するための連携強化に焦点を当てたものです。
セッションの冒頭で、ブラジル、オーストリア、スロバキア、日本の各国代表が、CPFのコレクティブインパクトの強化について展望を語りました。ITTOは、その基盤となる条約である国際熱帯木材協定( International Tropical Timber Agreement: ITTA, 2006)、戦略行動計画2022-2026(Strategic Action Plan 2022–2026)、および多くの理事会決定(Council Decisions)に示されているように、CPFへの長年のコミットメントと積極的な参加を再確認しました。
「ITTAはCPFとUNFFを不可欠なパートナーとして明確に認めています。」とシャーム・サックルITTO事務局長は述べました。また「私たちの戦略とプログラムは単独で策定されるものではなく、世界的に合意された森林目標やその他の国際的な森林関連の目標を推進するための多国間協力に根ざしています。」と加えました。
ITTOは、2024-2025年の二カ年事業計画にGFGsに示された数多くの活動が含まれていることを紹介し、中にはCPFとの協力に焦点を当てた特別な活動も含まれていると述べました。ITTOのCPFとの協力は毎年、国際熱帯木材理事会(ITTC)に報告され、透明性と整合性を確保しています。
さらに、ITTOは2つの重要なCPF共同イニシアティブを共同で主導しています。 熱帯林における統合的火災管理の推進(Promoting Integrated Fire Management in Tropical Forests)と持続可能な世界のための持続可能な木材(Sustainable Wood for a Sustainable World: SW4SW)です。

現場へのインパクト
新たな課題に関するプレナリーディスカッションで、サックル事務局長はペルーの熱帯乾燥林の再生に関する声明に続いて発言し、ペルーとパネルメンバーの何人かが言及した成果のいくつかは、ITTOが資金を提供したフィールドプロジェクトを通じて支援されたものであり、国や地元の関係者と緊密に連携して実施されていると紹介しました。
「ペルー北海岸の熱帯乾燥林におけるSFMのための能力強化」(Strengthening capacities for the sustainable forest management of the tropical dry forest of the North Coast of Peru)プロジェクトは、共同融資を含め総額6,100万米ドルのGEF資金による取組の出発点となりました。「これは、ITTOのささやかな投資が、加盟国の規模を拡大し、より大きな資金調達メカニズムを利用できるようにすることで、いかに変革的なインパクトを生み出すことができるかを示す完璧な例です。」とサックル事務局長は述べました。
また、コートジボワールの小規模なITTOプロジェクトが、世界銀行が資金を提供する、女性リーダー主導の大規模な森林再生イニシアティブにつながった例も挙げました。「これらのプロジェクトは単なる技術的介入ではなく、長期的な環境・経済・社会変革の触媒なのです。」とサックル事務局長は付け加えました。プロジェクトは、地元主導で戦略的合致した国際支援がいかに波及効果を持つかを示しています。このプロジェクトと同様のモデルは、トーゴとベナンのITTOプロジェクトでも再現されており、成功裏に完了したITTOプロジェクトの移転可能性と再現性を証明しています。同氏は、より大規模なドナーとITTOの協力をさらに緊密にするよう呼びかけました。.

森林景観への投資
アジア森林協力機構(Asian Forest Cooperation Organization: AFoCO)主催のサイドイベント「統合的景観アプローチの拡大: パートナーシップ、政策、資金調達」にて、サックル事務局長は重要なパネルディスカッションに参加し、森林景観への民間セクターの投資促進における国際機関の役割について議論しました。
ITTOの広範な経験に基づき、彼女は2025年9月23-24日にマカオで開催予定のグローバル・リーガル&サステナブル・ティンバー・フォーラム (Global Legal and Sustainable Timber Forum: GLSTF)や、持続可能な森林経営(SFM)への投資のリスク回避を支援するITTOのサービスなどの取組を紹介しました。
「私たちの仕事は、持続可能な林業のための資金を、ドナーからだけでなく、長期的な変化を推進できる民間セクターや市場関係者から引き出す手助けをすることです。」とサックル事務局長は語りました。「合法で持続可能なサプライチェーンに関するITTOの活動は、まさにそのためのものです。」
サックル事務局長はまた、森林に関する投資に対する認識を変えるには、コミュニケーションと市場への働きかけが重要であることも強調しました。「森林は気候変動の解決策の一部であると同時に、自然をベースとしたスマートなビジネスでもあります。持続可能な森林や木材の価値、合法的なサプライチェーンの信頼性、そして自然への投資によるリターンを伝える必要があります。」とサックル事務局長は述べました。「国際機関が強力なコネクターとなり得るのはこの点です。」
UNFF20でのハイレベルな関与、技術的なインプット、戦略的パートナーシップを通じて、ITTOは持続可能な熱帯林業におけるリーダーシップと、世界森林目標と国連森林戦略計画への寄与する決意を強化しました。CPFの調整から資金対話に至るまで、ITTOは世界的な目標を達成するため、アクションを強化するよう継続的に呼びかけています。
UNFF20におけるITTOの活動については、以下の関連記事をご覧ください:
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