グローバルランドスケープフォーラムのパネリスト:SDG達成には木材の安全保障が極めて重要

2019年5月22日

グローバルランドスケープフォーラム京都(GLF京都)で行われたパネルディスカッション「気候変動と持続可能な開発目標を地球規模で達成するために:森林と持続可能な林産物、ならびに気候変動に強靭な土地利用を目指して」のパネリスト。左から:ディタレ博士、沢田博士、サントーソ氏、森田香菜子博士、ジョンソン博士、森田隆博氏 
写真撮影:CIFOR

ITTOが5月に京都で共催したパネルディスカッションでは、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDG)を達成し循環型バイオ経済を実現するためには、合法的なバリューチェーンを通じて持続的に木材を増産し増える消費を満たすことが不可欠であるとされました。

「気候変動と持続可能な開発目標を地球規模で達成するために:森林と持続可能な林産物、ならびに気候変動に強靭な土地利用を目指して」と題されたパネルディスカッションが、グローバルランドスケープフォーラムのイベントとして2019年5月13日に京都で開催されました。

ITTO事務局長のゲァハート・ディタレ博士は次のように述べました。木材の安全保障は、持続可能な未来に向けた地球的規模の取組みに欠かすことのできない要素です。従って、生産力のある森林は、持続的に木材やその他の林産物を供給できる力を備え、高まりつつある住宅、建設、家具、バイオ燃料、薬品、その他用途に関連したニーズを満たすことができなければなりません。

木材やその他の林産物の供給と持続可能で合法的なサプライチェーンとが結びつけば、持続可能な森林経営や森林・景観の再生(forest and landscape restoration:FLR)に付加価値がつき、増大する世界の木材需要が森林の減少・劣化の緩和につながる可能性があります。また、貧困削減や気候変動緩和といったSDGs達成にも資すると考えられます。

ディタレ博士は参加者に対して、ITTOは森林に関する協調パートナーシップ(Collaborative Partnership on Forests:CPF)のメンバーとともに熱帯林と景観の再生のための新たなガイドラインを作成中であり、これがFLRの実施の手引きとなるだけでなく、持続可能なサプライチェーンを支える一つの方途としてFLRへの投資を呼ぶ力添えとなるよう目指している、と伝えました。

森林総合研究所(FFPRI)所長の沢田治雄博士はFFPRIの研究・開発活動について発表しました。その中で、持続可能な森林経営は、森林を多角的に利用できる道を開き、水資源、炭素、木材および生物多様性に関係した10にも及ぶSDGと関連ターゲットに寄与する力を有している、と述べました。

沢田博士によれば、森林の生産性を向上させ林産物に革新をもたらすには、研究活動における分野横断的な協力が必要とのことです。

沢田博士は、「森林、林業および林産物によるSDGへの貢献を拡大するには、より総合的・統合的な研究・開発が不可欠です」と述べました。

国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)およびFFPRIの森田香菜子博士の発言は以下のとおりです。SDGに関する森林セクターの議論では、森林関連の成果を拡大することができるようなガバナンスのあり方についてさらに取り上げる必要があります。多様な関係者の参加によって、SDGに関する国や地方レベルの取組みを立ち上げることが極めて重要です。

地球環境戦略研究機関(IGES)リサーチマネージャーのブライアン・ジョンソン博士は、フィリピンでの参加型の流域管理に関するケーススタディについて発表しました。その中で、利害関係者間の連携促進のための地方政府の能力強化とともに、気候の影響を受けにくい土地利用に対してニーズが高まっている、と述べました。

兼松株式会社のパートナーであるインドネシアの松下ゴーベル財団のヘル・サントーソ副会長は、インドネシアの中部スラウェシ州のカカオ農業を組み込んだゴロンタロ REDD+プロジェクトについて次のような報告を行いました。プロジェクトでは、松下ゴーベル財団の協力を得て、日本のチョコレート市場に向けた新しいバリューチェーンの開発に取組んでいます、プロジェクトは中部スラウェシ州の貧困緩和と環境再生に寄与しており、地域住民やSDG達成にも恩恵をもたらしています。

国際協力機構(JICA)地球環境部次長の森田隆博氏は、SDG達成において林業の貢献を拡大するためのJICAの事業を紹介し、次のように話しました。SDGのターゲットは野心的であることから、社会も関係者も現状維持のやり方を変える必要があります。このため、JICAは現地と海外のパートナーとともに革新と連携を推進しています。森田氏はさらに、JICAが京都大学との協力によりインドネシアで実施中の火災の被害を受けた泥炭生態系の再生を通じて住民の生計向上を目指すプロジェクトについて紹介し、REDD+に関する日本の官民連携は、民間企業、研究機関、NGOおよび省庁のつながりを築く上で重要な役割を果たしています、と述べました。

参加者からの質問に対し、ディタレ博士は次のように回答しました。森林と林産物は気候変動の緩和に向けて大きな可能性を秘めており、この点は2018年10月に気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change:IPCC)が公表した特別報告書でも指摘されています。林産物活用の主な効用は、よりエネルギー多消費型で再生不可能な資源に代替することによって得られるのです。

本パネルディスカッションは、ITTO、FFPRI、JICA、IGES、松下ゴーベル財団、兼松株式会社が共催しました。

本パネルディスカッションの発表資料(英語)は以下よりダウンロードが可能です:

 

詳細は以下のGLF京都2019のウェブサイト(英語)をご覧ください:https://events.globallandscapesforum.org/kyoto-2019/