ITTO事務局長、熱帯林への投資不足の危険性を警告

2023年12月10日

ドバイで開催されたCOP28のハイレベル・セグメントで発言するシャーム・サックルITTO事務局長。写真:S. Kawaguchi/ITTO

2023年12月10日、アラブ首長国連邦、ドバイ:シャーム・サックルITTO事務局長は、昨日開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)で演説を行い、熱帯林を保持する国々が持続可能な森林経営と保全の報いを得られない状態が続けば、地球にとって悲惨な結果を招きかねないと述べ、喫緊の投資を呼びかけました。

この演説はCOP28のハイレベル・セグメントの一部であり、UNFCCC締約国の国別声明や国際機関を含む他の団体からの声明が発表されました。

「緩和と適応の両方における熱帯林の重要性は、いくら強調してもしすぎることはありません。」とサックル事務局長は演説の中で述べました。「森林保全を阻害し続ければ、気候変動や土地利用の変化による被害を抑えることはできないでしょう。」

サックル事務局長は、持続可能なかたちで経営された熱帯林と木材生産は、極めて重要な、自然を基盤としたソリューション(Nature-based Solutions: NbS)であると語りました。

「木材は最も環境に優しい素材のひとつです。」とサックル事務局長は述べました。「森林の持続可能な伐採は森林破壊ではなく、木材製品の持続可能な利用は、地球規模で炭素の貯蔵を増加させます。」

サックル事務局長は、持続可能な熱帯林経営への投資が、地球の未来と森林に依存するコミュニティの生活にとって急務であると強調しました。

「気候変動と闘い、経済を変革するためには、持続可能な熱帯林経営に緊急に投資する必要があります。」「持続可能な森林経営は、劣化を避けることで森林の炭素蓄積量を長期的に維持することを可能にします。森林は、持続的な収入を生み出すことで、他の競合する土地利用の犠牲になることなく、維持されます。」とサックル事務局長は述べました。

サックル事務局長は、持続可能な熱帯林経営の触媒となるITTOの長期的なコミットメントについて紹介しました。ITTOは、政府、民間セクター、市民社会との戦略的パートナーシップを通じ、特に女性に重点を置きながら、加盟国や地域コミュニティをエンパワーしています。ITTOのビジョンは、炭素隔離にとどまらず、活発な生態系を育み、持続可能な利用を可能にし、カーボンニュートラルで循環型の生物経済に貢献する総合的な経営を包含しています。

「熱帯林は、気候変動に強い未来への重要な道筋を提供します。」とサックル事務局長は述べました。「私たちは、持続可能な熱帯林経営を支持し、熱帯林への投資を拡大するために、すべての利害関係者が私たちと協力することを強く求めます。」

サックル事務局長はまた、12月9日(土)に、EY主催によるアマゾンでの取り組みに焦点を当てたイベントにITTOを代表して参加しました。サックル事務局長は、アマゾン諸国と協力し持続可能な森林経営を促進する多様なプロジェクトを実施してきたITTOの経験を強調し、EYのイニシアチブに参加することへの関心について語りました。イベントの参加者は、森林における長期的かつ安全で持続可能な資金調達の緊急の必要性を認識したようです。

また土曜日には、マ・ファンオク博士がITTOを代表して国際竹藤ネットワーク(International Bamboo and Rattan Organization: INBAR)主催のイベントに参加し、景観回復とグリーン成長を拡大するための竹を使ったイノベーションに焦点を当てて議論しました。

その後、マ博士は、森林に関する協調パートナーシップ(Collaborative Partnership on Forests: CPF)主催によるイベント「気候変動アクションのショーケース:ビヨンド・カーボン-気候変動と闘うための森林の潜在能力の実現(Climate Action Showcase: Beyond Carbon - Realizing Untapped Potential of Forests to Combat Climate Change)」にITTOを代表して参加しました。このイベントは、CPFメンバーが森林の価値と生産機能を最大限に活用し、再生可能な素材とグリーン雇用の可能性を引き出すためのベストプラクティスとケーススタディを共有する機会として開催されました。

このイベントで、マ博士は、森林の価値を最大限に引き出すためのプロジェクト、政策開発、ガイドライン、マーケット情報、4つのプログラムラインを示し、ITTOの活動について概説しました。中でも、2週間に1度発行される熱帯木材市場レポート(Tropical Timber Market Report)、世界の木材状況に関する隔年評価報告書(Biennial Review and Assessment of the World Timber Situation)、ITTOの長期にわたる統計データベース世界木材指標(Global Timber Index)、最近発足した年次グローバル・リーガル・アンド・サステイナブル・ティンバー・フォーラム(Global Legal and Sustainable Timber Forums)などを通じて、熱帯木材市場と貿易に関する情報提供にITTOが大きく貢献していることを参加者に伝えました。

マ博士は、持続可能な森林経営を拡大するための力は、資金が十分ではないことによって制限されていると指摘しました。マ博士は、ITTOはCOP28の期間中、気候変動に基づく資金調達の拡大を提唱していると述べました。

EYパネル「アマゾンのエコシステム:未来に向けた機会の再構築」。写真:S. Kawaguchi/ITTO