熱帯林の生物多様性に対する取り組みが更新されました。

2014年10月17日

ブラウリオ・ディアスCBD事務局長とエマニュエル・ゼメカITTO事務局長が熱帯林の生物多様性を保護する双方の取り組みを更新しました。写真提供:J. Leigh, ITTO

エマニュエル・ゼメカITTO事務局長とブラウリオ・デ・スーザ・ディアスCBD事務局長が10月13日、韓国の平昌で開催されたCBD COP 12 においてITTO、CBD、JICAが共催した「現場で森林に関連した愛知目標を目指す:熱帯林の生物多様性に関するITTO/CBD共同イニシアティブ」のサイドイベントで、覚書(MOU)に署名をしました。

この覚書の主な目的は、ITTOとCBD事務局が共同で行う熱帯林とその生物多様性に関する事業を特定、計画、実施することです。覚書は2010年に当初5年計画で署名されましたが、今回平昌でさらに2020年まで延長されました。

この覚書の下での主な共同事業の一つは、熱帯林の生物多様性に関するITTO/CBD共同イニシアティブです。このイニシアティブの枠組みの下で、これまで11の事業がITTOの木材生産国26各国で実施されました。

ITTO/CBD共同イニシアティブは初期の4年間でおよそ15億米ドルの予算がつきました。そのうち約12億5千万米ドルは日本、スイス、アメリカ、ベルギー、韓国、日本木材輸入協会(JLIA)から資金提供を受け、11の事業が実施されました。

ゼメッカ氏は開会の挨拶の中で「このイニシアティブは生物多様性の戦略計画2011-2020、とりわけ森林に関連した愛知生物多様性目標の達成に貢献しています。」と述べました。ディアス博士もまた、署名の際のスピーチで「このイニシアティブは、そのための現場での活動の具体的な実施例です。」と言及しました。

署名式の後、ITTO/CBDイニシアティブについての一連の発表と討論が行われました。このイニシアティブの概略を参加者に説明するために、ITTOのプロジェクトマネージャーのジョン・リー氏がプレゼンテーションを行いました。その後、ITTO/CBDイニシアティブの下でプロジェクトを実施した4人の専門家が自分たちの体験とプロジェクトから学んだことを参加者に伝えました。
 
カンボディアのチェアング・ダニー氏は「カンボディア、ラオス、タイをまたがるエメラルドトライアングル保護森林地帯における越境生物多様性保護」のプロジェクトに関する、3カ国間での越境協力も含めた問題を明らかにしました。プロジェクトの成果の述べた際、愛知生物多様性目標1,2,5,7,11,15の達成に貢献したことを示しました。さらに、越境保護の実施を成功に導くにはプロジェクトを実施する前に共通のビジョンを持ち政治的な誓約をすることが重要であると指摘しました。

インドネシアのヤニ・セプティアニ氏は「インドネシアとマレーシアサラワク州をまたがる越境生態系となっているベトゥング ケリフン国立公園(BKNP)の生物多様性保護の推進(フェーズIII)」のプロジェクトについての発表を行いました。セプティアニ氏はこのプロジェクトが森林に関する愛知生物多様性目標、つまり、目標5,7,11,15の達成にどのように貢献したかを詳細に説明し、森林と森林生物多様性の保全にはすべての利害関係者との技術協力と組織の能力強化が重要であることを強調しました。
 
グアテマラのペドロ・ロペス氏は、「メキシコとグアテマラにおけるタカナ火山とその影響範囲の自然資源及び生物多様性の統合的な管理」と題したプロジェクトを実施したHELVETASを代表してプロジェクトの概要を説明しました。ロペス氏は、プロジェクトはさまざまな活動の実施により、愛知生物多様性目標の1,5,12、14の達成に貢献したと述べました。また、ボトムアップのアプローチをとって地域コミュニティの生活を支持することの重要性を強調しました。
 
JICA地球環境部の宍戸健一次長はJICAが世界的に支援している熱帯林生物多様性の保全に関する幅広い取り組みを説明しました。ITTO/CBD イニシアティブをスムーズに実施するために、日本の大規模な財政支援と日本人の専門家による現場での指導の組み合わせが効果的であることを強調しました。さらに、ITTOとJICAの協力によって生み出された相乗効果の価値を強調しました。
 
CBD事務局のプログラムオフィサーであるカタリナ・サンタマリア氏の会議進行により、発表者とファシリテーターの間で活発な討論が行われました。上記のプロジェクトが森林関係の愛知生物多様性目標の達成にどのようにかかわっているかというサンタマリア氏の質問に焦点を置いて意見交換が行われました。また、プロジェクトの成果を維持するための問題点や、越境密猟を防ぎ、エコーツーリズムを促進するための見解や提案などの質問も出ました。このサイドイベントには約50人の政府代表者及びオブザーバーが参加しました。
 
愛知生物多様性目標:
目標1:2020年までに生物多様性の価値と、それを保全し持続可能に利用するための行動を人々が認識する。

目標2:2020年までに生物多様性の価値を、国と地方の計画に統合し、適切な場合には国家勘定、報告制度に組み込む。

目標5:2020年までに森林を含む自然生息地の損失の速度が少なくとも半減、また可能な場合にはゼロに近づき、また、それらの生息地の劣化と分断が顕著に減少する。

目標7:2020年までに、農業、養殖業、林業が行われる地域が、生物多様性の保全を確保するよう持続的に管理される。

目標11:2020年までに、少なくとも陸域及び内陸水域の17%、また沿岸域及び海域の10%、特に、生物多様性と生態系サービスに特別に重要な地域が、効果的、衡平に管理され、かつ生態学的に代表的な良く連結された保護地域システムやその他の効果的な地域をベースとする手段を通じて保全され、また、より広域の陸上景観又は海洋景観に統合される。

目標14:2020年までに、水資源などの重要な自然の恵み、人の健康、生活、福利に貢献する生態系を、女性、先住民、地域共同体、貧困層や弱者のニーズを考慮しながら、回復・保全する。

目標15:2020年までに、劣化した生態系の少なくとも15%以上の回復を含む生態系の保全と回復を通じ、生態系の回復力及び二酸化炭素のの貯蔵に対する生物多様性の貢献が強化され、それが気候変動の緩和と適応及び砂漠化の対処に貢献する。