ITTO事務局長、木材についての前向きなメッセージ発信を要請

2022年2月25日

持続可能な方法による木材収穫で森林は減少しない。それは長期に渡って森林を健康に保ち、人々の生計手段を提供する自然主体の解決策である。写真撮影:J.L. Doucet

横浜、2022225日:シャーム・サックル ITTO事務局長は、熱帯地域の森林減少に木材貿易が加担しているという世間一般の誤った認識を解くため、「持続可能な方法による木材収穫では森林は減少しない」というメッセージを国際機関、政府その他の利害関係者が共同で発信するよう提言しました。

第29回アジア太平洋林業委員会(Asia-Pacific Forestry Commission)(オンライン開催)で登壇したサックル事務局長は、熱帯林セクターは、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行から環境に配慮しながらの回復を図る上で重要な役割を果たすことができ、故に熱帯林の減少を引き起こしているという誤った認識に影響されてはならない、と話しました。

「熱帯林の減少を引き起こしている主な原因は、特に大規模なアグリビジネスによる農地の拡大に関係していることがわかっています。」とサックル事務局長は述べました。「従って、一致団結して、持続可能な方法による木材収穫では森林は減少しないということについて一層の啓発を図り、合法かつ持続可能な木材サプライチェーンの促進と奨励を進めることが不可欠です。」

アジア太平洋林業委員会は、国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations:FAO)が世界各地に設置した地域林業委員会の一つで、森林に関わる課題についての国家間での議論とこれに対する取組に向けた政策・技術フォーラムです。加盟国は34か国で、2年に一度、会合が開かれます。

アジア太平洋林業委員会で登壇した際、サックル事務局長は、2019年にITTOが中国・上海で共同開催したフォーラムで、熱帯木材および森林製品が合法で持続可能な方法で供給されるよう、グリーンサプライチェーンの創設が必要であるという点に参加者が同意したと述べました。さらに、この取組を後押しするよう立案され、現在ITTOが実施している「合法かつ持続可能なサプライチェーン」プログラムに言及しました。

「新型コロナウイルス感染症収束後、持続可能性を維持しつつよりよい復興を遂げるには、政府、市民社会、地域住民、先住民および民間企業とのパートナーシップの下、森林の役割を強化し、林産物の持続可能な生産と消費を促すことがこれまで以上に必要です。」とサックル事務局長は話しました。「合法かつ持続可能な熱帯木材サプライチェーンの構築を進める上で、消費者は林産物の市場を与えることで生産者のサポートに努めることが求められます。」

サックル事務局長は「合法かつ持続可能な森林サプライチェーンの構築に向けた強固なパートナーシップは、英国・グラスゴーで開催された 国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で発表された森林関連のイニシアティブ実施の一助となるでしょう。ITTOは、本年のCOP27に向けて実施される活動に期待しています。」と話しました。また、ITTOは、FAO及びアジア太平洋内外のパートナー組織が加盟する、森林に関する協調パートナーシップ(Collaborative Partnership on Forests:CPF)の加盟組織と協力して、持続可能な森林経営の実現、合法かつ持続可能なサプライチェーンの推進、熱帯木材と森林製品の持続可能な貿易と消費の促進に引き続き力を注ぎます、と述べました。

さらに、ITTOは、持続可能な森林経営にかかる有効な政策の策定に向けた世界森林資源評価(Global Forest Resources Assessment:FRA)の重要性を認識し、世界森林資源評価(FRA) 2025の諮問グループに引き続き参加します。

関連するSDGs

持続可能な林業は森林とその生物多様性の保全と森林に依存する人々や森林に住まう人々の暮らしの支えとなります

持続可能な林業によって、リユース(再利用)、リサイクル(資源化)、リニュー(再生)ができる森林由来の物やサービスが日々の消費向けに継続的にもたらされ、さらに循環型の経済を導きます

持続可能な方法で生産された木材は、炭素を多く排出する物資の多くに代わる再生可能な代替品となります。持続可能な経営に置かれた熱帯林とこれに関連する持続可能なサプライチェーンは、気候変動緩和や循環性に富む経済の発展にとって重要です

持続可能な林業は、人、特に山村地域に住む貧困層、若者そして女性、及びその生計への投資です

持続可能な林業には、地域住民、先住民、大小規模の民間企業、消費者および政府といった利害関係者の間に公平なパートナーシップが築かれることが求められます