新森林協定で合意へ

2006年1月31日, 横浜

写真: ENB

2006年1月、ジュネーブで開催された国際熱帯木材協定(ITTA)の第4回改定交渉において、加盟各国から派遣された交渉担当者は、持続可能な熱帯林の管理体制を強化しながら、持続的な熱帯木材の開発も重視する新たな協定を採択することで合意した。

1983年に設立された国際熱帯木材機関(ITTO)の目的は、熱帯林を保護しながら、熱帯林を保有する開発途上国を支援することにある。この目的を実現するために、世界の森林政策と木材交易を考慮しながら、国際熱帯木材協定(ITTA)を定期的に見直す。

2006年1月16日から27日まで2週間の日程で、加盟各国政府や国際機関から180名を超える交渉担当者が集まり、改定案について討議した。この改定案には、国際熱帯木材機関(ITTO)の活動を大幅に改善するための提案がいくつか盛り込まれた。

国際熱帯木材機関(ITTO)は、持続的な熱帯林の利用が経済発展には不可欠だとの理念を長年にわたり掲げてきた。この理念は今回の改訂にも反映されている。ITTOの主な目的は、次の2つである。

1つは、「森林を持続可能な方法で管理し合法的に伐採することで、熱帯木材の国際取引の拡大・普及を促進する」ことである。

もう1つは、これと関連するが、木材製品の競争力を高めることである。この目的を実現するためには、森林を持続可能な方法で管理し合法的に伐採した木材のマーケティング強化や、森林認証制度の採用、木材市場の情報公開が必要になる。

このほかにも、森林法の施行や、違法な伐採や違法な取引の取り締まり、持続的な森林管理、森林の再生などで、熱帯林の生産国を支援する必要がある。さらに、熱帯林の売買や管理に関するデータの収集や公表ができるように関係国の能力を向上させる必要もある。

この協定で確認されたITTOの役割は、森林に依存する地域社会に対して、持続的な開発の促進、貧困の緩和、持続的な森林経営の実現に向けて支援することにある。

ITTOの活動資金の大半は、任意の拠出金でまかなわれている。現在までのところは、日本やスイス、アメリカの各国政府からの支援金が大部分を占めている。今回の改定交渉では、資金を増やすために、テーマ別にサブプログラムを作成し、サブプログラムごとにサブアカウントを用意した。これは、特定の活動に向けた資金を提供しやすくするのが狙いである。

ITTO事務局長のマヌエル・ソブラル(Manoel Sobral Filho)氏は、今回の新協定は、これまでの持続的な発展の成功を生かすものになると述べた。

「自国の貧困や環境の悪化を望む人はいない。天然熱帯林は、将来の世代に向けてこれを保全しながら、現在の貧困を緩和し自国の経済発展のために利用することができる。今回の改定ではこの信念を明確に表明し、この信念を実現するために資金調達方法を改善した」(ITTO事務局長のマヌエル・ソブラル氏)

事務局長のマヌエル・ソブラル氏は、天然熱帯林の保全と熱帯木材の売買促進は両立しないと考えている人が多いことも指摘した。

「しかし、この2つはお互いに補完しあう関係にある。すなわち、熱帯林を保全しなければ、熱帯木材の売買は長く続かない。その一方、熱帯木材の取引がなくなれば、森林を捨てて、林業を農業に切り替えることになるだろう。熱帯国の人々が生きていくには経済発展が欠かせないからだ」(ITTO事務局長のマヌエル・ソブラル氏)

「ITTOの役割は、これまでも、そして今後も、各国政府、民間企業、地域社会に対して、森林経営の向上と木材製品の販売促進を支援することだ」(ITTO事務局長のマヌエル・ソブラル氏)。

独立系の環境関連ニュース誌「Earth Negotiations Bulletin (ENB)」が交渉の全貌を詳しく報じており、交渉結果に対する明るい見通しを示している。

「森林に対する国際協力が得られるようになれば、新ITTAは確実に力を発揮できるようになるだろう」(ITTO事務局長のマヌエル・ソブラル氏)。

ENB誌の報道によると、積極的な環境保護団体の中には、熱帯木材の国際取引の拡大を促進することはITTOの目的に反するとしてその妥当性を認めないものが多いという。

「ITTOでは、いま活発な討議が行われている。そして、この新協定に寄せる期待が高まっている。このような状況を踏まえると、熱帯林の劣化や衰退を防止し、熱帯林に依存する地域住民を経済的に豊かにするうえで、最終的には、ITTOが最も効果的な国際機関の1つになることは間違いない(ITTO事務局長のマヌエル・ソブラル氏)。

2006年に採択された新ITTA協定が発効するのは2008年である。有効期間は10年。最大8年の延長が可能だ。この新ITTA協定が発効するまでの間は、1994年版ITTA協定が有効となる。

ITTA協定の改定に向けた交渉の詳細については、次のサイトをご覧ください。
http://www.iisd.ca/forestry/itto/itta4/

ITTOの詳細については、次のサイトをご覧ください。
http://www.itto.or.jp